ハンターになろう
新章に突入です。
ハンターズギルド・・・それは酔っ払いが難癖つけてくることも、新人に対し高圧的にする人もいない静かな所だった。それに日本の役所の様な、受付でそれぞれの用事に合わせて窓口を案内される形式で初心者でも分かり易かった。
辺りを見渡していると静かな理由がわかった。酒場が無いんだ。そして、酒場が無いから酔っ払いが居ないんだ。
俺は受付で新規登録で来たことを伝えると、一番左端の窓口に案内された。
「こんにちは、新規登録ですね。こちらに記入をお願いします。字を書けない場合は代筆をしますよ。」
若い女性が受付だった。彼女は俺に紙を差し出し、筆ペンをインクボトルと一緒に置いた。そこにはいままで見たことも無い文字で書かれており、素直に俺は代筆をお願いした。
「まずは、名前をお願いします。ここで登録された名前は以後ずっと使われますので変な名前を登録すると後々、後悔しますよ。」
「マモルです。」
俺は貴族しか苗字が無い時の為に、名前だけを伝えた。
「ワァールさまですね。古代の英雄と同じ名前ですね。」
しまった!!マモルってこっちじゃ言い難いんだった。
またしてもワァールになってしまう。あれ、古代の英雄ってなんだ?昔、ワァールって名前の英雄がいたのか?
英雄かぁ、それならワァールでもいいかな・・・
「次に主にどんな武器を使いますか?」
さて、どう答えるかな・・・祖父に教えてもらったのは短剣術と日本刀の抜刀術に柔術にいろんな格闘技を混ぜた祖父オリジナルの格闘術だ。とりあえず刀と短剣が使えると言っておけばいいか。
「武器は短剣と刀ですね。」
「刀とは珍しいですね・・・ここら辺では切れ味を維持する為の研ぎ師がいないので、使う人はこの周辺では居ないですし。」
おぉ、刀はあるのか。研ぎ場と砥石さえあれば俺も研げるし、いいな。心の片隅に刀を探すと付け加えられた。
「魔法は?得意な属性は何ですか?」
空間魔法と言いかけて俺は騒ぎになるかもしれないと思い、まだわかりませんとだけ答えた。
「では登録しますね。ここに血を垂らしてください。それでこのカードはあなた専用のカードになります。ハンターズギルド全支店でお金が引き下ろしが可能になりますのでこのカードは無くさない様にしてください。無くされた場合は再発行料金が金貨5枚になりますのでご注意ください。」
俺は受付嬢からナイフを受け取り、親指の表面をそっとなでる様に切った。赤黒い血が滲んでくる。俺は玉のようになった血をカードに付けて受付に手渡した。俺は指に付いた血をタオルで拭き取り、カードに何か付けているのを眺めていると
「口座をお作りしますので少々お持ちください。」
受付嬢が立ち上がり奥へ向かって行った。そこで如何にも仕事が出来ます風の職員にカードを渡し、こちらへと戻ってきた。
「では、ここから当ハンターズギルドのご案内をします。」