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私が私に何としても伝えたいこと  作者: 深谷玄冬(松木朱夏)
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MMORPG

まだ世界が二つある場合の考察です。

ひとつの世界観を正しいと思ってしまうのは、大きな損失なので注意しなくてはなりませんが、物質的な世界観よりもはるかに豊かな世界観を一つ上げるとしたら、MMORPGの世界観となります。ある意味、ゲームを作るというのは世界を創造するのに似ているので、現実的によく機能しているゲームはこの現実世界を上手に模している部分があるので当然ともいえます。


このMMORPGの世界観をフラクタル的に現実に当てはめてみると、ライプニッツのモナド論やカントの認識論が理解しやすくなります。そして、科学的な素朴な自然観とは違って、現代社会の複雑さを把握し、計算するために必要な物の見方やツールを開発するには一度は理解した方がいい世界観だと言えます。


まだ書を進めていないこの段階でこの世界観を検討してみるのは、精神と物質の関係が単純ではないことを知るのに非常に適しているからです。物質的世界観の融通の利かなさと比較して、MMORPGの世界観は非常に融通が利き、だからこそ魔法やファンタジーのあまり見られない私たちの現実とは違った世界の現実を構成するのに向いているのです。


生まれ変わった私がゲームをたしなむのかどうかわかりませんので、MMORPGについて説明しなくてはならないでしょう。Massively Multiplayer Online Role Playing Game「大規模多人数参加型オンラインRPG」とは、一つの共有する世界をネットワークでつないで、そこに多人数が参加して相互にコミュニケーションをとりながら、各々自分のキャラを育てたり、その世界に散在する物語を楽しむゲームであると言えます。もっと簡単に言えば、ある一つの世界観の中で大勢が一緒に同時に楽しむ役割没入型ゲームであると言えます。


まるで現実世界と同じです。ですから、問題はそういう世界を成立させている仕組みです。その仕組みは現実世界とアナロジーになってる可能性があります。その仕組み(構造)の構成は、各プレイヤーの端末、メインサーバ、通信回路網の3つが必須となります。


各端末がメインサーバに通信回路網を通して、出力装置に状況を映し出すよう要請します。メインサーバはプログラムを走らせてマップデータなどを読み込み、端末のキャラの動きを計算して、そのキャラの視点に適したデータを通信回路で返します。そうすると端末の音声画像モニターにそのキャラクターの状態が周りの世界像とともに得られるというのが、基本の機能です。


もっと簡単に言えば、端末がサーバにオンラインで「プライヤーキャラクターから見た世界像をよこせ」と要求して、サーバがそれに応えるというやり取りをくりかえすことで、プレイヤーキャラクターはゲームの世界を世界だと認識するのです。そんなプレイヤーキャラクターが端末の数だけ存在するわけです。各プレイヤーキャラクターは世界を映し出す起点であると同時に、世界の一部としてのデータでもあります。わからなければ、もっとMMORPGについて調べてみてください。


こうやってMMORPGの世界は構成されるのですが、私たちの知る現実世界も実はそうなっているのだと考えると、カントの純粋理性批判がわかるようになります。カントの純粋理性批判の妥当性を認めるなら、世界はそれぞれの端末ごとにあり、端末の要請に従って、端末の特質に合わせて描写され、世界そのものは実在するとしても、データという形でメインサーバに保存されて共有されているのみです。


カントは人間の悟性カテゴリー、つまり物事の関係性を判断する能力が世界の見方を決めており、そうやって実際に見た現実があるからこそ、その背後に物自体(感覚が物質を描写するための元となる塊)が存在すると言いました。つまり、認識があるから対象があるのであって、対象があるから認識できるのではない、と現実についてカントは論理的に導いたのです。


これはMMORPGの世界構造を考えたら、なんて当たり前のことをということになるのではないでしょうか。実際の現実がそうなっているというのは、宇宙の始まりや終わり、宇宙の果てや外側のことを考慮に入れた現実を考えるのであれば、現実もまるでMMORPGそのものです。


想像の羽を広げて、現実もMMORPGだと考えて、キャラを操る存在は私の意志だが、それは現実世界の中には存在しえないことや、世界像というのは私の認識に過ぎないというような発見もあります。すぐ身近なところにある物をつかむという動作も、いったん通信回路でサーバに問い合わせて力の働きや動きの特性を計算してから、再び通信回路で値を返されるというやり方になりますから、近接の力の概念も崩れます。認識は手触りとしてではなく、共鳴として起こっているのだというシェリングの主張にも近くなります。


カントの名前を出すべきか迷いましたが、カントは勉強してください。学問が成立する理由から、現実に人間が暮らせる理由まで、一応の納得が得られる形で精緻に分析しているので。ドイツ観念論はカントの世界観と人間の歴史の組み合わせで発展して、世界のひとつの切り取り方を描き切りましたが、そうだと気が付いてない人が多すぎる気がします。MMORPGが現にゲームとして成立するので、現実もゲームのようなもので映画『マトリクス』的な想像力が試されるところです。


難しい話ばかり書きましたが、MMORPGの世界は形而上学を考えるにあたって、非常に有効な視点を提供してくれます。ゲームをするのはその世界を体験したいからです。経験のために世界があります。ゲームとして世界を提供するのは、そこで遊んでほしいからですから。これも、現実に照らし合わせて考えれば、現実世界のおおもとのデータが存在するとしたら、現実ゲーム開発者という創造主がいなくてはならなくなってしまいます。私はその創造主こそ、私であると思っています。私とはあなたのことです。


さすがに訳が分からなくなってきたかもしれません。大事なことは、各端末の要請で世界は初めて認識される形になるということと、あらかじめある世界はプログラムやデータといった非物質的なものであることです。この現実とMMORPGの類似は、考えやすいモデルとして重宝するので、今後もこの書で扱っていくことになると思います。

経験をしたいという機能が、世界という構造を要求した。世界のひな型を作ったのは、世界の最初からいた私であった。このときには、機能が世界で構造は信仰としての世界永遠ホログラム出現であった。もうそこらの神話よりは神話になると思う。この現実世界、本気で神話なのです。

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