第46話 共感
「柴犬くん、私の金の盾、見たいって言ってたよね。見に来る?」
「うん」
昨日、アリスさんとこんなやり取りをしていた。アリスさんは、最近届いた銀の盾を飾っている。僕の登録者数も40万人を超え、最近は一気に伸びたけれど、100万人の大台には程遠い。
金の盾、どんなものだろう? 生で見てみたかった。普段は画面越しで見ることしかできないけれど、アリスさんの家にある金の盾を見せてもらうことに決めた。
「こんにちは〜、金の盾見せてもらいに来ました〜」
「柴ちゃん、さ、入って〜」
僕は柴犬の姿でアリスさんの家に向かった。コラボ配信をするために、アリスさんから『柴犬の姿で来て』というお願いがあったからだ。もちろん、アリスさんの家には以前から何度も行ったことがあるが、今回はその盾が目当てということもあり、少し楽しみだった。
でも、アリスさんが住んでいるのは都会の高層マンションの25階。僕はそのことに驚いた。高層階なんて、普段はなかなか行くことがないから、少し緊張しながらエレベーターに乗り込んだ。
セキュリティがしっかりしているため、マンションに入るのにも少し手間取った。部屋番号を押すボタンに届かないから、どうしようかと思ったけれど、誰かが入り口の扉を開けた瞬間、僕も一緒に中に入ることができた。
エレベーターでは、優しい人が『何階?』と聞いてくれて、無事に25階に到着。エレベーターを降りると、アリスさんの部屋の前に到着した。ドアをカリカリと引っ掻いて、アリスさんに気づいてもらおうとした。
「柴ちゃん!?」
「インターホンが高くて」」
「電話してくれたら迎えに来たのに」
と、アリスさんが呆れ顔で言った。
確かに、電話して呼び出して、家の中に入れてもらえたかもしれない。でも、アリスさんを呼び出すのには少し抵抗があったので、今回はそのまま来てしまった。そんな僕にアリスさんは、にっこりと笑いながら部屋に招き入れてくれた。
「金の盾見せて〜」
「はい、これが金の盾だよ〜」
「おお〜本当にすごい。金の盾が僕の顔を反射している〜」
目の前に現れた金の盾に、僕はすごいと思った。光沢のある金色の盾に、中央に大きな魔石がはめ込まれている。その魔石はまるで僕の顔を映し出しているようだった。
それに、この魔石、すごく綺麗だね。もしこれを売ったら、10万円くらいになるんじゃないかな?っと思った。もちろん、もし金の盾が贈られたら売るつもりなんてないけれどね。思わずその金額を考えてしまうほど、金の盾は欲しくなった。
「はい、こんにちは〜」
「こんにちは〜」
その時、配信を見ている視聴者からコメントが流れた。
『おや、柴犬さんがアリスさんの家でコラボ配信してる〜』
『いいな〜どんな配信するんだろう?』
「今日は、柴犬さんとコラボ配信ということで来てもらったんですけど、柴犬さんは人間に近い姿。獣人の姿になれるという事で、私もそれに近いのをダンジョンで変身してしまい、尻尾が邪魔になる仲間としてちょっとしたファッション雑談などをやっていこうかなと思います」
コメント欄では、視聴者たちが興味津々で反応していた。
『確かに、ダンジョン適応症で尻尾が生えたり、ダンジョンに潜る時は服選びとか大変そう』
『そんなリアルな意見を聞けるとは興味深い』
『ワクワク』
「柴犬さんはどうですか?」
「そうですね。今の身体だと服は要らないんだけど、柴獣人になると、服を着ないとちょっと恥ずかしい感じがするんだよね。だから服を着るんだけど、毛が邪魔で大きめのズボンじゃないと入らないし....それに尻尾が邪魔で、ジーパンを裏向きに履いてた」
「あ、それは、あるあるですね。やっぱり尻尾は邪魔になりますよね。尻尾を無視して履くと締め付けられる感じがして不快で、外に出してたくなるんですよ。だから、私も最初の頃にジーパンを履いた時は裏向きに履いて、尻尾を出してたですよ〜」
「あ、やっぱり、あるあるなんですね〜」
やっぱり、尻尾を出すためにジーパンは裏向きに履くんだ〜と思った。
『へえ〜尻尾が生えるとそんな』
『だけど、尻尾は可愛いので出していてもらった方が僕は嬉しい』
『僕たちの常識では考えられない話ですな〜』
「あと、胸毛が邪魔で胸の辺りが大きくなっちゃうのも厄介だったな〜」
「へえ〜まあ、胸が邪魔なのが分かるな〜」
『おっと、これは、本当に男女の話か?』
『ぐへへへ〜』
『いいですな〜』
「そんな柴犬さんには、私が着なくなった服とかあげます」
「いや、別に大丈夫ですけど....」
「大丈夫です〜」
僕は断っているのに、聞き耳を持ってくれない。アリスさんは立ち上がりどこかに行ってしまった。しばらくしてから大量の服を抱えて戻ってきた。
「この中から、どうぞ〜」
「ふぎゃ」
僕の頭上から、大量の服が降ってきて、服の中に埋もれてしまった。
「ぷは〜」
「この中から適当に持って帰ってね」
僕は服にはあまり興味がない。だから、上下で適当に3着ほど選んで紙袋に入れてくれた。
『おい、あの服の山全部高級な服だぜ......』
『マジか......』
『1着2万円以上のがゴロゴロと......』
服選びを終えると、配信を終了。僕は服が入った紙袋を口に咥えて、アリスさんが付き添ってくれてマンションから出た。
「ふぁあ、またぁ〜』
「バイバイ〜」
僕は、アリスさんから貰った服が入ってる紙袋を引きずらないように背筋を伸ばして家に帰った。




