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とうとうエリカを含めた昼食会を開く日になった。

タチアナはその日が近づくたびに胃がキリキリと痛みを増していっていた。

タチアナが用意したバスケットにはこの日の為に三人分の食事が入っている。

リカルド様が好きなものを中心に女の子が好きそうな野菜も多めにして、彩りも考えた。

エリカ様のお口に合うかしら?

タチアナは二人と待ち合わせした食堂へとトボトボと重い足取りを運んだ。


「タチアナ、待ってたよ。」


リカルドに案内され、何故か食堂にある席へ向かう。

あれ?お外じゃないの?

今までリカルドとタチアナはひっそり人目を避けるように食事をしていたので、てっきり同じように外で食べるのかと思っていた。

しかも…沢山席がある。

タチアナがリカルドの顔を見ていると、続々と招待客が集まってきた。

その恐れ多い面々にタチアナが固まる。

それはこの国の王子かは始まり、それを支える中枢の貴族の御子息とその婚約者達だった。


「私のような者の呼びかけに応えていただき、大変恐縮しております。」


ある程度人が席に着いた時点でリカルドが声を上げた。

男性陣は顔をしかめ、婚約者たちは素知らぬ顔でその言葉を聞いている。


「あら…リカルド様…?」


その重い空気の中でエリカの声が響いた。


「お待ちいたしておりました。シエンタ嬢。」


リカルドはいつものように優しい笑みでエリカを出迎えていた。

…ってあれ?エリカ様だけ婚約者がいらっしゃらないのに…

皆が婚約者と隣り合って座っているので、エリカが座る場所などないのだ。

ここでリカルド様をカバーするのが私の役目よ!


「エリカ様!良かったらお隣をどうぞ!エリカ様のお食事ご用意いましたのよ!」


下を向いたまま歩き出したエリカがタチアナの横に立って微笑んだ。


「楽しみだわ。」


良かった…泣いていらっしゃらなかったわ。

リカルド様はとても紳士的だが、男の人らしく少し抜けているところもあるのかもしれない。

他のご令嬢方がそう言っているのをタチアナは思い出した。

…アレ?おかしくない?

気がついた時にはエリカはまだ唯一席に着いていないタチアナとリカルドの間に立っていた。

このまま座るの?

疑問はあったけれど、タチアナは問うことができずにそのまま席に着いてしまった。


「最近色々ありますが、皆様が仲良く婚約者である方々とお食事をすることで少しでもわだかまりが解けたらと思い、この場を設けました。ご令嬢の方々が想いを込めてご用意されたものを食べながら、和やかにご歓談できたらと思います。」


ご令嬢の方々がそれぞれ事前に用意した料理を出す。

それは家の料理人が作ったものや、自分で作ったもの、様々な料理が並ぶ。

タチアナもエリカやリカルドの為に作った料理をバスケットの中から取り出した。


「…他の方々と比べましたら、見劣りするかもしれませんが、良かったらどうぞ。」


タチアナがエリカの皿に取り分ける。


「…ありがとう。リカルド様もいかがですか?タチアナ様だと遠いので私が取り分けましょうか?」


一瞬の戸惑いを見せたが、エリカはいつものにこやかな笑顔に変わっていた。


「いえ、結構。タチアナからよそってもらいたいので。」


リカルド様はわざわざ私の方まで手を伸ばて盛り付けた皿を受け取る。

しかし、その瞬間リカルドは皿の中身をエリカの方に零してしまった。


「…きゃあ!」


声を出したのはタチアナの方だった。

エリカの方は少し驚いた表情になったが、またすぐにいつもの笑顔に戻った。


「すまない。ドレスを汚してしまったな…少し席を外して構わないかい?」


リカルドがエリカとタチアナに向かって言う。


「構いませんわ。」


エリカがそう言い、タチアナは黙って首を縦に振った。

リカルドはエリカの手を取りエスコートしながら席を立っていく。

タチアナはただそれを黙って見ていた。

リカルドとエリカが重ねた手を思い出して、喉の奥に苦いものが広がる。

泣いたら…ダメだわ。


「婚約者がお騒がせいたしました。」


タチアナはにっこり笑い、リカルドの非礼を詫びた。

すると、一斉に男性陣は立ち上がってリカルドとエリカを追いかけて行く。

残ったタチアナ含め、残った女性陣はお葬式のように静かに項垂れていた。


「先程は失礼いたしました。」


早めに帰ってきたリカルドが席に着く。

しかし、誰一人としてリカルドの方を向く人はいなかった。


「では、お詫びにこれを。『愛のスパイス』でございます。」


赤い粉末の入った容器をリカルドがテーブルの上に置いた。


「かければかけるほど、愛が伝わります。王妃様もご使用のものなので、良かったお使いください。」


『愛』『王妃様』の言葉に反応したご令嬢の方々が一斉に顔を上げでその赤い粉末を見た。


「私に頂けるかしら。」


一番はじめに声を出したのは王子の婚約者である公爵令嬢だった。


「沢山お持ちいたしましたので、沢山お使いください。」


リカルドは席を立って、公爵令嬢に小瓶を手渡した。

すると、公爵令嬢は思いっきり王子の皿に『愛のスパイス』ぶちまける。

それを見ていた他のご令嬢の方々もリカルドから『愛のスパイス』を受け取り、各々の婚約者の皿に振りかけていった。

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