第35話 犬のお巡りさん
家の近くにあるボスがいないダンジョンで魔石を掘り出し、家に帰る途中に男の子がうずくまっていた。
ーーーどうしたのだろ?
と心配して、近づいて見ると『グスン、グスン』と泣いていた。
周りには、大人の人は居ない。多分だが、迷子だろう。
こんな田舎で迷子なんて珍しいな、と思い男の子に声をかけた。
「ねえ、大丈夫?」
「あ、ワンワン」
「ふぎゅ」
子どもは、犬の扱いが少し雑だと思う。僕を見るなり、顔をいきなり引っ張ってきた。まあ、子どもの力なので、それほど痛くはないけど。
「ねえ、どうじたのおお」
「おばあちゃん家から外に遊びに行ったら、どこかわかんなくなった」
僕を見るなり泣き止んでくれたので、この子がどういう状況なのか理解できた。確か、近くに交番があるので、僕はそこまで連れて行ってあげることにした。
「じゃあ、交番まで行こ。すぐ近くにあるよ」
「いや!!」
「え、どうして?交番に行かないと家に帰れないよ?」
「痛いから」
男の子の膝の方を見てみると、膝を擦りむいている。手のひらも同様に擦りむいている。どこかで転んだのだろう。
「ワンワンおんぶ」
「ふぎゃ!?」
容赦なく僕の背中に乗った。子どもとはいえ、重たい。だけど、このまま放置することもできないので、仕方なく僕は男の子を背中に乗せ交番まで連れて行くことにした。
「じゃあ、僕のリュック持ってね」
「うん」
僕は男の子にリュックを背負ってもらい、男の子を僕の背中に乗せた。
「ふぎぃいいいい!!」
「ワンワン頑張って!!」
「あ、あんまり……動かないで」
「え〜」
不満そうな声を出す男の子。僕は最近ダイエットのために筋トレをしている効果をここで発揮する。
一歩、一歩、確実に前に進む。足を止めたら二度と立ち上がることはできないと思う。僕は何とか踏ん張りながら男の子を交番まで連れて行った。
数分後、ようやく交番に着いた。
「こんにちは〜」
僕は男の子を降ろし、交番の前で挨拶をした。だけど、お巡りさんは出てこない。見回りでもしているのだろうかと、交番の中に再び挨拶をしながら入ってみると、机に顔をつけ寝ている警察官がいた。
「あの!!」
「ん?あ!?なんで、こんな所に犬が.....?迷子か?」
「いや、迷子なのは僕ではなくこの子です」
「え、犬が喋った!?」
お、初めての反応だ。いや、普通はこの反応が正しいと思う。
「あ、僕はダンジョン適応症でこんな姿で、この姿を維持しているのがこの勾玉のおかげなんですよ」
「へえ〜まあ、それより坊主。どうしたんだ?」
「迷子」
「そうか〜迷子か〜」
男の子を交番に届け、僕はクタクタなので家に帰ろうと交番を出ると、男の子が遠くから泣く声が聞こえた。
「おい、柴犬!!ちょっと来てくれ」
交番を出て少しした後、警察官に呼び止められ交番に引き留められた。
「この坊主は、柴犬の事が気に入ったらしいんだよ。親御さん迎えに来るまで、一緒にいてくれ」
「まあ、いいですけど」
警察官のひとだけでは、男の子は泣き止まない。仕方ないので僕は、男の子のおもちゃになりながら、交番の所で待っていた。
「あの、この子の親御さんの場所分かってるんですか?」
「まあな。ここ田舎だから人少ないし。それに、この坊主のカバンの中に電話番号が入ってたからすぐに分かったよ。もうすぐ、親御さんが来ると思うぞ」
ふん〜意外にちゃんとしてるんだ、と思った。最初は交番で寝ているから心配してたけど、感心したよ。
「す、すみません!!うちの子は」
「あ、ママ!!」
男の子はお母さんを見るなり走って抱きつきに行った。
「本当にすみませんでした。もう、遠くに行ったらダメって言ったでしょ」
「ごめんなさい....」
お母さんに怒られ、しょんぼりとしていた。
「あ、ママ!!このワンワン飼いたい!!」
と、突然僕を飼いたいと言って指をさしてきた。
「ん〜」
「あ、悩まないでください。僕は飼えませんので!!」
「そうなの?」
と言って、何とか飼われずに済んだ。
「ええ〜」
と、不満そうな男の子だったが、男の子はお母さんに手を引かれ交番を出て行った。
「バイバイ〜ワンワン〜」
「バイバイ〜」
僕も前足を振り返した。
「なあ、柴犬は....迷子か?」
「いやいや〜僕は自分で家に帰れますよ」
「そういえば、最近引っ越して来た人か?」
「そうだよ」
と言って、疲れた僕は僕は交番から出て、家に帰った。




