第50話 翔太くん目線
「ただいま〜」
今日は学校が午前中だけで、給食がない。だから、家に帰るとちょっと物足りない気分だった。
「お姉ちゃん、本当に料理できるのかな?」
お 母さんが作り置きをすると言っていたけれど、なぜかお姉ちゃんが料理をすると言って譲らなかった。しかも、目玉焼きを作って焦がしたことがあるお姉ちゃんだから、正直、昼ごはんにはあまり期待していなかった。
「どうせ、また失敗するんだろうな」
と思いながら、リビングのドアを開けた。
「あ、ワンワンねーねー!!」
リビングの扉を開けると、なんとワンワンねーねーが家に来ていたので、僕はとても驚いた。ランドセルを置き、思わずワンワンねーねーのところに駆け寄って飛びついた。
ワンワンねーねーは、いつも通りいい匂いがする。
「こんにちは〜翔太くん。お姉ちゃんが料理を作ってくれたから、一緒に食べようか。ほら、ランドセルを片付けて、手を洗ってからね」
ワンワンねーねーに言われた通りに、ランドセルを片付けて手を洗い、リビングに向かった。
「翔太、お姉ちゃんが一生懸命作ったんだから、ありがたく食べなさい!!」
いつも通り、お姉ちゃんはちょっと偉そうに言って滅茶苦茶ドヤ顔で言ってきた。
「美味しい!!」
カレーも牛丼も、想像していたよりずっと美味しかった。お姉ちゃんが作ったとは思えないくらい。
「でしょ?お姉ちゃんを改めて見直したでしょ!!」
「本当にお姉ちゃんが作ったの?」
あまりに美味しすぎて、僕はまだ信じられなかった。目の前の料理が本当にお姉ちゃんの手によるものなのか、疑ってしまった。
「そ、それは、本当に作ったわよ」
「本当に?」
「本当に作ったわよ!」
と、怒ったような顔をしていた。
「翔太くん、お姉ちゃんは本当に作ってたんだよ?」
ワンワンねーねーが、優しく言ってくれたので、僕はついに信じることにした。ワンワンねーねーが言っていることには嘘がないから、もう間違いないと思った。
「へえ〜、お姉ちゃんすごいね。でも、お姉ちゃん、前に目玉焼き作った時、黒く焦がしてたから、ちょっと心配だったけど、ちゃんとした料理が出てきて良かった」
「な、なんで、私が言ってた時は信じてなかったのに、柴犬が言った時は信じるの!?それに、目玉焼きは関係ないでしょ!!」
「信頼の差かな?」
姉ちゃんは嘘をついたり、意地悪をすることが多いから、本当に信じられなかったんだ。
「まあ、まあ」
と、ワンワンねーねーが何とか二人の間に割って入ってくれて、場を和ませてくれた。やっぱり、ワンワンねーねーは優しいな。
「ワンワンねーねー、やるよ〜」
「う、うん」
その後、僕はワンワンねーねーの膝に乗ってみた。ワンワンねーねーの膝は、ふわふわで柔らかく、まるで包まれているような安心感があった。
「あ、こら!! 翔太!!」
「翔太くん、ありがと〜」
「お姉ちゃん、どんまい〜」
最初は、ワンワンねーねーと一緒にお姉ちゃんを集中的に攻撃していたけれど、どうしてもお姉ちゃんの運が強くて、なかなか勝つことができなかった。
「あら、二人で協力プレイしてたのに勝てないの? 雑魚いね〜」
「うう....」
「ワンワンねーねー、負けちゃったね」
ワンワンねーねーは少し落ち込んでいた。僕は頭をぽんぽんと撫でて、慰めてあげた。だんだん、二人の距離が縮まった気がした。
「ちょっとトイレ」
お姉ちゃんがトイレに行くと、ワンワンねーねーが静かに僕に質問してきた。
「ねえ、なんでお姉ちゃんにちょっと当たりが強いの?」
僕は少し考えた後、答えた。
「ん〜、お姉ちゃんの方が僕に当たりが強いんだもん。ゲームでも、容赦なくボコボコにされるし、なんだかいつも上から目線で、ちょっと苦手。でも、時々僕のことを気にかけてくれるし、優しいから、嫌いじゃないよ。ちょっとだけ、好き」
ワンワンねーねーの前だからこそ言えることだけど、ちょっと恥ずかしかった。でも、正直に言ってみた。
「へえ〜、やっぱりお姉ちゃんのこと好きなんだ〜」
「お、お姉ちゃん!?」
お姉ちゃんがこっそり後ろで聞き耳を立てていた。そして、僕の言葉に反応して、嬉しそうにギュッと僕を抱きしめてきた。
「そういうところ、嫌い」
「ふふふ〜」
「お姉ちゃん、離れて!!」
僕は全力で逃げようとしたけれど、お姉ちゃんの力が強すぎて、どうしても引き離すことができなかった。ようやく、お姉ちゃんが満足して、僕を離してくれた。
その時、ふとワンワンねーねーの方を見ると、真顔で僕を見ていた。僕は少し慌てて思った。
「ワンワンねーねーは、もっと好きだから!!」
「そう?」
僕はお姉ちゃんが好きだと言ったけれど、もしかしたらワンワンねーねーが勘違いするかもしれない。1番好きなのは、ワンワンねーねーだから。
僕はそう伝え、恥ずかしくなった僕は自分の部屋にダッシュで駆け込んだ。




