第31話 1000万円の凄み
家を買った翌日、引っ越し作業でダンボールを開けたり荷物を整理したりしていると、一通のメッセージが届いた。
送り主は美緒さんだった。
『柴犬さん。オークキングの魔石を売る動画、一緒にしませんか?』
というお誘いのメッセージだった。アリスさんの提案で、オークキングの魔石は撮影に使うため、事務所で一時的に預かってもらっていた。
引っ越し作業中ではあったけれど、別に引越し作業は急ぐものでも無いので『いいよ~』とすぐに返事を送った。
撮影は今日の午後3時、事務所で行うことに決まった。
「「こんにちは~」」
僕が事務所に入ると、美緒さんとアリスさんが笑顔で迎えてくれた。
今回の撮影場所は、以前公式動画を撮影したスタジオだが、今日は個人での配信。公式配信のように多くの大人たちがカメラ前に立っている事はなく、カメラと僕たちだけで進められるから、気楽にできそうだ。
そう思っていたが、マネージャーさんの隣に見慣れない人がいるのが目に入った。
「あの人、誰?」
「柴ちゃん、あの人はアリスが呼んだ魔石鑑定士さんよ。鑑定と買取をしてくれるの。もし買取価格に不満があれば、売らない選択もできるから安心してね」
「柴犬さん、売りたい希望額はありますか?」
「ん~ネットで見た感じだと200万円くらいだったから、そのくらいかな」
そんな雑談していると、時間になり美緒さんのアカウントで配信が始まった。
美緒さんのチャンネルはもうすぐ登録者数が100万人を突破しそうだ。その為、100万人を一緒に見届けようと『100万人耐久配信』をやるらしい。
ーーーこれは、僕も楽しみである。
ちなみに、アリスさんのチャンネルはとっくに100万人を突破していて、さすがだなと思う。
ーーー今度、100万人に達成すると貰える盾見せてもらおう。
「こんにちは、美緒です。今回は、ボス戦で手に入れた戦利品、オークキングの魔石を鑑定してもらいます」
「こんにちは、探索者ギルド所属の魔石鑑定士、田中です」
「アリスで~す」
「犬です」
それぞれ自己紹介を終え、さっそく魔石の鑑定が始まった。田中さんは虫眼鏡や特殊な工具を使い、慎重に魔石を調べている。
その間、僕たちは鑑定価格を予想することにした。
僕は200万円、美緒さんは300万円、アリスさんは強気の500万円と僕達はバラバラな値段を予想していた。
コメント欄では、
『いや〜200万円でしょ』
『いやいや、かなり強かったから500万円だよ』
『難しい....1千万円かも』
視聴者も予想を書き込んでいて、僕たちと同じくらいの価格を挙げる人が多かったが、中には『1,000万円いくんじゃない?』といった飛び抜けた値段予想する人もいて、僕は少し魔石鑑定結果に胸を躍らせていた。
「鑑定が終わりました」
田中さんは、鑑定道具を机に置き鑑定を終えた。
「結果は....280万円です」
「「「おお~」」」
僕達の予想より高くも低くもない金額に、リアクションが少し微妙になってしまった。
「どうしますか?」
「僕は、売ってもいいんじゃないかなって思うけど」
「じゃあ、売ろ〜」
『ああ~』
『まあ、そんなもんだよね』
『200万円でも普通にすごいけど!』
結局、280万円で魔石を売ることに決まった。お金は事務所を通じて精算され、手数料を引いた上で3人で分け登録した口座に振り込まれるらしい。
「ボスの魔石って、やっぱりすごいね。普通に100万円超えるなんて」
「最近は魔石の値段が上がっているんですよ。さらに深い階層のボスを倒した人は、1,000万円で売れたらしいです」
「すぎょ!?」
僕は美緒さんが教えてくれた事に思わず驚きの声を上げた。
『1,000万円!?やばくない?』
『それは夢があるね』
そんな話をしていると、田中さんをゴソゴソと何かを探し出し鞄から写真を取り出した。
「実際に1,000万円で買い取った魔石ですよ」
そこに写っていたのは、禍々しいオーラを放つ巨大な魔石だった。
『すげぇぇ』
『これが1,000万円の魔石....』
『これが200万円と1,000万円の差か』
「写真越しでもわかる……凄み」
「ねえ柴ちゃん、また目が点になってるよ」
1,000万円の魔石の凄みを感じさせながら、配信は無事に終了した。




