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おもいで精霊と何者でもない私  作者: 天乃 朔
第4章 たぶん、正義の味方(代役)

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412 学院祭2日目

 本祭二日目。


 闘技場には先程までの試合の熱気が残っていた。本日は学院祭の“本来の主旨(メインイベント)”である武闘大会の準決勝戦と決勝戦が執り行われる。並行して行われている学院祭の催し物も決勝戦前までにはほぼ全てが撤収し、この場に集まってくるため、学院祭は武闘大会を残し実質終了と言って良い。


 そりゃあ武闘大会にお客は取られるし、催し物に携わっている人達だって試合を観戦したいよね。


 本日は学生の家族は招待されておらず、外部から訪れているのは武闘大会に関連する招待客に限られている。彼らはめぼしい学生を新規採用(ハント)しようと、予選から値踏みするような視線を参加者に送っていた。その採用側に日向会長が含まれているのが何だか笑ってしまう。いつも辺境伯家(実家)は財政難だと嘆いていたのだけれど、新しい騎士を雇う財源が確保できたのだろうか? それとも古参の騎士が大量に退職したとか?


 何てことをつらつら考えていたら、準決勝第二試合の開始時間が迫ってきた。

 私の隣には師匠が座っており、茹でた枝豆をつまみに黄金色の液体を飲んでいる。本人曰く、冷たいほうじ茶とのことだが、お茶にしては謎の泡が出ているような気がするけれど……きっと気のせいだよね? 流石に師匠でも学院内でアルコール(お酒)は飲まないだろう……多分。


 あ、枝豆の皮を亜空間に不法投棄するのは止めて欲しい。


 さて私は、師匠に引き摺られるようにしてこの場に連れてこられていた。何でも竜胆が準決勝まで勝ち上がったらしく、「折角だから一緒に観戦しようぜ。師匠命令ね」ってことである。

 そもそも何で私が竜胆の応援なんかしなくちゃいけないの? 息子の応援に弟子を巻き込むなんて公私混同じゃない? そりゃあ、負けたら良いとまでは思わないけどさ……


「「「ワアアアアアァァァァーーーー!!!」」」


 ビクッ。


 大きな歓声と共に闘技場に革鎧を身に纏った二人の剣士が現れる。一方は竜胆で、歓声に応え得意げに手なんか振っている。結構人気があるらしい。

 チッ、竜胆のくせに生意気な。

 もう一方の対戦相手は、竜胆を上回る歓声を浴びていた。明らかに黄色い声ってヤツだ。


「きゃー、きゃー、きゃー!!!」

「きゃー、素敵ぃ! お姉様―っ!」

「男なんかに負けないでー!」


 竜胆の対戦相手は何と、白百合の君こと高砂小百合先輩である。女性が準決勝まで残ったのは快挙と言って良い。筋力で勝る男性に勝つために魔法で補ったのだろう。勿論試合での魔法の使用は認められている。だってここ魔法学院だもの。

 高砂先輩は、某女性歌劇団の男役を思わせるようなキリッとした佇まいで、対戦相手である竜胆を見据える。下馬評ではやはり力に勝る竜胆の方に分があるらしい。

 ガンバレ、高砂先輩!

 さあ、準決勝第二試合、“竜胆”対“白百合の君”、試合開始である。


 ガンッ!


 早速、木剣と木剣がぶつかる。

 私が夢の中で見た前世のゲームの中では、高砂先輩にあたるであろう“ユリ”が優勝した事実は無い。そもそも武闘大会が登場するのは、王子ルートと騎士ルートの二つだけで、王子こと“アオイ”か、騎士こと“リンドウ”のどちらかが優勝するのだ。ただ、他のルートでは、“アンズ”が攻略対象との恋に現を抜かしている裏で、“ユリ”が優勝している可能性が無きにしも非ずではあるが……。

 ちなみに王子または騎士ルートでは、武闘大会の優勝者はアンズの愛の力で決まるらしい。愛の力とか曖昧な言い方にしているけれど、アンズの補助魔法で加勢でもしているのだろうか……


 それって不正じゃない?


 まあ、それは兎も角、大会の結果で杏子の現在の攻略状況は……分からないだろうなあ。ま、杏子の恋愛状況なんて、今となっては私に関係な……くもないのか……

 エピさんのためには、杏子の動向を抑えておくべきなんだろう……ヤダだけど。

 まあ、選ばれるすなわち(イコール)恋愛対象とは限らないのだけれどね。じゃあ恋愛対象でなければ何だって話だけど……。神託の内容が曖昧すぎる。いや、神託の内容は全てが公表されているわけでは無くて、周りが勝手に解釈しているだけだったっけ?

 このあたり私の中で現実とゲームがごっちゃになっている。


「…………そもそもこの世界は、本当に前世のゲームの世界と同じものなんだろうか?」


 ポロッと言葉が零れる。うわっ、前提条件を否定しちゃったよ。


「痛っ!」


 “おもいで精霊”が見えない手で私の髪の毛を引っ張り、「それは違う!」と主張する。ついでに猫耳精霊達もそれに便乗して私の髪にぶら下がる。


『ブラーン、ブラーン』

『ワーイ、ワーイ』


 ちょっと、あんた達…………。


 ということで、この世界がゲームと酷く似通った世界であることを受け入れることにする。まあ、最初からそれは感覚的に分かっていたんだけどさ。

 ゲームでは開始から一年後にルートが分岐するので、王子、または騎士が優勝するとしたら来年の武闘大会で、今回の大会は関係ない筈。現実世界で王子に該当する日向会長も参加していないしね。ということは、分岐までまだ約半年の猶予があると考えて良い。


 でも待って!


 そもそも杏子が王子または騎士ルートに進むとは限らないわけだし、他ルートでは武闘大会で誰が優勝するか私は知らない。


 もし、ルートによってゲーム内の時間の流れが異なるとしたら?

 もし、ゲームで一年目と思っていたのが現実では半年(前期)にあたり、既に分岐を迎えているとしたら?

 もし現実世界の分岐がゲームより早まっていたら?

 もし……、もし……、もし―――


 私の頭の中は疑問符でぐるぐると渦巻いている。結局、何一つ分からない。



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