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おもいで精霊と何者でもない私  作者: 天乃 朔
第4章 たぶん、正義の味方(代役)

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405 秘密の花園にて1

・1/24 一部修正

 ここで、私の使える魔法について整理しよう。

 私の属性は無属性であり、これは火、水、土、風、雷の五大属性、プラス光、闇属性に含まれない少数派を大雑把に纏めて一緒くたにした総称である。

 この辺、ホント適当だよね。

 で、師匠曰く、私の場合は無属性の中でも空間魔法に適性があるそうで、なんと幻影魔法も空間魔法の一種とのことである。では、他の属性の魔法が全く使えないかというと、そうでもないらしく、あくまで不得意属性というだけで習得は困難だけど、訓練すれば使えるようになる……かも?

 水魔法とか使えるといいよね。ダンジョンで、飲み水や汚れを落とすための水に気を遣わなくてもいいのはとても助かる。火魔法だったら、暖を取るための焚き火や、料理の時に役立つし、あ、でもこれは燐寸で事足りるか……

 私は空間魔法を中心に訓練することになった訳だけど、他の魔法にも心惹かれている。でも選択講義は師匠に指定され、何だか自分の意志が反映されていないような気がしないでもない。

 ま、今はそんなことより……


「エピさんどうぞ。これダンジョン土産です」


 駝鳥の卵くらいの大きさの石をドカっとテーブル上に置く。黒地に白の斑紋が夜空に瞬く星の様でとても綺麗な石だ。

 ここは秘密の花園。

 久々にエピさんとの逢瀬(?)である。夏期休暇中はエピさんに会えなかったので、漸くダンジョンのお土産を渡すことができた。ダンジョンで魔獣を倒した後、地面に綺麗な石が散らばっていたので、亜空間収納にいくつか回収していたのだが、その中でも特に綺麗なのを渡した。大鴉の亡骸のところに落ちていた石である。他のはともかく、これに関しては実質私が倒したようなものだから、貰ってもいいと思うんだよね。

 いいよね?

 エピさんが怪訝な顔で私を見詰める。やっぱりこんなんじゃお土産にならないか……本当は鉱石を取ってきたかったんだけど。


「あ、それとこのペンダント、お返ししときますね」


 あのお爺さんの話が本当だとすると、これって相当由緒正しいものじゃない?


「いらん。これは、お前にやったものだ」

「いや、でも……もしかしてエピさんは王族……」

「戯言だ」


 まあ私が揶揄われただけかもしれないけど、本当だったら恐れ多くて持っていられない。魔法少女に変身できないのは……ちょっとだけ残念だけどね。

 ホント―に、ちょっとだけね。

 エピさんとペンダントを返す返さないでうだうだやっていたら、テーブルの上に綿埃が一つ、二つ……


「ん?」

『……ダッタ』

「へ?」


 綿埃……もとい精霊が何か言った。


『ダメ、ダッター……』

『センヤクー、センヤクー……イター』


 ぽよん、ぽよんと綿埃がテーブルの上で跳ねる。何だかこの綿埃、猫耳のような突起がある。


『クルクルーノ、オンナノコ、ダメダッター』


 精霊が言うには、精霊の女王との約束を果たすべく、精霊達の有志を集い野茨先輩に憑きに行ったらしい。しかし、いざ野茨先輩に憑こうとしたところ、既に何者かが憑いており、この精霊達は憑くことができなかったということだ。

 え、野茨先輩大丈夫なの?

 まあそれも気になるけれど、何故精霊達がここに来る?


