後悔先に立たず
人間とは愚かな生き物だ。
目の前にやらなければならないことが、あるのにもかかわらず見て見ぬふりを繰り返し、明日からやればいいと面倒なことは先延ばしにし、だからと言って別の何かをするわけでもなく、ただ呆けているばかり――。
「ほんとダメだね」
冷たい視線を向け、そう言い放つアリスの姿が頭に浮かぶ。
やめろ‼
あっちに行け‼
しっしっ‼
次々と知り合いの姿が頭の中に現れ、僕に向かって罵詈雑言を浴びせては消えていく。
「何のために実家まで行ったの?」
「無駄なことしてんじゃねーよ」
「鴫野君ってホントに馬鹿だね」
「やるやる詐欺とかキモイんですけど、消えてくれません?」
「そんなのだから、いじめられるんだよ」
「引きこもり~、きっもっ」
いろんな人たちの声がぐるぐると脳内を駆け巡り木霊する。
その中にはもちろん、鹿沼ミハルの姿もあった。
うぅ~、頭がおかしくなりそうだ。
「ちくしょう。僕はなんて怠け者なんだ。勢いがよかったのは最初だけじゃないかよぉ」
人もまばらな電車の中、頭を抱えながらぼそぼそと僕は呟いていた。
乗客は少なかったが、誰もいないというわけでもなく老若男女様々な人たちがそれなりには乗っている。僕はそんな人たちから不審者を見るような眼差しを向けられ、たちまちに居心地が悪くなってしまった。
だがここで、隣の車両に移るようなメンタルじゃ同窓会なんてとてもじゃないが行けやしない‼
友達ゼロ‼
思い出ゼロ‼
絶対、確実、最強に場違いな自分が同窓会に行くとか冷静に考えてやばいし、アウェイすぎる。
だが、ひるんではいられない。決して逃げてはいけない。
そう今日は同窓会当日なのだ。
そして今、その会場に向かうための電車に僕は乗っている。
なのになんで!
俺はアルバムを一度も開かなかったんだあああああああああああああ。
うおおおおおおおおおおおお。
もう一度両手で頭を抱え絶叫する。
乗客全員から一斉に奇異の目で見られる。
せっかく実家まで往復五時間以上もかけて卒アルを取りに行ったのに、取りに行って満足してしまうとかホント馬鹿だ……。
計画では、自分のいたクラスの生徒全員の名前と顔くらいは覚えておきたかったんだけど。
時すでに遅し、とはこのことか……。
僕はその場に項垂れた。
そんな姿を見ていたらしく斜め前の方に座っていた中年女性二人が、なにやらひそひそと僕を見ながら話している。
僕は苛立ちを隠しきれず、キッと中年女性二人を睨みつけてやった。
「はあ、心折れそう……」
何気なく腕時計を見ると時刻は四時十五分を過ぎたところだった。
同窓会が始まるのはたしか五時だから会場のホテルには十分に間に合う時間だ。まず遅刻は考えられない。
周りの視線を気にするのにも疲れてきたところで僕は体力を消耗しないように、そっと目を閉じて夢の世界へと足を踏み入れた――――。




