ヒロイン属性
初投稿になります!
これから毎日1~2話を投稿していこうと思いますのでよろしくお願いいたします!
夕暮れ。
高台にある閑静な住宅街にさらさらとした心地の良い風が吹く。
空を見上げると、さっきまで空を覆っていた濃い灰色の雨雲は薄く溶け始めていた。
「ちょうど帰る頃に雨があがって良かったね鴫野君」
僕に向かってそう言ったのは、同じクラスで学園トップクラスの美少女である鹿沼ミハルだ。
下校途中、丘の上に続く坂道で鹿沼ミハルと偶然出会い、僕らはそのままの成り行きで一緒に帰ることになった。
「そっ・・・・・・そう、だね。てか、鹿沼さんって家こっちの方だったんだ~」
せっかく学園一の美少女が僕みたいなモブに優しくしてくれているのに、俺はと言えばキモキモ陰キャムーブをかますことしかできなかった。
そんな僕を見ても鹿沼は笑ったりせず、学園トップクラスの美少女は学園トップクラスの美少女の名に恥じない慎ましやかで上品な笑みを、その整った顔に浮かべていた。
トゥンクッ・・・・・・!
なんやその、可愛さ‼
こいつ本当に僕と同じ人間か?
いや、それとも僕が人間以下ということなのか‼
や、やめろ!
両手を前に突き出し、僕の視界から鹿沼を隠す。
高揚して頬が赤く染まり、熱を帯びていくのが分かった。
なんだこれ・・・・・・!
下校ってこんなにムリゲーだったか?
僕は深く息を吸って、時間をかけて吐き出した。
気を取り直そう。
高一・高二と同じクラスだったにも関わらず、下校時に鹿沼とばったり出くわしたのは今日が初めての事だった。
まぁ、僕が学校をさぼりがちだったのが原因なのかもしれないが・・・・・・。
「ううん。家は丘の下。今日はおばあちゃん家に行くの。だから普段はあまりこの道は通らないよ」
「へ、へえ、そうなんだ」
柔らかな彼女の声は俺の動悸を激しくさせ、やっと落ち着いた顔を再び赤くさせる。
「鴫野君、なんだか顔赤くない?」
隣を歩いていた鹿沼の顔が覗き込むように目の前に現れる。
「ひゃぁっ!」
急に視界が鹿沼ミハルで埋め尽くされた衝撃で、僕の身体は後方5メートルにまで吹き飛ばされる。
「人の顔を見て。その反応は失礼なんじゃないかなあ」
そう言いながら鹿沼がわざとらしく片頬を膨らませてみせた。
「い、いっい、いきなり覗き込んでくるからだろ! そりゃ変な声も出るし、身体だって吹っ飛ぶ!」
「いや、身体はふっとばないでしょ」
お手本のようなツッコミありがとう。
「と、とにかく・・・・・・こ、こんな所、誰かに見られたらやばいって‼」
「えっ、どうして?」
鹿沼が首を傾げる。
この娘は自分が学校でどんな立ち位置なのかいまいち理解していないらしい。
鈍感というかなんというか……。
「こんな所、学校の奴らに見られでもしたら、何言われるか想像するだけで悲惨だろ」
こいつもこいつで、もう少し可愛い自覚をもて!
さっきの膨れた顔とか、どう考えても自分が可愛いの分かってやってるだろ