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 あたしの名前はイオ・ヤッケンリー、17歳。生産系のスキルを持ってる。


 スキルはこの世界の人たちが生まれた時から持ってる能力でおおざっぱに生活系、戦闘系、生産系、医療系、頭脳系に分けられる。


 生活系でも洗濯、料理、掃除に特化してる人も居るけど、まあ、それは置いといてあたしは生産系のスキル作った物を倍増するっていうスキルを生かしてお菓子屋の職人をしている。


 幸いあたしの作るお菓子はおいしいって言われるので、お店自体も人気だけど作った物のお陰でお店に行列が並ぶと嬉しいし、本当にこのスキルは役に立っている。


 そんなあたしも少ないけど接客に回る時がある。


 お菓子が焼けるまでの少ない時間とか売り場の人が少ない時だけどね。


 でも、何でこんなことになってるんだろ。


「俺、いや、僕はあなたが作った菓子に惚れてどんな人が作ってるんだろうと毎日この店に通いついにあなたあなたに会えた! こんなに可愛らしい人が作っていただなんて……今後は俺の隣で俺の為だけにお菓子作ってもらえませんか? あなたのことが好きなんです!!」

「……えっと、お客様、すみませんが他のお客様のご迷惑になりますので」

「あ、ハイ。スミマセン」


 最近接客担当の人たちがわーきゃー騒いでいる理由はこの人かと納得が出来る程に整った顔立ちにいかにも冒険者といった佇まいの20代の男性。


 漆黒のような黒髪に一見黒と見間違えそうな紺色の瞳。切れ長の目を縁取る睫毛はムカつく程に長い。


 すっと通った鼻筋は綺麗な一直線を描き芸術家ならば彼の彫刻を彫りたいと集まってきそうだ。


 そんな人が何故かあたしに向かって変なことを言ってくるからい思わずいつものように騒がしいお客さんを相手にするように相手をしてしまったけどあたし間違ってないよね?


 いや、でも、うるさかったし、他のお客さんも何だ何だとあたしの目の前のお客さん? らしき男性を注視しているのであたしの対応は間違ってなかったはずだ。


「おーい! イオそろそろ焼き上がるから戻ってこい!」

「はーい! すみませんお客様、私はこれで失礼します。あ、いつもお買い上げありがとうございます」

「あ……」


 ぺこりと頭を下げてから通いつめているという言葉を思い出してお礼を言った。


 冒険者らしき男性が何か言っていたような気がするけど、そろそろ行かないと店長に叱られる。


 人遣いは荒いけど2倍作れるからっていうことで給料はいいし、色んな種類を作らせてくれるし、もう少ししたら2号店を出すからそこを任せてくれるとまで言ってくれたので店長のことは嫌いではない。


「お店の方騒がしかったけど何かあった?」

「ああ、うん。常連さん? から美味しいって言われたの」

「それぐらいで騒ぎになる?」


 同僚のジェシカが唇を尖らせながら言ってくるがあたしとしてはそれくらいしか思いつかない。


「あ、でも、イケメンだったからじゃない?」

「何それ詳しく」

「詳しくって言われても、毎日来てるらしいから売り子してる子たちの方が詳しいんじゃない? ほら、最近騒いでたでしょ」

「そういえばそうだったような。聞いて来ようかな」

「今は無理でしょ。毎日来てるんだからその内会えるわよ」


 焼けたんだから急いで次入れないと店長に怒られる。ジェシカのお菓子は口の中で甘くとけていき、一時の甘く優しい夢を見させてくれる。


 本人はちょっとした幻覚を見せるだけで幻覚は戦闘系の中でも特殊で敵を撹乱するのにいいらしいがジェシカは戦える程の強さではないのでせっかくなら大好きなお菓子で子どもたちを喜ばせてあげたいと言っているし、実際ジェシカの作ったお菓子目当ての人が多い。


 ジェシカ自身も緩やかな巻き髪に青い瞳の金髪美人で出るところは出て引っ込むところは引っ込んでるナイスバディーだから男の人にも沢山言い寄られてるけど、ジェシカなりの拘りがあるのか、一定以上の人じゃないと殆どスルーしてる。


 それに単純に量を増やすだけのあたしと違って付加価値のあるジェシカの方が誰だっていいに決まってる。


 さっきの人がおいしいって言ってくれたのは嬉しいけど、店にはあたしたち以外にも作り手は何人も居るし、彼がどれを食べたのかあたしには分からないので素直に嬉しくはない。


 あのイケメンだってたまたま作ってる人が売り場に居たから言ったんだろうし。


 その内あたしの顔なんて忘れるだろうし、明日来た時にジェシカが店に出たらジェシカにも同じこと言ってそうだ。


 そう思うとなんだか面白くてくすりと笑ってしまった。


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