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エリカが席に戻ってきたと同じくして、男性陣も席に戻ってきた。

また憂鬱な食事会が再開すると誰もが思っていたが、食事を口にした男性陣がみな吹き出す。


「毒だ!毒が盛られたぞ!」


一斉に騒ぎ出した。


「医者を呼べ!」


その言葉をが出た瞬間、リカルドが声を上げる。


「毒ではありません!我が領地特産の『愛のスパイス』でございます!」


「リカルド…お前が毒を盛ったのか!」


王子が自身の首を抑え、リカルドを睨みつけた。


「いいえ。国王陛下と王妃様ご愛用の品でございますので、命には何ら問題はございません。他の飲み物や食べ物を摂取すれば痛みも次期にとれるでしょう。」


リカルドの言葉を聞いた男性陣は必死で飲み物を飲むが、そこにも『愛のスパイス』は入れられており、皆が一斉に吹き出した。


「そうですね…お隣のご令嬢の方々に分けてもらっては?今日は正式な食事会ではございませんし、少し無作法であっても、いつかはお互いの人生において様々なことを共有し分かち合う身です。きっと愛が深まりますよ。」


リカルドの言葉に、様々な反応があった。

ご令嬢の食べ物を奪う方、分けてもらって当然だと顔をしている方、そして仲良く分け合い微笑む方。

その仲良く分け合う中に私とリカルド様がいた。


「タチアナ、私の分は零してしまったから分けてくれるかい?」


いつのまにか隣に座っていたリカルドが優しい顔でタチアナにたずねる。

その笑顔がいつになくタチアナの胸をドキリとさせた。

『愛が深まりますよ』って…リカルドが…

私と深めたいと思ってくれているの…?

タチアナが取り分けようとするとリカルドがタチアナその手首をとって、直接自分の口へと運んだ。

…これは…噂で聞いた『アーン』なのでは!?

恋人達がするらしいとは聞いていたが、未だかつて見たことのなかった『アーン』をタチアナがやっている。

恥ずかしい…

タチアナは自分の顔に熱が上がっていくのを感じていた。

そしてすっかりさっきまで嫉妬していたエリカのことを忘れてしまっていた。


「この会を主催されました国王陛下のお気持ちはご理解いただけたでしょうか?」


ほとんどの者が食事を終えた段階でリカルドが立ち上がった。

ってこれ…国王陛下のご意向なの?

知らないのはタチアナぐらいで、他の者達は知っていたのだろう。そうでなければ、こんな豪華な面々が一堂に会することはない。

って、エリカ様は?

タチアナが慌ててエリカの方を見た。

エリカはドレスを握り下を向いていため、その表情は見えない。


「それでは皆様の末永いお幸せを願って、この会を閉める挨拶とさせていただきます。」


リカルドの挨拶が終えると皆が席を立つ。

中にはすぐ様エリカの元へ駆けつける男性もいるが、仲睦まじい姿の婚約者同士の方もいた。

タチアナはエリカに声を掛けようとしたが、すでに多くの男性の方に囲まれていてそれは願わなかった。


**


それからエリカ様から避けられるようになり、タチアナは少し落ち込んだりもしたが、新しい出会いもあって少しは慰められた。

新しい出会いとは、あの食事会で仲睦まじい姿を見せくれたご令嬢方だ。

リカルド様に感謝してくださっているのか、私にも優しくしてくださり、『愛のスパイスご愛用の会』と称してはみんなで和気藹々としたお茶会にお呼ばれしている。


「タチアナ様とリカルド様はみんなの理想の関係ですのよ?」

「そうそう、見ました?食事会の時の『アーン』!」

「見ましたわ!私たちもやりたいのですが…最近仲直りしたばかりだから、距離の取り方が分からなくて…」

「初々しくて見てる方は良いですが、いざ本人となるともどかしいですよね。」


『ねー!』

ご令嬢方の一斉の相槌に、またもやタチアナは出遅れてしまうが、いつかは同じように言えたらいいなと思えるようになっていた。


「すみませんが、タチアナお借りしても?」


噂のリカルドがやってきて、タチアナは顔を真っ赤にしてご令嬢方を見た。


『どうぞー』

また一斉にご令嬢方が答える。


「お言葉に甘えまして、失礼しますわ。…またお誘いいただけますか?」


『もちろん。』

タチアナの問いかけにもご令嬢方は声を揃えて即答してくれた。

リカルドとタチアナが立ち去ると『キャー』という黄色い声がうしろから聞こえてくる。

それを恥ずかしくも思いながらも、タチアナは前の様な逃げたいという気持ちは無かった。


「先ほどの方々は食事会をした時のご令嬢方だったね。」

「ええ。婚約者様と仲直りができたとリカルド様に感謝してくださっていました。」


これも、全部リカルド様が結んでくれたご縁…

以前昼食を食べたりしていた中庭にあるベンチに座る。

しかし、リカルドはエスコートで繋いでくれていた手を離してはくれなかった。


「リカルド様?」

「…仲がいいのは良いけれど、私のことも忘れないでね。」


リカルドの唇がタチアナの額に触れる。

タチアナはそのまま倒れ込んでしまっていた。


「知っているかい?君が私を想ってくれた時から私の人生に価値が生まれたんだよ。今ではもう私の想いの方が大きいかも知れないけれど。」


タチアナはリカルドに抱き寄せられ、それは聞いたこともない様なそれはそれは甘い言葉を囁かれる。

タチアナの胸はいっぱいになって、この上なく嬉しいのだが、キャパシティというものがある。

もう、タチアナの胸は破裂寸前だ。


「卒業したらすぐに結婚式を挙げるから、それまで準備していてね。」


パーンという音がタチアナの頭の中で響き、タチアナは目眩を起こした。

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