第25話 飯テロ
昨日は疲れて、夜ご飯を食べる間もなく寝てしまった。だから今朝は豪勢な朝ごはんを作ることにした。
ご飯とだし巻き玉子、それに豚汁を作り、お腹いっぱい食べた僕は、しばらく家でスマホを見ながらゴロゴロと過ごした。そして撮影時間に間に合うように、イヌイ事務所へ向かう準備をした。
今日は休日ということもあり、配信は夜ではなく昼の1時から僕のデビュー配信を始めるらしい。
ーーーまあ、デビュー配信は昨日しちゃったんだけどね。
そんなこんなで電車を使い、イヌイ事務所のあるビルに到着した。
「こんにちは〜」
「はい、こんにちは〜。撮影、頑張ってね〜」
「は〜い」
僕が挨拶をすると、警備員のおじさんはあっさりと中へ通してくれた。正直、犬の姿で中に入ろうとしたら、迷い込んだと思われて止められるかと心配していたけど、特に問題はなかった。
口にくわえた身分証を機械にかざし、『ピッ』と通過すると、そのまま事務所の中に入ることができた。
「今日も柴犬の姿なんですね」
「はい。この姿になるのは時間がかかるので」
そんな会話をマネージャーさんとしながら、待合室で動画配信用の台本を受け取った。昨日みたいにアドリブで乗り切る感じではないので、少し気が楽だ。
「こんにちは〜! イヌイ事務所に所属することになった犬です! 今回は僕のデビューを祝って、事務所の先輩が何かをしてくれるらしいです!!」
僕はどんなことをしてくれるのか分からないので、ワクワクしながら楽しみにしていた。
『柴犬さん、おめでとう〜』
『改めて、おめでとう〜』
『お風呂回でもいいですよ〜』
「こんにちは〜、アリスです!」
「はじめまして、犬です!」
「今回、アリスは柴犬さんにとってもいいプレゼントを用意しました!!」
そう言って、奥の方から何かを持ってきたアリスさん。
アリスさんは外国人女性だと聞いていたけど、見た目こそ外国人らしいものの、日本語がペラペラでとても流暢。すごいな〜と感心してしまう。
「じゃ〜ん!!アリスと美緒ちゃんで選んで買ってきた国産黒毛和牛のステーキです!! 100gが2万円という超高級なお肉を、500g用意しました!! 柴犬さんにぜひ食べていただこうかと思います!」
「えええええ!!! いいんですか!!!!」
僕は嬉しすぎて、その場で飛び跳ねてしまった。
『柴犬さんがこれまで無いほど反応だ!!』
『柴さんは、肉が好物なんですか!!』
『¥50000』これで、お肉を買ってくだいいい!!』
『柴犬さんの好物は、お肉っと....メモメモ』
朝ごはんをあれだけ食べたというのに、お肉と聞いた瞬間、急にお腹が減ってきた。僕は、お肉がとにかく大好きだ。1kgでも余裕で食べられる自信がある。
「じゃあ、アリスが焼くね!」
そう言って、アリスさんはカセットコンロの上にフライパンを置きフライパンの上に油を敷き、強火でお肉の表面をじっくり焼き始めた。
「ぐるるるる…」
「もう少し時間がかかりますから、待てですよ〜」
香ばしい匂いが漂い、ついお腹の虫が鳴ってしまう。早く食べたい!
『飯テロだ!!』
『こんなの夜にやられたら耐えられないよ!』
『オデモタベタイ……』
コメント欄も、すでにお腹が空いている視聴者で賑わっていた。確かに、夜にこんなのを見せられたらたまらないだろうな。
「はい、できましたよ〜!」
出てきたのは、500gの超高級黒毛和牛ステーキ。中までしっかり火が通り、見るからに美味しそうだ。
僕は皿に乗せられた大きなお肉を豪快にひと口食べてみると、人生で一度も味わったことのない美味しさだった。もう、言葉では表せない!!
気がつくと、僕は夢中で食べ終わっていた。
「美味しかった〜!」
「食べるの早いですね〜。やっぱり、美緒ちゃんの言った通り、柴犬さんはお肉が大好きなんですね!」
「はい、大好物です! 無我夢中で食べちゃいました!」
「気に入ってくれて、アリス嬉しいです!」
と、アリスさんは大きな胸を踊らせ嬉しそうだった。
しかし、もう食べすぎでしばらくは動けないな。




