第21話 人間の姿で現れると困惑される
家に帰った後、僕は資料を机の上に置き、確認した。
口に咥えて持って帰ってきたので、資料は少しヨダレで濡れ、甘いクリームの匂いが残っていた。
「うむうむ」
入念に読み、何か不利益なことはないかなど、契約書をお茶を飲みながらじっくりと確認をした。
「よし、問題はないな」
問題がないと確認できたので、僕はサインをした。これで、僕もイヌイ事務所所属の一員になる。
前から見ていた憧れの人もイヌイ事務所に所属しているので、もし会えたらサインでももらおうかな〜と少し事務所に行くのが楽しみだ。
ーーー翌日ーーー
資料と履歴書を同封した茶封筒を持って、電車で3駅先にあるイヌイ事務所へ向かった。
さすが上場企業。都会の一等地のビルに事務所を構えている。
「ここの11階か〜」
上を見上げていると、後ろに倒れそうになった。
指定された時間に着いた。美緒さんのマネージャーが事務所前で待っていると言う事で、事務所を見渡し事務所前で待っている美緒さんのマネージャーさんを見つけて声をかけた。
「えっと……」
「あ、僕です。柴犬さんです」
「あ、今日は人間の姿なんですね」
「はい。一応、本人確認などあるかと思いまして」
美緒さんのマネージャーさんと中に入ると、セキュリティがしっかりしており警備員が居た。また、カードを『ピッ』と機会にかざさないと中に入れない。それに、なんだかおしゃれだ。エレベーターも豪華な感じがする。
エレベーターに乗り込み11階にたどり着くと、そこには多くの社員が働いていた。中には見覚えのある有名な人も歩いていて、眩しい場所だった。
「では、あそこの会議室でお話ししましょう」
「はい」
美緒さんのマネージャーさんに会議室へ案内された。
「では、早速ですが資料を見せてもらえますか?」
「はい」
僕は持ってきた資料を渡し、色々と確認を受けた。
そして、数十分後....
「資料に不備はないですね。では、ようこそイヌイ事務所へ」
「ありがとうございます」
「嬉しいですね〜あ、あと、私は柴犬さんのマネージャーもすることになりましたので、改めてよろしくお願いします。マネージャーの佐藤恵です」
「こちらこそよろしくお願いします」
僕はぺこっと頭を下げた。
「では、事務所を案内しますね」
マネージャーさんに事務所内を案内してもらった。最近移転したばかりらしく、とても綺麗だ。トイレや食堂の設備も充実しており、配信部屋やダンジョンで使う武器などを貸し出している部屋もあって驚いた。
「すごいですね!!」
「ですよね〜」
事務所内の案内が終わると、再び会議室に戻った。
「では、これからのことですが、柴犬さんにはいきなりですが明後日。事務所公式動画配信に出演してもらいます」
「え、あ、は、はい」
イヌイ事務所公式動画配信は、登録者数が150万人を超え、同接人数も平均10万人を超える人気チャンネルだ。
それも、いきなり決まりビックリした。
その後、マネージャーさんと色々話し合い、帰る頃には夕方になっていた。
「では、明後日よろしくお願いします」
「はい」
帰り際にマネージャーさんに会員証を渡された。これを無くせば、事務所の中に入れないので無くさない様に気をつけないとなっと思い事務所を後にした。
*******
「美緒さん、柴犬さんが所属することになりました!!」
「え、本当ですか!?」
美緒さんは喜んだ。
「やった〜!」
普段はクールな美緒さんが喜んでいる。
「美緒ちゃん、どうしたの?」
「あ、アリスちゃん。いやね、柴犬さんが所属することになったから美緒ちゃんが喜んでるのよ。可愛いよね〜」
「わかる」
アリスちゃんは頷いた。
「あ、アリスちゃん。連絡が入っていると思うけど、明日よろしくね」
「はい」
「何かあるの?」
美緒さんが尋ねると、マネージャーさんは答えた。
「柴犬さんが所属した報告と、公式配信での初配信に出演してもらいます」
「私も出る」
「美緒さんは配信が、かぶるので無理です」
「嫌だ」
出演できないと聞いて、美緒さんは頬を膨らませ、不満そうな顔になった。
「ダメです。さすがに企業案件も絡んでいるので、配信を中止することはできません」
真顔でマネージャーさんに近づき、『嫌。嫌。嫌。嫌』と連呼していた。
こんな、頑なに嫌がられるのは初めてで、マネージャーさんは困った顔になっていた。
「もお〜美緒ちゃん。柴犬さんとは同じ事務所なんだから、いつでもコラボできるんだから我慢しなよ」
「柴犬さんとは、今度コラボ配信の予定を組むからね」
「わかった.....」
美緒さんはまだ不満そうではあるが、アリスちゃんやマネージャーさんの説得になんとか応じた。




