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天才騎士は2度目の人生を歩む  作者: まいぺーす
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第0話


「お前は我が家にはいらない」


父親に叩かれ赤く腫れた頬を片手で覆い、呆然と立ち尽くしてしまった私に父親が言った。


(私が悪いのはわかっている、わかっているけれど、どうしても納得がいかない)


この日、義理の妹であるメイリンを殺そうとし、メイリンを溺愛している父親に家から追い出された。


(私の父親から愛情を受け、私の婚約者を奪い、私が将来なるはずだった王妃になる私の義理の妹のことをどう許せっていうの?あの時の憎しみの感情はどうすればよかったの?私にはそれを教えてくれる人がいなかったから分からない)


メイリンが家に訪れたのは約2年前。私が16の時であり、メイリンが15の時だ。そして



━━━━私の母が死んだ2日後の出来事だった



母が死んで翌日は葬式が忙しく来る暇が無かったのだろう。とはいえ私はその時のことをよく覚えていない。母が死んだということを受け入れるのも時間がかかった。

私はただぼーと「はい」と「うん」しか言えない魂の抜けた人間になってしまっていた。葬式の準備などはほとんど使用人がしてくれた為、私自身はそこまで忙しくはなかった。


(良い母親では無かったけれど、一応血の繋がった母親だ。心のダメージはそこそこあった。それよりも大事なのが)


私の母親が死ぬ直前に話した遺言である。


''私が死んだらあの人があの憎き女達を連れてくるでしょう。私の娘としてどうか、代わりに復讐をしてちょうだい。私をこんな惨めな人生を送らせてあなたの父親があなたを放置する原因になった憎き女たちに復讐を…!"


最後に力を振り絞ってそう語り、亡くなったのである。


(お母さま、ごめんなさい。あなたの望んだ復讐をする予定が感情を抑えきれなくなってしまって足元をすくわれてしまった)


メイリンに殺人未遂をおこなったとして私は今から貴族でいられなくなるだけでなく、この国の国民ですらなくなる。

メイリンが私のただの妹だったらここまでならなかったが今日から婚約者になったあの男が原因なのだ。


私の元婚約者オリバー。そしてこの国の第2王子である。


私がメイリンに出会う前に恋に落ち、3年ほど前に婚約を結ぶことが出来た。父親は浮気相手に夢中になりほとんど家におらず、母親は浮気相手の女を恨みその女を始末しようと夢中になり、いつも私一人だった。そんな中、王様がオリバーを歳が同じなのもありよく会わせてくれて、オリバーだけが私を支えてくれた。

そんなオリバーはメイリンに恋をしてしまったのだ。


オリバーは私がメイリンを殺人未遂してしまったことを知り、すぐに処刑をしようとした。だが第2王子という身分でまだ国民であった私を処刑することはできなかった。


(それに私がこの国の公女だから処刑することは厳しかったのだろう。それに、メイリンがなにかしたのでしょうね)


(私がどんなに嫌がらせをしようが、私がどんなに嫌おうが、私があなたを殺そうとしても、あなたは笑って許そうとしてくれる、無かったことにしてくれる。そんな貴方が嫌いだった。私が余計に惨めに見えてくるから、私にはそんなことが出来ない。それが愛情を貰える人間とそうじゃない人間の違いだと思ったから、私には一生愛情を貰うことが出来ないと言われたような気がしたから)


"お姉さまがどんなに私が恨んでも憎んでも嫌っても、私は気にしませんし、構いません。私の唯一の姉妹なんですから。半分ですが血は繋がってるお姉さまを私は嫌うことができません。仲良くしたいです。ですがお姉さまがこんなに苦しんでたのに何も出来なくてごめんなさい"


私がメイリンを殺そうとして護衛騎士に見つかり、連れて行かれそうな時にメイリンは泣きながらそう言った。

この子は自分が殺されそうになったのに私を嫌うことが出来ないと言ったのだ。半分血が繋がってるからと言って。姉妹だからと言って。私は半分血が繋がってても姉妹だとしても嫌ってしまった。

この子は本当に私のことを嫌ってはないし、それどころか今までの言動からして好いてくれているのだろう。この子は私に対して敵意を向けたわけではないし、何かしたわけでもない。ただ私と仲良くなりたかった妹なんだ。いつもいつも私が嫌っても仲良くなろうと贈り物をしたり、一緒にいようとしてくれた。だけど私は全て拒否した。


