第49話 翔太くん家
「ただいま〜」
しばらく待っていると、翔太くんが帰ってきた。ドアが開く音とともに、元気な声がリビングに響く。
「お姉ちゃん。本当に料理できてるのかな?」
心配そうな声を漏らしながら、翔太くんがリビングにやってきた。
「あ、ワンワンねーねー!!」
リビングのドアを開け、翔太くんは僕を見つけると、ランドセルを投げ捨てて急いで僕の方に駆け寄り、勢いよく抱きついてきた。
「こんにちは〜翔太くん。翔太くんのお姉ちゃんが料理を作ってくれたから一緒に食べようか。ほら、ランドセルを片付けて、手を洗って」
翔太くんは、ランドセルを片付け、手を洗いに行く準備を始める。そんな翔太くんを見ながら、サラマンダーさんと僕は一瞬視線を交わした。サラマンダーさんは、ちょっとした苛立ちの表情を浮かべている。翔太くんに気に入られたくて呼んだのに、翔太くんに抱きつかれて少しムッとしている様子だ。
「お姉ちゃんが作ったカレーと牛丼を食べるわよ。翔太、お姉ちゃんが丹精込めて作ったから、ありがたく食べなさい!!」
サラマンダーさんは、少し自慢げに言った。その顔には、少し満足げな表情が浮かんでいる。翔太くんは頷きながら、すぐにランドセルを片付けて手を洗い始めた。
「うん」
3人分の食事が並ぶテーブルに、カレーと牛丼という少し変わった組み合わせだった。でも、どちらも美味しく仕上がっているから、僕たちはすぐに食べ始めた。
「美味しい!!」
翔太くんが一口食べて、満足そうに言った。その笑顔を見て、僕もほっとした気持ちになった。料理を手伝っているとき、サラマンダーさんの料理姿に不安だったが、料理を美味しいと翔太くんの口から出て、僕は安堵した。
「でしょ、お姉ちゃんを改めて見直したでしょ!!」
サラマンダーさんは、自信満々にそう言った。翔太くんはサラマンダーさんの方を疑いの目を見つめて言った。
「本当にお姉ちゃんが作ったの?」
翔太くんが不思議そうな顔をして、サラマンダーさんを見つめた。
「そ、それは、本当に作ったわよ」
サラマンダーさんは、少し慌てた様子で答えたが、翔太くんはまだ納得できないようだった。
「.....本当に?」
翔太くんはしばらく黙ったまま、サラマンダーさんの顔をじっと見つめていた。それに、サラマンダーさんも少し焦った表情を浮かべていたが、もう一度強く言った。
「本当に作ったわよ!!」
翔太くんは、中々信じないので、僕も証人になることにした。
「翔太くん。お姉ちゃんは、本当に作ってたんだよ?」
「へえ〜お姉ちゃんすごいね。でも、お姉ちゃん、前に目玉焼き作った時、黒く焦がしてたから心配だったけど、ちゃんとした料理が出てきて良かった」
翔太くんがそう言った瞬間、サラマンダーさんはちょっと顔を赤くしなた。
「な、なんで、私が言ってた時は信じてなかったのに、柴犬が言った時は信じるの!?それと、目玉焼きは関係ないでしょ!!」
サラマンダーさんが、少し怒ったように言ったが、翔太くんは表情を変えずに、ふと考えた後に答えた。
「信頼の差かな?」
翔太くんは答えた。サラマンダーさんは、その言葉に思わず顔をしかめたが、すぐにまた落ち着いて言った。
「まあ、まあ」
僕はサラマンダーさんの為にも、間に入った。翔太くんはカレーを一口食べて、満足そうに言った。
「ワンワンねーねー、今日はお姉ちゃんの料理を手伝いに来たの?」
「うん、そうだよ〜」
僕はにっこりと答えた。
「じゃあ、もうすることないから一緒に遊ぼ!!」
「うん、いいよ」
「私も翔太と遊ぶ!!」
と言って、僕と翔太くん。サラマンダーさんと一緒に遊ぶことになった。翔太くんは、2階にあるゲーム機を取りに向かった。
「なんで、翔太に好かれてるのよ。私が、翔太の為に手料理を振舞ったのに」
翔太くんが居なくなると、不満をぶつけてきた。
「ちょっと、翔太くんに強く当たりすぎなんじゃないですか?」
「仕方ないじゃん。翔太には、強くなって欲しいんだから」
と、まあ、ツンデレでどうしてもそんな喋り方になってしまうのだろう。
「ワンワンねーねーやるよ〜」
「う、うん」
ゲーム機を持って、三人で遊べるゲームを始めた。僕は翔太くんのジョイコンを貸してもらい、サラマンダーさんは自分のゲーム機で参加する。
「あ、こら!! 翔太!!」
「翔太くん、ありがと〜」
「お姉ちゃん、どんまい〜」
パーティーゲームがスタートすると、翔太くんは僕の膝の上にちょこんと座り、一緒に画面を覗き込みながらプレイを始めた。僕と翔太くんは自然と息を合わせ、連携しながらゲームを進めていく。実質、二人が協力しているような状態で、最初はかなり有利に展開していた。
しかし、サラマンダーさんは運が強く、アイテムの引きも抜群だった。僕たちが順調に進めていると思った矢先、いつの間にか形勢が逆転していた。
「あら、二人で協力プレイしてたのに勝てないの? 雑魚いね〜」
「うう......」
「ワンワンねーねー、負けちゃったね」
僕は肩を落として落ち込んでいると、翔太くんが僕の頭をぽんぽんと撫でて慰めてくれた。その姿を見て、なんだか僕が年下みたいに見えるかもしれない。
ゲームが終わり、サラマンダーさんが『ちょっとトイレ』と言って席を立った。
僕はその間に、翔太くんにサラマンダーさんについて聞いてみることにした。
「ねえ、なんでお姉ちゃんにちょっと当たりが強いの?」
翔太くんは少し考えてから答えた。
「ん〜、お姉ちゃんの方が僕に当たりが強いんだもん。ゲームでも容赦なくボコボコにするし、なんだか上から目線だから苦手。でも、時々僕のことを気にかけてくれるし、優しいから嫌いじゃないよ。ちょっとだけ、好き」
ふーん、そうなんだ。翔太くんはツンツンしているように見えても、ちゃんとお姉ちゃんの優しさを分かっているんだな。
「へえ〜、やっぱりお姉ちゃんのこと好きなんだ〜」
「お、お姉ちゃん!?」
突然、背後から声がした。驚いて振り向くと、そこにはサラマンダーさんが立っていた。どうやら、こっそり話を聞いていたらしい。
「そういうところ、嫌い」
「ふふふ〜」
サラマンダーさんは嫌われているわけじゃない。それどころか、翔太くんに好かれていると分かり、思わず嬉しそうに翔太くんの後ろからぎゅっと抱きついた。
「お姉ちゃん、離れて!!」
「いや〜」
翔太くんは必死で抵抗するけれど、サラマンダーさんはなかなか離れようとしない。しばらくくっついたまま満足そうにしていたが、ようやく翔太くんから手を離した。
ようやく離れ、僕はその光景を見ていると、翔太くんは、ハッとした顔をした。
「ワンワンねーねーは、もっと好きだから!!」
「そう?」
別に聞いてないのに、翔太くんははっきりとそう言ってくれた後で、急に翔太くんは2階の方に行ってしまった。
そんなこんなで、僕は家へと帰ることにした。




