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私が私に何としても伝えたいこと  作者: 深谷玄冬(松木朱夏)
15/21

世界のどこを探したって、悪意を持とうと願う人はいないのです

タイトル自体はKEYの名作ゲーム「リトルバスターズ」の中で能美クドリャフカが語るセリフです。

【悪】

標語2:「裁かれないのであればそれは悪ではないのです」

標語3:「世界のどこを探したって、悪意を持とうと願う人はいないのです」


 一つには悪を為しながらも、裁かれているのに気がつかずに過ごすことはあります。悪、つまり不正に慣れて心が歪めば、敵を作らない振舞いは難しくなり、今後必要となる復讐への対抗策、防衛策はうなぎのぼりになりますし、そもそも計算ができない要素に対処しつくすことはできません。つまり対抗策や防衛策を用意しないなんてあり得ませんし、また、それを周到に用意できたとしても、いつまで裁かれないままいられるかという不安を感じる限り、悪であり続けることは、その不安が完全にない時よりは居心地の悪いものとなるでしょう。それは幸福を開放的に味わうことを根源的に妨害します。また悪は後に説明する信頼という無償の関係を築きにくいです。いつか崩壊することを約束されているようなものです。


 見える範囲だけで思考する限り、悪の勝ち逃げは可能かもしれませんが、悪が不正に属するのであれば、正しいことはいずれ正しくなります。つまり、一時期、見える範囲でうまく支配できても、見えない範囲から正しさは襲ってくるのです。それが物理的現実を見る限りはいつになるかというのが確定しないだけです。そして概念世界では悪や不正は否定、死、無と同じ系列に属します。さらに正しいことは正しいから正しいので、不正の存在は本来は幻想(無)なので構造(悪を為すものの生命など)を保ち続けることはできません。


 そもそも存在してはいけないような悪ならば、なぜ存在しえたのでしょう。また、純粋な悪というのがあるのであれば、なぜ誰かがそれを支持し、用いるのでしょう。悪とは解釈です。ある立場から見たときの不都合を悪と呼ぶだけでしょう。傷つける、もっと言えば殺すという自明に見える悪すら、現実を生きるにあたって、これを厳密に犯さない存在などあるのでしょうか。程度問題というのであれば、どこに境界を設けるのでしょうか。


 悪についても、正義と同様です。裁かれないのであれば悪ではないのです。それはいずれ未来に確定するのです。現在に悪を見つけるのは不毛だと言えましょう。そういう意味であれば、悪を糾弾する行為そのものも悪になり得るのです。むしろ解釈や立場によっては完全な悪だとも言えます。


 なお、ソクラテスは「知って悪をなす者はいない」と看破しましたが、恐らくはこういう悪の因果応報までを知っていることが真の知恵であり、それを知ってもなお悪を犯すような存在はいないだろうと言ったのかもしれません。単純に善悪を快不快と捉えることでこそ、「知っていて(快と不快を計算できるから=快楽主義の倫理)(快楽に負けて)不快をなす者はいない」となって当たり前になりえます。


「知らないから悪をなすのだ」と「悪をなしたならばそれは知らなかったのだ」は論理的には同じですが、ソクラテスの言明はそこに当たります。悪をどう定義したらそうなるかは考えてみると面白いです。私は善悪はのちに述べるように行為ではなく、意志の段階の問題だと思っていますので、そこで発生する因果応報の法則が倫理だとするなら、その因縁は必ず生じる(「裁かれないのは悪ではない」の形を表現される)ので、それについての知識を持っているかどうかがカギだと思います。

悪に関しては、その役割そのものも論じなくてはいけないと思うのです。悪があるからこそ、気づけることもあるわけなのですし、悪を行うというのは覚悟もいることです。才能と言ってもいいことでしょう。でも、悪を忌避する心だって同じように才能であり意志であるところに、問題の難しさはあります。だから、その辺は「悪ならば裁かれるとは限らない」という命題は偽だが、「裁かれるならば悪である」という命題は真である、と置き換えています。

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