(誰にも愛されてないと思っていたけれど、あなただけは私を愛してくれてたのかしら、メイリン)



***



殺人未遂をおこなったため、この国では生きて行けなくなった私は隣国に移住することになった。

まずは隣国の国民になるため、役所に行き手続きをしなければならない。先に国王様が私が隣国に来ることを話してくれた為、スムーズに手続きは終わった。

勿論、殺人未遂をおこなった私はただの国民になれるわけがない。数十年前に私がいた国、ラズベールとこの隣国は戦争をしていた。

しかし、ラズベールは敗北をしてしまったのだ。それからラズベールは二度と戦争をしないという約束を誓い、数年に1回ラズベールの国民がこちらに来て代わり代わりに住んでいる。人質として。


(殺人未遂の女としてあの国にいたけど次は人質としてまさか隣国に来るとはね…)


そもそも人質なのだからそれぞれに監視がつく。数年に1度、30人ほどこちらに移住することになるが一人一人に監視がつくため、殺人未遂の人間がこようが大丈夫ということなのだろう。

とは言え、普通の人間が人質にくるのと違って、殺人未遂をした人間なので待遇は全然違う。

私は騎士の寮の女子寮に住むことになった。1番私をここに入れるとして安全な場所。女子といっても鍛えられた人達なので訓練を受けていない私がいくら暴れても取り押さえられてしまうだろう。


(騎士の寮ってまた最悪な場所)


我が家は元々国を代表する騎士一家ということもあり、あの家を思い出してしまう。


女子寮に行く道を案内してくれた為、すぐに着いたがまた色々考えてしまう。


(あの剣筋、我が家の騎士たちとは比べ物にならないぐらいダメダメだわ)

(あそこの人がしてるトレーニング、他のに変えたほうがいいのでは)


「あんたが殺人未遂したっていうお嬢ちゃんか」

「え、ええ。この度はお世話になります、わたくし…」

「ちょっと待ちな。私たちはあんたをお世話するつもりは全くねぇからそこんとこ分かっててな。訓練があるからそれじゃ」


名前を言うより先にどこかに行ってしまったガタイのいい女性。確かにここに私をいれるのは安全でしょうね。


これから私はこの女子寮に住むことになった。



****



それから数日間も過ぎたが特になにもなかった。

朝起きて自炊をして洗濯をして読書して寝るの繰り返しだった。

自炊や洗濯は私はしたことが無いため、女性の方々のしてるところを見よう見まねでやっていた。数回見ただけでそれなりに出来るようになったので私は意外と才能があるのかもしれない。それに興味本位で近づいてきた人達がたまにアドバイスをしてくれた事もあって今では完璧だと言っても過言ではない。


この女子寮を出ることが出来ないため、軟禁状態に近い日常を過していた。その為、暇な時間が多く読書をする時間が増えた。


そして窓から訓練しているところを眺める時間もそれなりに多かった。

色々こうした方がいいだろうなということは思い浮かぶが元貴族の殺人未遂犯が言ったところで聞いてくれないと思い、何も言わず見つめて考えて終わりになっていた。


「今日の監視担当はアンジュさんですか?」

「おう。監視って言ってもただ見てるだけだがな」

「それを監視っていうんですよアンジュさん」

「そーなのか?んじゃそゆことで」


このアンジュって言う人は興味本位で近づいてきた人の1人。特に私と話してくれる為、退屈ということがあまりない。


「あのさー。気になってたんだけど」

「なんでしょう?」

「この窓見つめるとき、険しい顔してるけどなにかあるんか?」

「険しい顔してましたか?それはすみません。以後気をつけます」


いけない。いけない。顔に出てしまいましたか。


「まあ、いいんだけど。それよりさ、あまり思い詰めるなよ」

「?」

「いや、すまねぇ、君の妹君から手紙がきててな」


(メイリンから…!? どういうこと!?)


