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どれくらい時間が経ったのだろうか? 遠くから響いていた怒号や爆発するような音は段々と聞こえなくなってきた。
そろそろと岩場から顔を出せばダンジョンらしき場所の方から黒煙がいくつも空に上がり、空は黒く染まってる。
地上は火の手も上がっているのか明るく、こちらにまで煙の匂いが漂ってくる。
シンさんの食事に付き合ってクッキーぐらいしか食べてなかったからお腹が空いて来た。多分お昼は過ぎているわよね?
街の方はどうなっているのかここからじゃ分からないけど、この戦いはそろそろ終わりそう。それなのにシンさんの姿は一向に見えてこない。
「どうなってるのよ」
もしかして死んでたりしないわよね?
シンさんの実力は知らないけど、あたしを抱えてここまで来れたんだから、多分弱くはないはず。だけど、あれだけのモンスターを相手にして無事でいられる?
「落ち着けあたし。冒険者はシンさん1人じゃないんだ」
あの場に居た冒険者の中に新人以外の冒険者もちらほら居た。
それにモンスターの大群だったとは言えシンさんが弱いって一緒から大したことはないはず。
「うん! 大丈夫! きっとみんな無事よ」
だったら何で戻って来ないんだと疑問が頭によぎるがそれには気付かないふりをする。
もう少しすればきっとシンさんの姿が見えてくる。そして、みんな無事だったと吉報を持って来てくれるはず。
そう願うのにどうしてシンさんはいつまで経っても姿を現さないのだろう。
少しだけでいいから姿が見えたら安心出来るのに。
「ああ、もう、本当にどうなってるのよ……」
探しに行きたいけど、ここを降りるのは怖い。
何メートルぐらいあるんだろ。10メートル? もっとある?
ちらりとシンさんが去って行った方角を見るが人気はない。そして、いつの間にかさっきまでしていた爆発音は全く聞こえなくなっていた。
「終わったの?」
◇◇◇◇◇◇
あれから更に時間が経った。
夕日が差し込み始めたのか辺りは赤く染まり始めたがシンさんの姿は一向に見えてこない。
このままじゃ夜になってしまう。
もしかしたらシンさんは来ないんじゃない?
「…………」
夜になって朝になっても来なかったら? シンさんがこのままここに来ずに死んでたら? 生きていても動けないぐらいひどい怪我をしてたら?
考えれば考える程思考が恐ろしい方へと向かって行きいてもたってもいられなくなりそう。
「……うん。降りよう」
爆発音はもう何時間もしてないし大丈夫でしょ。
落ちないことを祈りながら岩壁から降りた。