12話
(ふぅ・・・。なんとかなったな・・・)
めちゃくちゃとなった黒焦げのフロアを見渡しながら、ゲントはゆっくりとその場から立ち上がる。
「マスターっ!! 大丈夫でしたかぁぁ~~!?」
羽をぱたぱたとさせながらルルムが一目散に飛び込んでくる。
その顔は今にも泣きそうだ。
「ううぅぅっ~~! 全身ボロボロじゃないですかぁぁぁ~~っ!?」
「へーきだから・・・。回復素材があるんだ」
『ふぇっ?』
マジックポーチの中からエメラルドポーションをいくつか取り出すと、ゲントはそれを体にめいっぱいふりかけた。
ピカーーン!
全身が輝きに包まれると、あっという間に傷口が癒えていく。
「はぅぅぅっ~~。よかったですぅぅぅ・・・安心しましたぁぁ・・・」
ホッとしたようにルルムはその場にぺたりと座り込んだ。
「心配しましたよぉ~マスターぁぁ・・・」
「でも上手くいったでしょ?」
「そーですけどぉぉ・・・。内心ずっとヒヤヒヤしてましたよぉ・・・」
「ごめん。けど、いろいろ助かったよ」
「とんでもないですよっ~! 成功してよかったですっ!」
これは2人で成し遂げたことだった。
どちらかが欠けても、きっとガノンドロフは倒せなかったことだろう、とゲントは思う。
(本当に上手くいってよかった)
奥義によって魔法陣を暴走させるというアイデアは、実際のところイチかバチかの賭けだった。
結果的に魔剣の力をもって魔法陣を暴走させることに成功し、それが連鎖的に大爆発を起こして、ガノンドロフはその爆発に巻き込まれる形で消滅することになった。
もちろん、その場にいたゲントも巻き添えを受けた。
しかし、なんとか無事だった。
ゲントが生きのびることができたのは2つのアビリティのおかげだ。
ひとつ目は《格闘王》。
==================================
[アビリティ名]
格闘王
[レア度]
B
[種類]
永続
[効果]
百戦錬磨の戦士の力を解放し、超人的な怪力を得る。
また、一定時間クリティカル率が上昇する。
==================================
爆発が起こる直前。
ゲントは《格闘王》のアビリティによって、魔剣をフロアの遠くへと飛ばすことに成功する。
瞬時にルルムがもとの姿に戻ることによって、ゲントは葬冥の魔剣の制約から逃れることができた。
ふたつ目は《踏ん張り》だ。
==================================
[アビリティ名]
踏ん張り
[レア度]
B
[種類]
インスタント
[効果]
10秒間だけ致死量のダメージを受けても力尽きない。
HP1の状態で生き残る。
==================================
これによってギリギリで生き残ることができたわけだ。
そこでゲントは、立ち上がったままとなっていた光のパネルに目を向ける。
==================================
【RESULT】
☆☆戦闘に勝利しました☆☆
[総合判定]
SS+
[討伐モンスター]
覚醒ガノンドロフ
[タイム]
00:34:11
[獲得EXP]
500,000
[経験値ブースト]
なし
[特殊ボーナス]
《獲得EXP10倍》
[EXP合計]
5,000,000
[入手アイテム]
虹光の大真珠×1
極上ベルナス×1
無結晶琥珀×1
==================================
【LEVEL UP】
☆☆レベルアップしました☆☆
Lv. 993→Lv. 1064
次のレベルまであと 経験値 8,765
==================================
どうやら今回も大幅にレベルアップしたようだ。
すでに大台の1000を越えている。
最後にもう一度だけステータスを確認しておくことに。
==================================
【トウマ・ゲント】
Lv. 1064
HP 53200/106400
MQ 0
魔力総量 0
魔力 0
魔法攻撃力 0
魔法防御力 0
火属性威力 0
水属性威力 0
風属性威力 0
雷属性威力 0
光属性威力 0
筋力 7001
耐久 6952
敏捷 7020
回避 6875
幸運 7143
SPゲージ 931/10640
クラスF
堕威剣邪
[ユニークスキル]
【抜剣覚醒】
[奥義]
〈居合い重ね〉
〈覇王瞬獄殺〉
[アビリティ]
《攻め立て》
《風纏い》
《勇空》
《天駆》
《気力絶倫》
《慧眼の睨み》
《火事場の馬鹿力》
《ガード強化》
《格闘王》
《氣合》
《怒り》
《血統の一致》
《痛覚無効》
==================================
「どんどんお強くなっていきますねっ~! さすがはマスターですっ!!」
ステータス画面を覗き見ながら、まるで自分のことにようにルルムは嬉しそうに口にする。
「俺ひとりじゃなにもできないよ。ぜんぶルルムのおかげさ」
「そんな謙遜なさらないでくださいっ~♪ 実際にモンスターを倒されてるのはマスターなんですから☆ しかも! これで『フルゥーヴ伝承洞』にいるモンスターはすべて討伐したわけですしっ♪ ほんとすごいことですよぉ~!」
「たしかに、エコーズの人たちが安心して暮らせるようになって、そこはよかったけどね」
これで冒険者ギルドも少しは話を聞いてくれるかもしれない、とゲントは思った。
(あ・・・)
そこでゲントはハッとする。
脳裏に甦るのはフェルンの言葉だ。
(たしかダンジョン内のモンスターをぜんぶ倒したら、そのダンジョンはしばらくすると次元の彼方に消失するって話だったよな?)
手短にそのことをルルムに伝える。
「ひぇ~~!? そーなんですかっ!?」
「だから早いとこ脱出しちゃおう」
「わ、分かりましたっ~~!!」




