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帝都のオデット乗り  作者: 石動なつめ


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♯32 マスカレードにもルールがある


 反射的に音の方へ戦闘用機械人形(オデット)を向ける。

 煙の向こうに闘犬型(ドッグタイプ)二機の姿が確認できた。

 壊れた建物の様子から察するに、進行方向上の障害物を排除するために砲撃したようだ。


 もともと身軽な機体だ。避けて通れば良いはずだが、そういう設定がされていないのだろう。

 厄介な、とは思って索敵レーダーを確認する。

 幸いな事に、向かってくる闘犬型(ドッグタイプ)は、同一方向からのようだ。


「周辺住人の避難は、まだ完全には終っていませんね」


 周辺の状況をモニターに映しながらスミレは呟く。

 ミズキの言葉から考えると、アカツキの戦闘用機械人形(オデット)も総出で対処に出ているはずだ。

 こちらへも来てくれるだろう―ーーーが。


 それよりも目の前の闘犬型(ドッグタイプ)に、周辺を攻撃される方が早そうだ。

 ヒナゲシはともかくとして、とにかくヤナギとルコウを安全な場所へ下ろさないと。

 そう考えていると、


「スミレ先輩、あの、ボク、下ろしてください。避難誘導に出ます」


 ヒナゲシがそう言った。


「ですがヒナゲシさん、体は大丈夫ですか?」 

「大丈夫です! たぶんお分かりかと思いますが、ボク、しぶといんですよっ!」


 胸を叩いて、少々自虐気味に言うヒナゲシ。

 スミレは目を瞬いた後、小さく笑って頷く。


「分かりました。闘犬型(ドッグタイプ)は引き付けます。お願いします、ヒナゲシさん」

「はい!」


 変気に応えてくれたヒナゲシに、スミレは頷き返すと、今話した内容をヤナギ達に伝える。

 すると、


「何だ何だ、やる気があるじゃねぇか。俺もこいつどこかにぶち込んで、直ぐに加わるわ」


 なんてヤナギが明るい声でそう言った。

 こいつ、というのはルコウだ。彼女はアハハ、と笑うと、


「ま、出来るものならやってみるといーよ。でも、時間に気を付けてね? それにも私が得意なもの仕掛けてあるからねぇ」


 なんて事を言い出した。


「爆弾を仕掛けているんですか?」

「うふふ」


 ルコウは肯定はしなかったが、楽しそうに口の端を上げた。

 嘘か本当かは分からないが、厄介な話である。

 スミレはヒナゲシ達を地面に下ろしながら、頭の中で状況を整理する。


 モニターに表示された映像だと、八機の闘犬型(ドッグタイプ)が放出されているはずだ。

 東西南北、それぞれに二機ずつ。もっといるかもしれないが、明確に分かっているのは八機。

 よくもまぁ、気づかずにこれだけの数を帝都内に隠せたものである。

 協力者――強制的に恩を売って脅した相手――の数もそこそこいそうだ。


『目で見えている敵よりも、味方の中にいる敵の方が、ずっと厄介なのよ』


 かつてミズキの祖母から聞いた言葉が頭の中で再び蘇る。

 本当に、と独り言ちながら、戦闘用機械人形(オデット)を立ち上がらせようとした時、


「下手に触れると、あっという間に爆発しちゃうからねぇー。場所に気を付けた方がいいよぉー」


 ルコウがそんな事を言った。

 なら一気に花水晶を貫くだけだ。そうスミレが判断した時、


『おやおや、爆発とは! 物騒なお話ですねっ!』


 モニターからやたらと明るい第三者の声が聞こえて来た。

 聞き覚えのある男のものーーアカツキと敵対するマスカレードの戦闘用機械人形(オデット)乗り、若竹バショウだ。


「バショウさん?」

『どうもどうも! この間ぶりですねっスミレさん! うちに来ませんか!』

「挨拶みたいに勧誘するのやめてください」

『挨拶ですからっ!』


 軽快に応えるバショウにスミレは半眼になる。


「どちらにいらっしゃいますか? 帝都に侵入しているなら、徹底的に叩かせて貰いますが」

『物騒! フフ、ご安心を。今回は外ですよ、残念ながらね』

「外……?」


 バショウの答えに、ルコウが怪訝そうな顔になる。

 ええ、とバショウは頷くと、目を僅かに補足する。


『帝都内で騒ぎを起こし、その隙に僕達が攻め入ってアカツキを潰すーーってのが、ざっくりとした今回の計画だったんですけど』

「どちらが物騒ですかね、それは」

『フフ。ですが、ご安心を。その計画、ポシャりましたから』

「は? どう……どういう事?」


 バショウが両手を軽く開いて告げると、ルコウが信じられないと言わんばかりに目を見開く。

 その声に、バショウは冷えた声で、


『どうって? そりゃそうでしょう。アカツキだけを狙っての行動なら良かったのに、他に被害を出すなんて。――――どういうつもりだ』


 と言った。その声にルコウの表情が固まる。モニターの映像は彼女には見えていないが、まるで射貫かれたように体を強張らせていた。

 バショウもこういう声が出来るのかと、スミレはそう思った。


『僕達が狙うのはあくまでアカツキの人間だけ。そういうルールですよ。なのにあなた、無差別にもほどがある』

「……ぬるいのよ。本当にぬるいのよ、マスカレードのやり方も! ちっとも成果を出せないじゃない! 戦い始めて何年!? 無駄に時間を過ごしているだけだわ! その間に、何人死んだと思っているの!」

『あなたが殺した、の間違いでしょう? ま、若気の至り……だったみたいですけどねぇ』

「…………ッ」

『それと、僕は無駄とは思っていませんよ。だって僕達がドンパチやっている間は、他所は面倒ごとを避けて近寄って来ないから、邪魔されたりしませんからねぇ。純粋にアカツキとだけ戦えるんです』


 合理的でしょ、とバショウは言う。

 以前に引き延ばしているのでは、とミズキと話したが、それに近い回答だった。

 ただ、それは好意的な意味でもない。いつかアカツキを潰すのはマスカレードだ、という部分は変わらないようだ。


『で、まぁ、爆発でしたっけ? あなたお得意の。アレ、邪魔させて貰いましたよ』

「――――」

『ついでに数機分はシステムに侵入して、性能落としてあるんで。やっちゃってもらっていいですよ、スミレさん』

「大盤振る舞いですね。どんな見返りを期待されているのやら」

『フフ。ま、無能なアカツキが被害を拡大した―ーって新聞記事が出るだけで収穫ですよ。人の口ってのは、なかなか閉ざせませんからねぇ』


 ですので、とバショウは笑う。


『これからの行動でどう記事の内容を修正できるか。さてさて、楽しみにしていますよ。では!』


 それだけ言うと通信は切れた。


「先輩、言うだけ言って切れましたね……」

「本当ですよ。……でも、協力してくれたなら有難い」

「し、信じるんですか?」

「そうですね。これでも何度か戦っていますから。例えそうじゃなくても、潰すだけです。私達、アカツキの人間ですから」


 スミレはそう言うと、息を吐く。

 それからヒナゲシ達に向けて、


「ヒナゲシさん達を下ろしたら、直ぐにアレ(、、)を引き離します。避難誘導を、よろしくお願いします」


 と言った。

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