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おもいで精霊と何者でもない私  作者: 天乃 朔
Prologue

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2/99

002 【記憶】

『アンの魔法(まじかる・)物語(すとーりーず)』。


 「恋も!夢も!魔法で叶えちゃおう!!」をテーマに作成された女の子向けゲームだ。

 前世の私が幼い頃に大流行した魔法少女アニメに便乗し、キャラクターデザインはアニメと同じヒクイノクラミ、限定版には彼女の美麗イラスト集が同梱されていた。


 ゲームの内容は魔法学院に入学した主人公のアンズを育成し、素敵な男の子と恋愛を楽しもうという恋愛育成シミュレーションで、攻略対象は王子(セレブ)騎士(筋肉)魔術師(真面目)教師(年上)遊び人(プレイボーイ)年下(ショタ)のテンプレートな攻略対象六人に、隠しキャラの一人を加え総勢七人。入学一年後のパラメーターによって大きく四つのルートに分かれ、ルートごとに攻略対象が決められている。


 世界観についてはゲーム内であまり語られていないけど、昭和な時代をベースにファンタジー要素をぶち込んで、和洋……古今折衷? のごちゃまぜな世界にしましたって感じ。何故か街並みが中世ヨーロッパ風なのに社会的インフラは現代日本並みに整っていたり、魔法があるため一部の科学の発達は遅れているという設定だったりと、言うなれば、ご都合主義の何でもありの世界だ。


 学院の制服も女子はセーラー服にフード付きローブ、男子は学ランにマントを羽織った何とも微妙な和洋折衷である。男子は大正か昭和初期って感じ? まあ、それはそれで……こほん。兎に角、セーラーにローブなんて野暮ったい。でも主人公を始め主要人物は揃って美形のうえ、スタイルも良いので何故か野暮ったい制服もステキに見えるから不思議だ。


 まあ、このように一見普通の乙女ゲームっぽいが、実際は育成ゲームと乙女ゲームを混ぜ合わせて、水で薄めて引き延ばしたような感じで、育成ゲームというほどやり込み要素は無く、乙女ゲームというほど恋愛要素の無い、どっちつかずのゲームだった。だから、巷では乙女ゲームならぬ、女の子向けゲームと呼ばれていたらしい。

 多分、スタッフは恋愛主体の乙女ゲームなんて作成したくなかったのだと思う。だってメインルートはアレだし……


 兎に角、前世の私は美麗イラスト集に釣られ、なけなしのお小遣いを貯めて限定版を購入したのだ。まあ、そんな薄い内容のゲームであってもお子様な私には十分楽しかった。正に私は推奨対象の女の子だった訳だし。


 それから時が経ち、成長した私は、ふと思いつきネットでこのゲームについて検索してみた。あるルートだけは、何度挑戦しても、攻略本に頼ってもどうしても攻略できなかったので、それが心に引っ掛かっていたからだ。

 子供の頃にはネットなんてなかったけれど、便利な世の中になったよ。いや、その世界では私は多分死んでいるのだから、どんなに便利になってももはや関係がないけれど。

 そして、あるコミュニティサイトでこのゲームを懐かしのゲームの一つとして取り上げたログが残っているのを見つけたのだった。


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