そう言うとアンジュはズボンのポケットから紙を広げ始めた。


「あんたさ、あれだろ。イノシシタイプだろ」

「いの、しし…?」


いのししとはあれでしょうか。おおきな牙が2つついていて毛皮に覆われている大きな動物。


「要は前しか向かねえタイプだ。私がそうだからわかる。周りが見えなくて、見えた時色々後悔する。なんで見えなかったんだろうってな」


そう言ってアンジュさんは悲しそうな顔をして私の方を向いた。


「そうですね。もっと周りが見えていたら違った結末だったかもしれません。だけどやってしまったことはもう取り消しようがないので」

「そうか。もうあんたはちゃんと周りが見えたか」

「ええ、もっと早く気付きたかったです。そうすればあの子と仲良くなれたかもしれないのに」


もし、あの子の好意のことに気付いていれば殺さずに済んだかもしれないだろうか。いや、気付いても気付かないふりをしていたのかもしれない。もしくは本当は気付いていたけれど気付かないようにしていたのか。


「ここにいるヤツらは訳アリのやつが多くてな。ただの平民が騎士になりたくてきてるやつもいるが大半がそうだ。だからお前だけが過ちを犯してしまったとか思わないようにしろよ。人間だれしも大きな過ちをしてしまう。そしてその後どうするかが大事なんだ」


その後…


そう言われた時、私は妹になにかしてあげただろうか。謝っただろうか。そんなことが頭に思い浮かぶ。

あの子に謝りたい。仲良くなりたい。


「わたし、あの子に謝りたいです。会ってちゃんとごめんねって言える姉になりたいです」

「そっか」


アンジュはなぜかそう言った私に向かって羨ましそうな顔をした。


(謝りたいと思ったけれど、今人質の私があの国に行けて、そして殺そうとした妹に会えるのだろうか。会えないよね…。どうすれば会えるのかな)


「私がこの国を出れるようにするにはどうすればいいですかね」

「さぁ?そんな事例聞いたことねーしな」

「ですよね、、」


「あ」


アンジュがなにかを思い出したかのように言った。


「あんたが騎士になればいいんじゃね?」

「え?」


今の話と騎士がどう結びつくのか理解が追いつかなかった。



****



「えっと、要するに騎士になってすんごく強くなれば、数年に1度ラズベールに王族が行く時に護衛として選別されれば行けるってことですか?」

「そゆこと!物分りいいな!確か妹君、王族になるんだろ?なら更にいいじゃん。選別されれば会うの確定だぜ」

「いやいやいやいや」


そもそもの前提条件である、"すんごく強くなる"がかなりハードル高い。むり


「だってあんた、筋力は全く無いけど観察力はいいじゃん」

「へ?」

「いつも小声で剣筋がーとかぶつぶつ言ってるぞ」


心に思ってることがまさか出てしまっていたとは予想外すぎて空いた口が塞がらない。


「その、だとしても実際にやるのとはわけが違いますよ」

「うーん、分かんないけどあんたなら大丈夫!私の人を見る目だけは天才だからな!やらないよりかはマシだろ!」

「そ、それはそうですけど…」

「じゃ、そゆことで」

「え、え!?」


そう言って私を運んで走り出した。


「こいつも一緒に訓練したいって言ってるから一緒にやろーぜ!」

「え、?え??」


私の頭にはずっとはてなマークが浮かび上がって思考が停止してしまった。



****



それからというものの、月日が流れ、5年後、アンジュが言った通りになった。


「ねえ、あんたなにもの?アンジュ。ここまで上手くいくと怖いんだけど??」

「とはいってもそこまで上手くはいってねぇだろ。練習入れるのも一苦労したんだぜ?感謝しろよな」

「そ、そこは感謝しているけど」


まさかの本当に護衛として選ばれて他国に行くことになった。

元々この国は騎士に関してはそこまでうるさくないらしい。ラズベールでは貴族しかなれない騎士であったが、この国では実力があるものは騎士になれる制度のおかげで人質であろうが騎士になれてしまった。

だがしかし、殺人未遂犯のこともあり書類とかが大変だった。まずはこの国の国民として生涯生きること。これにサインすればラズベールの国民に戻ることは出来ない。またなにかあれば次こそは処刑にされること。これに関しては当然といえば当然なのだろう。

それから5年間ずっと訓練を続けて大会に出て成績を収めを繰り返していたら本当に選ばれてしまった。

これに関しては志願とかそういうのではなく、王族が選んで送ってくるため、いつくるのかわからない。手紙が届いた時はその場でスキップしてしまったぐらいだ。


「そもそも王族が他国に行くんだからかなりの人数の護衛を連れるから成績を残してるやつなら結構選ばれやすいんだよな」

「そうですね。見てるだけでも200人程はいます。移動するだけでも大変そう」

「まあ、戦争するなら数千人とかいるらしいからそれに比べたら少ない方か」

「物騒なものと比べないでください」

「へいへい」


(ついにラズベールにまた行く日がきてしまった。メイリンに謝らなければ)


