おっさんとドラゴンステーキ
「ゴクゴクゴク・・・・・・・ぷはぁ~」
俺はトイレで会ったおっさんに連れられ城の中にあるBarに来ている。酒を飲み始めたおっさんはこちらの事はお構いなしにいろいろ注文して、今やテーブルの上は多種多量の料理が隙間無く埋まっている。地球には無い様な形の肉が並んでいたり、青い色のスープがあったりとホントここが異世界なんだなと思う。
「ハハッ!どうだ美味いだろ!ここのコックはとても料理が上手で有名なんだぜ!」
となりのおっさんが暑苦しい・・・
・・・・・うっ!酒臭っ!
とりあえず泥酔状態のおっさんはほっといて、俺は久しぶりのまともな料理に舌鼓を打った。
あぁ、美味い。
「そういえば、ワァールは他所の国から来たのか?」
また間違っている・・・このおっさんとは酒を飲み始める前に自己紹介をしたんだが、俺の名前をちゃんと言えなかった。そんなに言いづらいかな?
「マモルですって、いい加減覚えてくださいよ・・・それと、自分はどこから来たのかわからないですね。気がついたらあの近くにいましたし・・・」
「あんな所に・・・転移か・・・いや、空間魔法自体・・・」
おっさんが独り言を始めたので、俺は再度料理に手を伸ばす。次はテーブルの真ん中に鎮座している大物・・・巨大な鉄板の上に乗った約1mほどのステーキだ。熱された鉄板でジュージューと香ばしい匂いを出している。この匂いだけで口の中でよだれが一杯になる。さらにナイフで表面を触ったらスゥーと肉にナイフが吸い込まれていく。とても柔らかい。切った断面から肉汁が滝の様に流れ出し、熱された鉄板に当たり湯気となってさらにいい匂いがする。これは期待できそうだ。切った肉をフォークで刺し、口の中に入れ込む。その瞬間、口の中に肉の旨味が濃縮されたスープがあふれる。肉はとろける様な柔らかさで、噛む必要がほとんど無い。もう他に話せることがない旨すぎる!
「おぉ、ドラゴンステーキか!極上だろ!」
いつの間にか復活したおっさんがとんでもない事を言った。
「ド・ド・ド・ドラゴンですか!」
あのファンタジーでお馴染みの空想上の生き物・・・ドラゴンを俺は今食べているのか!
「あぁ、年に数回討伐されてるからな・・・貴族を中心に結構出回っている。ドラゴンはとにかく肉が美味いからな、ハンター達が自分達で討伐することが夢ってのも多いみたいだぜ。」
へぇ、そうなんだ。ドラゴンかぁ・・・いつか戦うときが来るのかな・・・
なんか目がまわる・・・
「おいっ!それ俺の酒じゃないか!お前は何飲んでんだよ!」
なにか言っているようだが頭に入ってこない・・・
俺はここで意識を手放した。
お酒は20歳になってから