第15話 まふぇきー
美緒さんからメールが来て、『柴犬さんがバズってます』と書かれていた。
僕は何のことだろうと思いながら、美緒さんの言う通りSNSを開くと、僕が犬の姿になった時の写真が拡散され、柴犬がトレンド一位になっていた。
『可愛い』・『え、ダンジョンに犬!?』・『リュック背負ってる!!』・『尻尾がくるんってなってるの可愛すぎ』・『モフモフじゃん!!』・『スライムと戦っている所とか、必死過ぎて可愛い』・『尊い』
などなど、意外にも僕は可愛いと評判だった。それに、美緒さんが僕のチャンネルを紹介してくれたおかげで、チャンネル登録者数が1万人を超えていた。
「これは、美緒さんに感謝しないとな〜」
嬉しさを噛み締めながらも、急にバズった分、視聴者が何を求めているのかが分からず、少しプレッシャーを感じていた。とはいえ、今の流れを活かさない手はない。
「よっし、配信しますか〜」
僕は服を着替えるのが面倒だったので、最初から犬の姿のまま家を出ることにした。今回は玄関と玄関前に、百均で買ってきた踏み台を置いてあるので、開け閉めが余裕でできる。
「ふっふふ〜」
ちょっとした工夫ではあるが、自分で考えて準備したことに満足し、ドヤ顔で家の鍵を閉めた。鍵は紐で括り首にかけてあるので、いつでも取り出せるよう工夫済みだ。
「到着〜」
いつものダンジョンの入り口に着くと、僕はリュックの中からスマホとカメラを取り出し、配信を開始した。
「こんにちは〜犬です。今日もダンジョンを徘徊しながら魔石を掘り出していこうと思います」
スマホの画面をチラッと確認すると、同時視聴者数が500人を超えていた。
「うわっ!」
思わず声が出た。昨日までの配信ではせいぜい50人程度だったのに、一気に10倍以上になっている。『これが、SNSの力!!バズるとこんなに人が増えるのか』と、驚きとともに実感した。
『あ、尻尾振ってる』
『何か、いいことがあったのかな?』
『よっし、今日は柴犬を観察するぞ〜』
コメント欄が次々と流れ、僕が無意識に尻尾を振っていたことに気づいた。ちょっと恥ずかしい。
気を取り直して、スマホをリュックにしまい、ダンジョンの探索を開始した。
「お、魔石の匂いがする!」
僕は鼻をひくひくさせながら、魔石のありそうな場所を探す。途中、ゴブリンと遭遇したので、軽くひねっておいた。
『柴犬さん強すぎ』
『ゴブリンを倒す姿とかカッコ良すぎるんですけど?』
『魔石の匂い?』
『魔石に匂いとかあった?』
『柴さん、魔石の匂いとか分かるの?』
『必死で、地面掘ってるの可愛い!!』
コメントが次々と流れてくる。僕は前脚で地面を掘り進めながら、魔石を掘り出した。
「みふぇみふぇ〜まふぇきー」
口に魔石を咥えたまま何か言おうとしてしまい、まともに喋れなかった。
『かわゆ』
『凄い!!天才犬だ!!』
『見てりゅよ〜』
『ダンジョンで魔石とかたまに掘り出したりする人いるけど、匂いで場所が分かるとかすっご!!』
掘り出した魔石を視聴者に見せるため、カメラにぐっと近づけた後、リュックに入れた。
1時間ほど探索と戦闘を繰り返し、無事に配信を終了。家に帰ると、一気に疲れが押し寄せてきた。
僕は首についた鍵と勾玉を外し、人間の姿に戻る。スマホを手に取り、改めてチャンネルの管理画面を確認すると──
「あれ、収益化の申請できるんだ〜」
思わぬ副産物に驚きながらも、迷わず収益化の申請ボタンを押した。これで、もし承認されたら、配信で得た収益を冒険の装備や生活費に充てることができるかもしれない。
「やった〜!」
嬉しさを噛み締めながら布団に潜り込むと、疲れからか、すぐに深い眠りに落ちていった。