「おい、一応聞くがそれなんだ?」

「メイリンに謝る時に真っ白にならないよう全て書いているのです」

「その1mはある紙が???」

「はい」

「内容が反省文みてーだな…。それ絶対にやめた方がいいぞ…」

「?どうしてです?」

「いや、いいや…。こいつなりに頑張ったんだろう、そうだ。うん」

「なんですかー!ちゃんと言ってください!」

「そろそろ出発の時間だから気をつけてな」

「話をそらさないでください!」



****



上へ上へと舞い上がる炎。

たすけて、や、きゃーとかいう悲鳴がずっと聞こえてくる。


ラズベールに着いたらそこは炎の海だった。


どうしてここまで燃えているのだろうか。辺り一面が真っ赤に染まっている。


一応は生まれ育った故郷だ。この状況を見て何も思わないかと言われたら嘘になるだろう。


「ラズベールになにがあった?」

「至急確認してきます」


王族が不安そうに話をしている。

王族も騎士たちも勿論私も今このような状態は想定外の出来事であり私含め大勢の人が硬直してしまっている。


「王宮が燃えているらしく、連絡が取れません…!」


(王宮が燃えている…?どうして…!?メイリンは無事なの!?)


そう思った時にはもう遅かった。


「おい!どこに行く!」


私は馬を走らせ王宮へ王宮へ近付いていく。

考えるよりも体が動いてしまっていた。

今の私の耳には何も聞こえない。目的地の高く高く火が燃え上がってしまっている王宮以外何も見えていない。

私の義妹は無事だろうか。早く行かなければ手遅れになってしまうかもしれない。この手紙もこの日にメイリンに謝るために5年間考え書いたものだ。今日この日までメイリンに"ごめんね"の一言を言うためにキツイ稽古も試合もこなして来た。いつ死ぬかもしれない戦争にまで出て実績を積んで行った。今までの事を考えたらごめんね以外にも色々言いたいことがある。どうして神様は今日この日をこのような最悪の事態にしてしまったのか。そもそもどうしてこうなったのだろうか?

もしかしたら罰があたったのかもしれない。いや…罰があたったのならメイリンを巻き込む意味が無い。


メイリン…どうか無事でいて。


王宮への近道は知っている為、1時間ほどでたどり着いた。

入口から中心部にある王宮まで通常2時間以上はかかるから1時間はとても早い方だ。


「メイリン!メイリン!!!」


王妃の部屋は確か最上階の右側。火事のせいか入口にいる人がいなかった。


(この王宮の作りは知っている。小さい頃からよく出入りしていたもの)


「メイリンー!メイ!メーイ!」


火が回っていてとても息ができる状態じゃなかった。

何も考えずに日の回ってる王宮に入ってしまうなんてアンジュの言っていた通りイノシシタイプねわたしは。

……いえ、今この状況は一分一秒でも欲しいもの。早く着くための道。なにか準備する時間もない。これは仕方ないこと。

それにしても息があまりできない状況というのはとてもキツイ。


(早く戻らないと一酸化炭素中毒になって私が死んでしまう。それじゃだめ。がんばるのよわたし)


