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15話

 ゲントは走りながら、ルルムに確認していた。


「この魔剣って本当に攻撃に使えるのかな? なんかフェルンさんには視えてなかったみたいだけど」


『えっとぉ、この魔剣は魔族以外には視えないんですよ~!』


 ルルムによれば、この魔剣は大気中の魔晄が幾層にも重なって、光の屈折率を変えているため、ヒト族には視えないのだという。


「てことは、モンスターはどうなんだろう?」


『う~ん。たぶんですけど視えないんじゃないでしょうかー? なんか感覚でわかるんですっ! モンスターはルルムとはまた違うべつの存在だって!』


「そうなんだ」


 それが正しければ、状況はかなり有利と言える。

 相手からすれば、丸腰で飛び込んで来ているように見えるに違いない。


 たとえ、こちらが不可視の武器を所持していると見抜かれたとしても、敵は間合いを把握できなくなるため迂闊に踏み込めなくなる。


 まさに最強の剣と言える。


「ですが、ひとつご注意ください! 所有者が自身の力を疑えば、この魔剣はすぐに崩れて落ちてしまうんですっ~」


「それってどういうこと?」


「簡単に言えばルルムを信頼してくださいっ♡ それだけでルルムはマスターのお力になれますから♪」


 とにかくバディを信じる必要があるらしい。


「わかった。ルルムのことを信じるよ」


「はいっ♪ よろしくお願いしますっ~!」


 そんなことを話していると。


「「「ドシャアアアアアア!!」」」


 さっそくモンスターの群れが目の前に立ち塞がった。


 ゲントは魔晄に呼びかけると、すぐに相手のステータスを確認する。


==================================


[モンスター名]

エルダーキマイラ


[危険度]

B-級


[タイプ]

幻怪獣型


[ステータス]

Lv. 38

HP 6600/6600


==================================


 敵は双頭の顔を持つモンスターだ。

 その数はぜんぶで3体。

 

 翼を広げながら鋭い爪をこちらへ向け、威嚇するように立ち塞がっている。


 これがはじめての戦闘だったが、思いのほかゲントは落ち着いていた。


(こっちには魔剣がある)


 魔剣の力を持ってすれば簡単に倒せるはず。

 しかも、相手はこちらの武器が視えていない可能性があった。


 ゲントは(グリップ)に力を込めるとそのまま1体の正面に立つ。


 そして。

 思いっきりそれを振り抜いた。


 シュバーーン!!


「ホァ゛ァ゛ァ゛ッ~~!?」


 1体目のエルダーキマイラは、鋭い悲鳴を上げながらその場で真っふたつとなる。


『おぉぉ~~! さすがマスターですぅ! すごいすごいっ~~!!』


 ルルムの嬉しそうな声が脳内に響く。

 どうやら本当に痛みを感じることはなかったようだ。


 ならば、もうなにも気にする必要はない。


 ゲントはそのまま敵の間合いに踏み込むと、躊躇うことなく魔剣を振り下ろしていく。


「「ブォアァァァァァ~~!?」」


 ルルムの予想はどうやら的中のようだ。


 エルダーキマイラたちは、いったいどこから攻撃されたのか、まるでわかっていない様子だったからだ。


(この魔剣、本当に視えてないみたいだな)


 もとから性能がぶっ壊れている葬冥の魔剣(ケイオスヴァレスティ)に、ステルス機能が備わっているわけだ。

 まさに最強と最強の掛け合わせとも言える。


 〝攻撃を受ければ自らも一撃で命を落とす〟という制約もまったく気にならないほどだった。


『一気に倒されましたねっ~♪』


「うん」


 その場で朽ち果てるモンスターに目を落としていると、突然、光のパネルがゲントの前に立ち上がる。


==================================


【RESULT】


☆☆戦闘に勝利しました☆☆


[総合判定]

SS+


[討伐モンスター]

エルダーキマイラ×3


[タイム]

00:01:37


[獲得EXP]

6,000


[経験値ブースト]

×1.2


[特殊ボーナス]

《獲得EXP10倍》


[EXP合計]

72,000


[入手アイテム]

グリーンポーション×1


==================================


【LEVEL UP】


☆☆レベルアップしました☆☆


Lv. 1→Lv. 25


次のレベルまであと 経験値10,118


==================================


(なんか一気に上がったけど・・・)


 拾ったアイテムをマジックポーチの中に入れると、念のためステータスを開いて内容を確認しておくことに。


「ステータスオープン」


==================================


【トウマ・ゲント】 


Lv. 25


HP 2500/2500

MQ 0


魔力総量 0

魔力 0


魔法攻撃力 0

魔法防御力 0


火属性威力 0

水属性威力 0

風属性威力 0

雷属性威力 0

光属性威力 0


筋力 163

耐久 158

敏捷 160

回避 154

幸運 161


クラスF

堕威剣邪


[ユニークスキル]

【抜剣覚醒】


==================================


 あいかわらず、魔法関連のステータスに変化はなかったが、その他のステータスは爆速で上昇していた。

 モンスターを3体倒しただけでエグい上がりようだ。


(けど、これがレベル上げってやつなんだ)


 ゲームと違って自分の成長を肌で感じられるため、臨場感がハンパない。

 思わずゲントも口元が緩んでしまう。


 が、すぐに意識を戻す。


 ルルムの慌てるような声が聞えたからだ。


『マスタ~! 敵に取り囲まれちゃってますぅぅ~~!?』


「わかった」


 ゲントはすぐさまパネルを閉じると、魔剣をふたたび握り直した。


(次はどんな相手だ?)

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