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第6話 初配信

今日はしっかりと睡眠を取ったので、コンディションはバッチリ。昨日購入したドローンカメラの性能も試してみたいと思い、気分が高まる。


首には魔石がついたネックレスを掛け、ダンジョンへと向かう準備を整える。ダンジョン内にはすでにボスは倒された後で、相変わらず魔物の姿は見当たらない。少しだけ肩の力を抜きながら、そのままダンジョンの奥へ足を進める。


中に入ると、犬の姿に変身する。すると、どこからともなく魔石の甘い匂いが漂ってくる。無意識に嗅ぎ取り、匂いを頼りに動き出す。


早速、器用に前足を使ってドローンカメラを起動し、ライブ動画の撮影を開始した。自分が犬の姿でいることに少し照れくさい気もしたが、こうしてリアルタイムで配信しているのだから、楽しもうと心に決めた。


「どうも〜犬です。今回は、ボスがいないダンジョンで探索して、魔石を掘り当てていこうかなと思います」


っと、カメラに向かって声を掛ける。しかし、犬の姿でもしっかりと話せるものの、肝心の話題が思い浮かばない。


結果的に、終始無言で、ただ犬がダンジョンを徘徊するだけのライブ動画になってしまった。


「何か話そうと頑張るけど、話題が思いつかないなぁ」


と独り言をつぶやくも、結局どうにもならない。しばらくして、ふと視聴者数が気になり、リュックを下ろして、リュックのポケットからスマホを取り出した。


前足でスマホを操作し、自分の配信を確認する。そこで、思わぬ異変に気づく。画面を見ると、カメラがずっと僕のお尻の方を追いかけている。どうやら設定ミスだ。ドローンカメラが僕のお尻を追い続けているらしく、配信画面いっぱいに映し出されていた。


「ええ.....これはちょっと恥ずかしい......な......」


恥ずかしさを感じつつも、視聴者数は1〜2人と少なく、コメントの反応もない。人間のお尻なら問題になるかもしれないけれど、犬のお尻ならギリギリセーフだろうと自分に言い聞かせる。


気を取り直して、しばらく探索を続け、ついに魔石を見つけたところで配信を終了することに決めた。その後、アーカイブをそのまま残しておくことにした。ダンジョンを出るときには人間の姿に戻らなければならないので、服に着替える準備を始める。


「犬のまま家に帰れたら楽なのになぁ」っと思いながら、家に帰った。


家に着いてからふと思い出した。ライブ配信中、チャンネル登録者が1人増えていたのだ。その小さな変化に嬉しさが込み上げてくる。


**************


「......お尻?」


ダンジョン適応症で、サメの尻尾や牙などが生えてしまった美緒。彼女は今日もダンジョンに潜り、30階層まで到達した疲れから、身体も精神もクタクタだった。


少しでも癒されたいと、スマホで犬の動画を検索していた。頭の中で思い浮かべるのは、少しでも楽しく、リラックスできるもの。そんな時、ふと目に留まったのは、ダンジョン内でライブ配信をしている犬の動画だった。


「し、柴犬? どうして柴犬がダンジョンにいるの?」


と、家の中で驚きの声を漏らしながら、画面に映る柴犬の姿を見つめる。


驚きつつも、動画の説明欄を確認してみると、『ダンジョン適応症」と書かれていた。つまり、これは本物の犬ではなく、何らかの理由で人間が変身した柴犬の姿であることがわかった。


「ここまで変化する人もいるんだ.......すごい......可愛い.......』と、美緒は即座にチャンネル登録を押した。動画の内容にどんどん引き込まれていくのを感じる。


「この犬、ちょっと天然だな....」


と美緒は微笑みながら画面を見つめ続ける。少しずつ癒されていく自分を感じて、ダンジョンで疲れた心が癒されている気がした。


「本当に癒されたな.....これからも楽しみに見よう」と心の中でつぶやきながら、チャンネルを閉じる。再びダンジョンに向かう前に、少しだけ気持ちがリフレッシュされた気がした。

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