『ショウドウブツー……ホシイ、イッター』


 私はそんなことを言った覚えはないのだが、どうやら精霊達は私が小動物を欲していると思ったらしく、野茨先輩の次点として猫に擬態して私の所に来たらしい。次点っていうのも何だか気に障るが……猫……これ、猫か……? 確かに猫耳……らしきものはあるが……


「え、ちょっと待って、もしかしてこれが精霊の女王からの私への報酬?」

『オメデトー、オメデトー』

『ウレシイネー、ウレシイネー』


 別にお目出度くも、嬉しくも無いわ。


「そこに何かいるのか?」


 エピさんが目を細め精霊達の居る辺りを見る。どうやらエピさんには精霊の姿が見えていないようだ。精霊達がぶるぶるっと身体を震わせると、その姿が少し鮮明になったような気がする。


「もしかして、これが精霊なのか?」


 エピさんが猫耳の生えた綿埃状の精霊を凝視する。先程の精霊の行動が切っ掛けに、その姿が見えるようになったらしく、精霊へと迷いなく手を伸ばした。精霊は自分の意志で他者に姿を見せたり、見せなかったりすることができるらしい。


『ザンネンダケドー、ネガイハカナワナイヨ』


 エピさんの手が精霊に触れようとした瞬間、それをするりと抜けて精霊が言った。エピさんが硬直する。


『ネガイヲカナエルノハ……ムリ。ソレハ、モハヤノロイデハナイ。スデニタマシイニキザマレテイル』


 一体、何の話?


『ザンネーン、ザンネーン』


 精霊達はとても残念そうにはみえない様子ピョンピョンと跳ね回る。


「そんなのは分かっているっ!」


 バンッ!

 とエピさんが立ち上がりテーブルを叩くと、精霊達がサッと私の頭の上によじ登った。こんな激昂するエピさんは初めて見る。


「エピさん……」


 エピさんが抱えている事情は私なんかがどうにかなんて出来無けれど、いつものエピさんに戻って欲しい。私の目の前にはエピさんのお腹が……えいっ。ああ、もふもふ……


「おいっ」

「……エピさん落ち着いて」


 エピさんのお腹の毛並みの誘惑に負けて……つい抱きついてしまった。でもこの肌触り離れがたい。引き剥がされないのをいい事にもう少しだけこのまま……


「全く、お前は……」


 ほら、エピさんも許してくれている。


『ノロイヲトクコトハ、デキナイケレド、イツワルコトハデキルヨー』

『ウン、デキルネー』


 私の頭の上で精霊たちがぴょこぴょこ跳ねる。やめて欲しい。


「それでかまわない。それには一体どうしたら良い?」


 エピさんが私の頭の上の精霊に問いかけた。


『ノロイヲトクナラ、ヤッパリ、アイジャナイノ?』

『アイ、カナ?……クスクスクス』


 精霊達は真面目に答えるつもりはないようだ。私の頭の上からテーブルの上に飛び降り、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。


『オウジサマガ、オヒメサマニ、キス、スレバイインダヨ』

『チガウ、チガウ、オヒメサマガ、オウジサマヲ、カベニナゲツケルンダヨ?』

『キャハハハ……』


 ああ、そういう童話があったね。

 精霊達は巫山戯でいる様に見えるけれど、エピさん、怒っちゃ駄目。エピさんに回した腕にギュッと力を込める。


「頼む。教えてくれ」


 エピさんの怒気を抑えた声がズシンと響く。もしあのお爺さんの話が本当だとすると、エピさんはどこかの国の王子様で、呪いをかけられて猫の姿でいるのかもしれない。


「エピさん……」


 私が力になれないかな……ムリだよね。

 テーブルの上の精霊達が顔を見合わせ、頷いたように見えた。


『アノネー、ウンメイノムスメニ、エラバレレバ、イインダヨ』

『ダヨー』

「え?」


 すっと背筋が凍る。


『センタクノ、ムスメジャナカッター?』

『ソウダッケー?』

『ソウダッタカモー』


 運命の娘って杏子のこと? 何でここに杏子が出てくるの?


「運命の娘……」


 エピさんが呟く。

 この世界の主人公は杏子なのだと、改めて目の前に突きつけられたような気がした。

 私はエピさんの腕の中……いや、私がエピさんにへばりついているのだっけ……ともかく、その場から動くことができなかった。



 杏子は私からエピさんも奪っていくの?



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― 新着の感想 ―
エピさん、まさかね… 特大の不安感がでてきましたね、これからがちょっと苦しそう…
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