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帝都のオデット乗り  作者: 石動なつめ


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♯2 戦闘用機械人形《オデット》


 山吹スミレは帝都の貧民街で生まれ育った。

 学もなく、金もなく。けれど家族の愛情はあった。穏やかな母と、寡黙な父、朗らかな兄妹達。

 物心ついた頃には、スミレも靴磨きなどで小銭を稼いでは、日々の生活の足しにしていた。

 楽な生活ではなかったが、それでもスミレは幸せだった。


 そんなある日、貧困街でとある事件が起きた。スミレが七歳の頃だ。

 捕まっていた反乱組織(マスカレード)の人間が、治安維持組織アカツキの留置場から逃亡したのである。

 名前を『黛リンドウ』と言う。歳は二十五。歯の中に小型の爆弾を隠し持っていたらしい。

 そいつはそれを使って留置所を爆破し逃亡し、貧民街に逃げ込んだ。

 

 その男に、スミレの家族は殺されたのだ。



◇ ◇ ◇



「ああん、やっぱり戦闘用機械人形(オデット)、もう超格好良い~~~~!」


 アカツキの格納庫の一つ。ミズキ専用のそこに、戦闘用機械人形(オデット)が二機置かれている。

 白銀に塗装された方がミズキの機体『シノノメ』、銀灰色に塗装された方がスミレの機体『ワダツミ』だ。

 遠い国で謳われる騎士を彷彿とさせる見た目は、一体誰の趣味なのか。実に良い趣味である。

 そんな事を考えながら、スミレは両手を組んで、目を輝かせていた。


「スミレさんは本当に戦闘用機械人形(オデット)が好きだねぇ」

「こんなに素晴らしいものが世の中にある現実を直視できない」

「して」

「目が潰れるぅ……」

「スミレさん、戦闘用機械人形(オデット)の事になると人格壊れるよね」


 普段の様子はどこへやら、なんてミズキは呟く。

 スミレは戦闘用機械人形(オデット)の事が大好き過ぎて、目の前にすると少々ネジが飛ぶのだ。

 ただ、それもあくまで仕事前までだ。乗れば頭を切り替えられるくらいには、自分を見失ってはいない。

 まぁ、そんな調子で二人は戦闘用機械人形(オデット)に乗り込んだ。


「スミレさーん! スミレさーん! 整備はばっちりですからねぇー!」


 すると整備士の白妙コデマリが、ぴょんぴょん跳ねながら、手を振って呼び掛けてくれた。

 歳はスミレより一つ下の十六歳。名字から分かる通りミズキの妹だ。歳は若いが腕は良く、性格も朗らかで人懐っこいからか、年配の整備士達から特に可愛がられている。

 ちなみにスミレが先に会ったのはコデマリの方だ。


「コデマリ、俺の方はー?」

「問題無し」


 ミズキが聞くと、先ほどまでの元気な様子から一転して、スン、として淡々とコデマリは返す。

 そんな妹の様子にミズキは軽くショックを受けていた。


「コデマリが冷たい……」

「反抗期じゃないですかね」

「悲しい……」


 ミズキはしょんぼりしながら戦闘用機械人形(オデット)に乗り込んで行った。

 まぁ、反抗期である。コデマリの場合、その対象が彼女の両親ではなく兄なのだ。

 元々べったりなくらいのお兄ちゃん子だったので、その反動なのだろうと他の整備士からスミレは聞いた。

 ちらりとコックピットのモニターから様子を見れば、コデマリがミズキの機体をちらちら気にしている様子が伺える。

 冷たい態度を取った事を気にしているようだ。

 後でちょっとフォローしよう。そう思っていると、


『スミレさん、準備は良い?』


 ミズキから通信が入った。


「はい。いつでもどうぞ、ミズキさん」

『オーケー、それじゃ、出撃する』


 スミレの返答を聞くと、ミズキはニッと笑う。

 すると格納庫の天井がゆっくりと開き始めた。

 綺麗な青空だ。

 その空に向けて、先にミズキの機体シノノメが飛び上がる。

 僅かに遅れてスミレはそれに続いた。


『――――敵機確認』


 ピピ、と機械音が鳴り、モニターに敵機を示すシンボルが映し出される。

 数は一機。それと爆撃用の小型機が複数だ。

 小さい方も逃すと厄介だ。そう思いながら、スミレの繰るワダツミが武器を構える。機体と同じ銀灰色の大槌(ハンマー)だ。


『スミレさん、大きい方は引き付けておくから、小さいのお願いね』

「了解です」


 ミズキからの指示に、スミレは頷く。

 そんな短い会話を交わしながら二機は帝都の空を速度を上げて飛ぶ。

 それから少しして、ちょうど帝都市街地の『外』へ出た所で、マスカレードの機体を目視できるようになった。

 黒い機体に仮面の模様が塗装されている。マスカレードのマークだ。

 それを確認して、スミレは機材を操作する。


「ミズキさん、生体反応はありません」

『おや、無人機か。乗り手が不足しているのかね』

「ミズキさんがだいぶ撃墜しているからでは?」

『お仕事だからねー。でも、それスミレさんが言っちゃう?』

「言っちゃいますよ。比べたら、数が全然違います」


 スミレがそう返すと、ミズキの笑い声が返ってくる。


『ま、いーや。無人機なら、何の遠慮もいらないね。可能なら動力部だけ残して潰しちゃって』

「はーい」

『うん。お願いねぇ』 


 ミズキはそのままシノノメを駆り、真っ直ぐに無人機へ向かっていく。

 それを確認すると、スミレは小型機へ意識を向ける。鳥を模した小型機は、スミレ達の接近を察知すると左右に広がった。

 一度、短く息を吸う。

 よし、と短く呟くと、スミレはワダツミを加速させた。


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