表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝都のオデット乗り  作者: 石動なつめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/34

♯30 闘犬型の襲撃


 反射的にスミレはコックピットから飛び出した。

 その直後、背後で小規模の爆発が起きる。

 吹き飛ばされる前にスミレは、ハッチの扉を手で掴み、何とか落下を免れた。

 ギイギイと爆発の衝撃で揺れながら、ドッと鳴る心臓を落ち着かせていると、下の方から「あら、残念」とルコウの声が聞こえて来る。

 どうやら罠だったようだ。ヒナゲシの声がなければ危なかった。


「何だ、ヒナゲシちゃん、起きちゃったのか~。もうちょっとしっかり昏倒させとけば良かったなぁ」

「てめぇ、何つーモンを……!」


 ルコウとヤナギのやり取りを聞きながら、スミレは反動をつけて、再びコックピットへ上がる。

 中は火薬の臭いがまだ残る。壁にはひびが入り、部分的に黒く焦げていた。


 だが、思ったよりも被害が少ない(、、、)


 確かに生身の人間が避難せずに爆発に巻き込まれれば、大怪我をしていた事だろう。

 しかし、コックピット内はどうかと言えば、そこまで酷くはない。

 火薬の量で爆発の範囲を最小限に調整していた――だけでなく、コックピット内自体を補強していた、というようにも思える。

 事実、あの爆発の中で、モニター部分はごくわずかなひび割れ程度で済んでいる。


(逃げる気っぽいな、これは)


 そう判断すると、スミレはコックピットから顔を出し、


「ヤナギさん、しっかり拘束しといてください。隙を見て逃げます、その人」


 と伝える。ヤナギは「まかせとけ、ガチガチに拘束しとくわ」と応えてくれた。

 その時、初めてルコウは嫌そうな顔をする。


「ええー? 女の子にそんな真似するぅー?」

「子がつく歳じゃねーだろが」

「あらやだ、歳なんて言って。分かってないなぁーだからモテないのよ、ヤナギくんは」

「うるせぇよ、余計なお世話だっ」


 ヤナギは顔を真っ赤にしながらルコウの手と足に手錠をかける。

 あれなら自力で逃げられはしないだろう。

 よし、と思っていると、不意にコックピットのモニターから、ピピ、と機械音が聞こえた。

 振り返ると、先ほどまで何も移していなかった画面に、文字と数字がカチカチと自動で表示され始める。


『起動より十分経過、闘犬型(ドッグタイプ)放出開始』


 その瞬間、ぶわり、と画面に帝都各地の映像が表示され始める。

 東西南北、それぞれの区の建物。そこから通常より小型の闘犬型(ドッグタイプ)が出現し始めた。


「これは……」


 映っているのは現在の帝都の映像のようだ。

 スミレは耳につけた通信機に手を伸ばし、ミズキへ呼び掛ける。

 通話状態はずっとオンだった。

 現状の様子が聞こえるように、スミレもヤナギも、そのままここへ突入している。


「ミズキさん、緊急事態です! 帝都各地に闘犬型(ドッグタイプ)出現!」


 スミレが短く状況を告げる。

 すると通信機から、


『オーケー、準備万端だ!』


 と、ミズキの軽快な声が返って来た。




◇ ◇ ◇




 スミレから連絡が来た時、ミズキは自身の戦闘用機械人形(オデット)『シノノメ』に搭乗していた。

 理由は、スミレと防衛課の職員達が太陽珈琲館へ出発した直後、


『監視対象達に不審な動きがあり』


 との連絡が入ったからである。

 一人二人ならまだしも、全員だ。これは何かあるぞと考えるのが当然だ。バショウの言葉からも近々何かあるとは踏んでいた。

 なので現在アカツキに残っている防衛課とも連携し、いつでも出撃出来るように準備していたのだ。


 そこに、これである。

 闘犬型(ドッグタイプ)が出現したのは、それぞれの監視対象が向かった場所からだ。

 東西南北、それぞれの廃屋や廃ビルから飛び出した闘犬型(ドッグタイプ)達は、アカツキと、一部が西区へ向かっているらしい。スミレの連絡とほぼ同時に、監視役の職員からも一斉に連絡が入った。

 通常よりやや小型の闘犬型(ドッグタイプ)達は、進行方向上の建物を破壊して前へと進んでいるようだ。


「……西区は、たぶん太陽珈琲館だな」


 ミズキはそう呟くと、


「可及的速やかに闘犬型(ドッグタイプ)を破壊する。準備は良いかい?」


 と、隣の戦闘用機械人形(オデット)――本来スミレが登場している『ワダツミ』へ呼び掛ける。


『はい、大丈夫です。サクラ、いけます!』


 そこからは自動人形のサクラの声が返って来た。

 その声に迷いはなく、戸惑いもない。

 堂々としていて気持ちが良いね、とミズキは思う。


 さて、何故サクラが戦闘用機械人形(オデット)に搭乗しているか。

 その理由は単純にミズキが上に申請したからだ。

 特務課の戦闘用機械人形(オデット)操縦士は二人。その一人が欠けた時、一機で出撃しなければならなくなる。

 一機で対処出来る状況もあるが、帝都の安全面を考えれば、なるべく二機で出られる事が望ましい。

 防衛課の戦闘用機械人形(オデット)があったとしてもだ。彼らの技術も目覚ましいものだ。だが、それでも動ける数は多い方が良い。

 特に特務課は、その存在意義自体が、あらゆる方面の防衛に向けられている。


 だからこその自動人形(サクラ)の出番である。


 自動人形は戦闘用機械人形(オデット)に乗る事が出来ない。その理由はお互いの花水晶が干渉し合い、不具合が生じるからだ。

 けれどサクラは戦闘用機械人形(オデット)に搭乗してここへ来た。お互いの花水晶を同一化して、不具合を抑えたのだ。

 ミズキはそれを上に報告した。そしてアジサイや特務課の技術者達に頼んで、同様の処置をして貰ったのだ。

 これで特務課の戦闘用機械人形(オデット)自動人形(サクラ)は動かせる。


 さて、そんな仕事をしてくれた仲間達はと言うと。

 ミズキが下へ目を向ければ、ハラハラした様子で『ワダツミ』を見上げるアジサイとコデマリ、スギノの姿があった。


「あ、あの、何かおかしいなと思ったら、すぐに止まってくださいね……!」

「サクラちゃーん! 無理しちゃダメですよぉー!」

「ミズキ、ちゃんと気を付けててやれよー!」


 三人はそんな事を言っている。

 本当に好かれたものだ。ミズキは、んふふ、と笑う。


「まかせて! それじゃ、サクラさん、行こうか! スミレさんの方は君に任せるよ!」

『任されました! ママはサクラが守ります! ――――花水晶へ接続を開始します!』


 ブン、と音を立てて、花水晶のような光が、戦闘用機械人形(オデット)の目に灯る。

 そして特務課の二機は、格納庫を飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