五日目。 Ⅱ
僕が目を開けると外はまだ冷たく、カーテンの隙間から月明かりがさしていた。
「ふぅ・・・まだ朝じゃないのか。なんか変な時間におきちゃったな・・・。」
今日はなぜか睡眠の途中に目覚めてしまったようだ。
「二人はぐっすり眠ってるのかな?」
頭を横にして二人の眠るベッドを見る。
「・・・・・あれ?」
二人ともそこには居ない。
あるのは、はぐられた布団だけ。
「ええええ・・?」
僕は上半身を起こし、眠い目をさすりながらもう一度二人の眠っているはずのベッドを見つめた。
「あれれ・・・・・?なんでいないんだろう??」
ベッドから立ち上がり、ポチとタマのベッドを触ってみる。まだほのかに暖かい。
「居なくなってからあまり時間がたってないのかな?まぁ・・・待ってればそのうちすぐ帰ってくるかな。」
僕は再びベッドに戻り目を閉じた。
・・・。
・・・・・・。
「うう・・・。」
・・・・。
数分待ってみたけど・・・戻ってくる様子は無い。
「トイレならもう戻ってきてもいい時間だし・・・心配だな。」
トイレならば、夜が恐いからどちらかが片方を起こして一緒に行く・・・なんて可愛い想像もできるが、それにしても遅い。
と、しばらく考えてみても戻ってくる様子も無い。
「・・・よし、行くか。」
気になって眠れず、僕はベッドから起きた。
ドアは少し開いていて、ノブを回さずとも扉が開いた。
廊下を一歩踏み出すと、少し肌寒い空気が全身を包む。
なにか羽織るものでもあったほうがよかったかなと思いながら進む。
すると廊下の向こうからかすかに話し声が聞こえてきた。
「うん・・・?女の子の声・・・ポチとタマかな?」
話し声のようだから最低二人はいるのだろう。
近づいていくに連れて会話が徐々に言葉として聞こえてくる。
「この先・・・かな。」
廊下の曲がり角で少し止まり、そこから顔を出して向こうを見てみる。
「いた。」
小さな子が二人。シルエットからするにポチとタマで間違いは無いだろう。
「なんだろう・・・こんな夜遅くに二人で。」
二人の会話に耳を傾けてみる。
「・・・・タマちゃん・・・」
「何度も・・・」
「ご主人様は優しい人だよ・・・だから・・・・今ままでの人とはぜんぜん違って・・・。」
「・・・。」
「だから・・・・今度、だけ・・・もう一度だけ・・・・」
「・・・・・。」
「信じて・・・みようって・・・」
「そんなの・・・・」
「・・・うん。」
「・・・いわれなくても・・・・でも・・・」
ポチの声は大体わかるものの、ボソボソと喋るタマの声はよく聞き取れない。
なんだろう・・・?タマの言葉からするに僕のことを話しているんだろうけど。
・・・。
「・・ん。」
きっと僕の前では話せない。だからこんな夜遅くに二人で抜け出して話しているのだろう。
それはそうだ。ここに来る前だって多分二人は一緒だったと思うから、二人でしか話せないこともあるはずだ。
「なら、僕がこれ以上盗み聞きするのはよくないかな。」
僕は二人の会話が終わるのを待たずに部屋に戻った。
盗み聞きはよくない。解っているものの、聞いてしまった以上それが頭に残って離れない。
「ポチは・・・好いてくれているみたいだけど、タマには・・・嫌われてるのかな。」
断片的にしか聞こえなかったから分からない。聞こえた分だかでは、あまり好意的には聞こえなかったかも・・・。
でも一週間もたたずに信用してもらえるなんてことは無かったんだろう。
今までのことがあったんだ。
それは最初に分かってたし、一緒に生活していていろんなことに気がついた。
案外、そういう人だけが傷つくような言葉を言っていたかもしれない・・・。
「仲良くなるにはまだまだ時間をかけないとダメかな・・・。」
しばらく考えてるうちにまた睡魔が襲ってきた。
「おやすみ、二人とも。」
僕は誰もいないベッドへ話しかけ、来るのを待つことなく眠ってしまった。
五日目の続きの話です。
なんか上手くいかなくて、結局二つに分ける形になってしまいました。
変な感じですいません。