引き続きMMORPG
少し書き崩してみます。
MMORPGがどんなもので、どういう仕組みで世界を実現するかはわかったと思います。各プレイヤーの端末、メインサーバ、通信回路網の3つで構成されて、世界が各プレイヤーの端末で発生しています。これを現実と私たちが信じている世界と照応させてみると、各端末が各個人、メインサーバが物自体、通信回路網が精神共鳴回路ということになるのですが、後者二つは見えるものではないので逆にMMORPG世界観から類推してもらうのがいいです。
一言言っておくと、現実が実際にそのようになっているのだと主張しているわけではなく、そうなってると考えるといろんなことがわかりやすくなると言っているだけです。哲学の分かりにくさの理由もわかるし、物理学などの自然科学も深層心理学などの分野も、この世界観を採用すると同系列で語ることができるので優秀なのです。世界観バージョンの物自体とでもいうべき感じです。そうなってると要請するとあらゆる説明がうまくいくのです。
それでもなじみにくい世界観かもしれないので、現実とゲームを対応させる形でいろいろと描写してみましょう。私たちがゲームをするときには視覚と聴覚を出力機器から感覚器が得ることによって、そのゲームの世界の存在を実感することになりますが、現実では身体を取り巻く世界~内部感覚を含む~として出力されている視覚やら聴覚やら触覚やらという様々な感覚を精神が実感することによって、世界は世界として出現します。
そう考えると私たちの精神が認識しているのは、世界のありのままというものではなく、世界としてのデータとして送られてくる信号です。その信号の集積を世界の全体だと精神は錯覚することによって、世界の実在を信じることになります。
各端末がメインサーバに要求するのは命令となりますが、それに対してメインサーバから返されるのはデータです。そのデータを構成して物理の形に復元することで、私たちは世界を生き生きとしたものとして実感します。各端末がメインサーバに命令するのを意志と呼ぶことができるかもしれません。
ここでゲームの楽しみ方としては、世界の中で自分が行動し、そのことによって世界が変化するのを楽しむという楽しみ方と、ただただ世界の中にいることを感覚して、その味わいを楽しむことの二種類の方向性があり、前者が意志的な生き方とすれば、後者を審美的な生き方ということができるかもしれません。多くの人は前者だけしか生き方がないかのように錯覚していますが、後者の生き方はメインサーバである物自体と常に通信している状態で生きているので、信じさせられている世界以上のものを見聞きしていることになります。
各端末とメインサーバとの間の通信のことを共鳴といいましたが、そこで媒介となっているのは電気信号よりももっと不可視的なものです。電気信号とは電磁波であるので光の一種でしかないですが、共鳴の時の信号は光よりももっと無定形で、そして速度を持っていません。速度を持たない理由は、メインサーバと各端末の間には空間がありますが、現実の各個人と物自体の世界の間には空間がないので、そこを移動するための時間という概念がないからです。現実の世界の物自体にも空間と時間はなく、一瞬にして永遠がドーンと広がっていることになります。これは、想像力をグングン働かせていくと理解できるようになります。
現実では視覚も聴覚もありありとした実感として現れますが~クオリアと呼ばれることがあります~、どういう仕組みでそういう実感が形成されるかは、物理の相だけでは絶対に理解することは不可能です。共鳴という言い方をするならば、世界という一瞬にして永遠であるメインサーバの似姿としての各端末である個人が、ありありとした世界そのものを実感する理由は説明できそうです。ありありとした世界のフラクタル的な入れ子構造として個人があることになるからです。言ってみれば、世界という神と共鳴する形で、体という私たちがいるという感じです。これも想像力をグングン働かせていけば、理解できるようになります。クオリアが謎なのではなく、世界そのものが実感そのものであるから謎なのです。
共鳴という現象を認めてしまえば、共鳴力の強さによっては感じ取れない感覚と感じ取れる感覚があることになりますし、いわゆる五感以外にも、他人の感じていることに共鳴して共感したりすることがある説明にもなります。ミラーニューロンなどはむしろそういう機能的なものがあることの説明として要求された構造といえます。
このように考えてくると物理学の世界がいかに限定的で、精神的な働きである意志や認識について語ることに無力であることが見えてきます。また、メインサーバの存在を仮定すれば量子エンタングルメント~EPRパラドックスとして有名です~などはホログラフィーとして簡単に解決できますが、光速を超える通信として不思議の一つになってしまう愚を犯してしまいます。
精神世界を含めて、大きく世界を包括的に理解するためには、MMORPGの世界観の方が有力です。あえて科学の狭い枠にとどまることで、精神文化を損なうような世界観を持つことは、人類にとっては損失であるとしか言えません。
想像力が追い付かないと、全く何を言ってるかわからないかもしれませんが、生まれ変わった私ならば、(魂の)経験上、謎が謎な理由くらいはわかるはずです。