「……あった。王妃の部屋」


目的地の王妃の部屋にたどり着き私は思いっきり叫んだ。


「メイリン!!わたしよ!!」

「お、お姉さま…?わたし、もしかして死に際に幻聴を聞いてしまって…?」


「!!!!!!メイ!!!」


生きていた。よかった。早く外に


「開けちゃだめ!!!」


光が反射してギラリと光った刃が私の目の前に迫ってきた。


「今のを止めるか。誰だ?只者じゃないな」

「わたしは、メイリンの義姉よ!」


これはどういう状況なのだろう。炎が蔓延している部屋にメイリンと黒い兜を被った男がいる。黒い兜を被った男が今私に襲いかかっている状況。なにがなんだかわからない。


「もしかしてこいつを殺人未遂したっていう姉か?国外追放されて今はここにいないはず。それに剣の腕がかなり強い」

「ええ、そうよ。その姉よ。愚か者の姉よ。私はメイリンに謝罪をしに来たの。だから邪魔しないでちょうだい!ね!」


男の腹を足で蹴ろうとして掴まれてしまった。


「剣と剣の勝負で足は邪道だ。なぜこんなことをする」

「早く手を離しなさいよ。私はあんたなんか相手してる暇なんかないの」

「少しでも飛ばしてその内に逃げようとしていたのか?ばかだな」

「バカで結構!」


掴まれた足を軸に回してもう片方の足で掴んでいる腕を蹴った。そして上から剣で切りつける。


「その足は鞭みたいだな。面白い。だが純粋に剣の試合がしたい」

「そんなの知らないわよ。早く逃がしなさい」

「逃がしてと言って逃がすバカがどこにいる」


お互いの剣と剣がぶつかり合い、その音が鳴り響く。その姿を見てメイリンは何も出来ずに2人を見るだけ。メイリンはなにかして姉を助けたいがそのなにかをすれば姉が危機的状況に陥るかもしれないと思わせるようなぶつかりだった。


「この火事のせいで私死んでしまうわ。それはあなたも同じよ。ここでの試合はやめて後日に回してくれるとありがたいのだけれど」

「それは出来ない相談だな。この試合のまま死ぬなら本望だ。俺は純粋に戦いをして終わるならそれでいい」

「中々の変態ね…」


剣に名前をつけてずっと抱き抱える変人がいたが、それとは違う恐ろしい変態がいるもんだ。


「…!」


男の体勢がなぜかよろついた。


(なにかの罠か…?)


その瞬間、メイリンが飛び出した。


「私だってお姉さまの役に立ちます!!」

「!?!?メイリン!!やめて!戻って!」


その時、男は兜を被っていて顔は見えずらいが口角が上がったような気がした。


グサッ


剣が体を突き通した。血が大量にどばっと下に落ちていく。


「お姉さま!!お姉さま!?!?」


そう、私の血が大量に。

刺された旨を中心に時間が経つ事に円が大きくなるように血が広範囲に広がっていく。

メイリンの顔が真っ青になり慌てふためいている。

こんなダメ姉の為に涙を流してくれるなんて本当にいい子ね。


「メイリン、ごめんね。謝りたくて私、色々あって騎士になっちゃったんだよね、、今までごめんね…」

「話さないでください、!止血を!止血を…!」


メイリンが慌ててドレスをちぎって傷のところを抑えようとする。


「ははっ、これぐらいの布じゃ止血できないよ…。私は謝れただけで十分だったのに守れて嬉しいなぁ…」

「生きて…お姉さま生きてくれないと私は嬉しくないです…!」

「そんなに泣かれたら私、どうすればいいのか分かんないよ…」


痛いとかいうのはなかった、腕の感覚が飛んできたからもうだめだなぁ


「あのね、最後にお姉さまじゃなくて、アナお姉ちゃんって呼んでくれないかなぁ…? 」

「最後なんて嫌です…!」

「お願い」

「アナお姉ちゃん、生きて、生きてよ…」

「ありがとう」


そう言いながらメイリンの頭をなでた。


「アリミシアナ・ヴァーナル。ヴァーナル公爵家の長女。時間があったら戦いを続けたかったがこうするしかなかった。出会い方が違えば良きライバルとしてもしくは友としていれたかもしれない」

「はっ!あんたみたいな卑怯なやつはお断りよ」


そう言ってもう一度こちらに向かって剣を刺そうとした。


「あなた、いのししタイプでしょ?前だけじゃなくて周りをよく見たらまた違う結末かもしれないわよ。同じタイプの人からの忠告。アンジュが言ってたけど、確かになんとなくわかるわね」

「何を言ってる。そろそろ終わりだ」

「うん。終わりだね」


(そろそろ意識飛びそう。やばい)


「じゃ」


そう言うと床が少しずつ崩れ、一気に床が崩壊した。


「実は、戦ってる間に少し…小細工した、のよね。やっと、発動、した」


この下の部屋はベッドがまたある。落ちてもメイリンは助かるだろう。アンジュがそろそろこっちにきてるだろうし、あとは妹をよろしくお願いね。


「……メイリン、今まで、私を、愛してくれて、ありがとう」


この一言だけは死ぬ前に言いたい。声が掠れてでもメイリンに届いて欲しい。


「………今更、だけど…メイリン、」


「愛してる」


そう言って私は命を絶った




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