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帝都のオデット乗り  作者: 石動なつめ


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33/34

♯33 優先順序


 ヒナゲシ達を下ろした後、スミレは直ぐに戦闘用機械人形(オデット)を操縦し、闘犬型(ドッグタイプ)の対処に向かう。

 両腕を爪剣(ブレード・クロー)へ変換しながら通りを駆けると闘犬型(ドッグタイプ)は直ぐにこちらに気が付いた。

 二機の()がスミレの戦闘用機械人形(オデット)に向けられる。

 危険性を察知したのか、撃破対象として優先的にターゲットされたようだ。


(この戦闘用機械人形(オデット)に、味方認識はしていないのか)


 闘犬型(ドッグタイプ)は無人機だ。

 バショウのように操作しない時は、自動操縦でプログラム通りに動く機体だ。

 だからこそ、間違えて味方を攻撃しないように、ターゲットから外れるようにしてあるのが普通である。

 けれど、目の前の闘犬型(ドッグタイプ)の様子を見る限り、それはないようだ。

 バショウが外したのか、それともルコウの思惑か。

 ただ一つはっきりしているのは、撃破すれば良い、という事だ。


「まずは一機」


 初めて乗った機体。時間はかけられないが、スミレの愛機であるワダツミと勝手が違う。

 二機をまとめてなんて欲張らず、確実に一機ずつ。

 スミレはまず、右側の闘犬側(ドッグタイプ)に狙いを定めた。

 注意するのは背中のミサイルランチャーだ。撃たれる位置を調整しないと、被害が拡大する。


 砲撃の兆候を捉えながら、スミレは爪剣(ブレード・クロー)の先で地面擦りつつ、一気に距離を詰める。

 そして闘犬型(ドッグタイプ)の懐――腹の下に爪剣(ブレード・クロー)を滑り込ませ、上空に跳ね上げた。

 右の前足と肩の部分を斬り飛ばし、闘犬型(ドッグタイプ)が頭部側から宙を舞う。同時に背中のミサイルが発射された。

 スミレはもう一方の手で闘犬型(ドッグタイプ)の頭を貫いて破壊する。


 その間、ミサイルは空高くへと昇って行く。

 あれが落下する前にもう一機を、と向きを変えかけた時、上空のミサイルが爆発した。

 直ぐに確認すれば、銀灰色の戦闘用機械人形(オデット)が、上空をスピードを上げて通過したところだった。

 跳ね上げた闘犬型(ドッグタイプ)の姿もない。

 恐らくすれ違いざまに、手に持った大槌(ハンマー)闘犬型(ドッグタイプ)をミサイルにぶつけ、双方を破壊したのだろう。


 良い腕だーーーーが。


「ワダツミ……!」


 そう、あれはスミレの愛機であるワダツミだ。


『ママ! サクラです!』


 確認すると同時に、ワダツミから通信が届き、音声と共にサクラが表示された。

 普段と違うのは桜色の瞳が花水晶の色に変わり、輝いている事だろうか。


「サクラさん、乗れましたか!」

『はい! アジサイさんもコデマリさんもスギノさんもすごいです!』


 サクラはにこにこ笑って特務課の仲間を褒める。

 事前にミズキから聞かされていたが、しっかりと完成させていた事に、スミレも感心する。

 スミレも笑みを返しながら、もう一機の闘犬型(ドッグタイプ)へ向き直る。

 突進してくる敵機を爪剣(ブレード・クロー)で防ぎながら、その頭部を刃で突き立てる。相手の勢いで、刃は深く、深く刺さり。

 スミレはそのまま腕を動かし、頭部を引きちぎる。そしてもう一度、引きちぎった場所からその身体へ、もう片方の爪剣(ブレード・クロー)で貫いた。

 花水晶ごとだ。

 抵抗していた闘犬型(ドッグタイプ)だったが、動力を失うと直ぐに動きを止めた。


「…………よし」


 ひとまずこちらへ向かってきた闘犬型(ドッグタイプ)は撃破出来た。

 周辺の様子を確認しつつ、スミレはサクラへ呼び掛ける。


「助かりました。ありがとうございます、サクラさん」

『えへへ……。ママの役に立てたなら良かったです』


 スミレがお礼を言うと、サクラははにかむ。

 ふふ、とスミレも微笑んだ。


「ミズキさん達はどの方角へ向かいましたか?」

『ミズキさんは南区、防衛課は東と北です。たぶんそろそろ……』

『はーい! そろそろオッケーだよー!』


 スミレと話をしていると、ミズキの通信が割り込んできた。

 彼は朗らかな笑顔で手を振っている。


『南区の闘犬型(ドッグタイプ)闘犬型(ドッグタイプ)は撃破完了。東区、北区もそろそろだと思うよ』

「それは良かった。……んですが、どうして南区に?」

『ま、優先順位的にね、避難が後回しにされる可能性があるからさ。他を防衛課に任せて、俺だけこっちに来たんだよ』


 ミズキはそう言ってウィンクをする。

 ああ、それは確かに、とスミレは思った。

 十年前も黛リンドウの情報が南区へ届くのには時間がかかった。

 当時はその事が問題視されて、改善されてきてはいるものの、人の意識の根底にはまだ南区はそういう扱いだ。


「ありがとうございます、ミズキさん」

『いえいえ。……おばあちゃんとの約束でもあったからさ』

「ユリさんですか?」

『うん』


 ユリーースミレがお世話になった元アカツキの職員だ。

 あの時の事件を、一番気にしてくれていたのはユリだったと、アカツキに入ってからスミレは知った。

 それをミズキに繋いでくれていたと知って、スミレは有難くて、そして嬉しくなった。

 思い出すのが辛い事件ではあるが、それでも南区はスミレの生まれた場所だから。


『さて、撃墜はしたけど、終わりじゃないよ、スミレさん。そしてサクラさん。今出ているのがすべてでない可能性がある』

「はい。くまなく調査ですね」

『サクラもがんばります!」

『オーケー! それじゃがんば……る前にスミレさん、マスカレードのマークにバッテンか何か、適当な感じでつけちゃってくれる? 目立つし』

「あ、確かにそうですね。了解です」


 ミズキに言われて、スミレは自分の搭乗している機体をモニターで確認する。

 確かにマスカレードのマークを引っ提げてあちこち動けば、余計な混乱を起こすだろう。

 右腕側の爪剣(ブレード・クロー)を持ち上げて、そこに印をつけかけて、


「…………あ、そうだ」


 少し考えて、桜の花を模して、傷をつけた。

 サクラがパアッと顔を輝かせ、ミズキは『くっ、次はミズキの花も候補に……!』なんて言っていた。

 いや、綺麗だけどそれはそれで難しいな、なんて思いながら。

 スミレは上空に飛び上がった。


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