第3話その2
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オレスト~俺の戦略はこんなに素晴らしいのにどうして誰もわかってくれないんだ~
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内閣府認証NPOランチェスター協会認定インストラクターから題材提供&ストーリー監修
教育×ライトノベル×経営戦略?×地域活性化??
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そちらも併せてオレストを宜しくお願いします!
第3話続き
「実験を通して科学に興味を持つことができれば化学、物理、生物、さらには数学など、幅広い科目でのモチベーションと学力の向上が期待できます。
以上で科学部の発表を終わります。ご清聴ありがとうございました」
流れるような説明を終え、余裕の表情で壇上から降りていく堀田を、熊井は涙目になって見つめる。
彼からマイクを受け取った司会の生徒会書記・コウタは次の発表者を探して会場を見渡した。
「では続いて、折り紙部部長、熊井タツキさん」
(ど、どうしよう・・)
助けを求めて隣にいるリュウを見ると、いつの間にかそこは空席になっていた。
あれ、と疑問が浮かぶと同時に会場に聞きなれた声が鳴り響く。
「おいこら!科学部!俺らの発表パクってんじゃねえぞ!!」
どこから抜け出したのか、気づけば通路に仁王立ちになったリュウが堀田に向かって叫んでいた。
「あのバカ・・!」
気づいたタツノリが席を立つより早く、タイガがリュウに追いつき彼を後ろから取り押さえる。
「飛澤、こんにゃろ、離せ!!」
「いいから落ち着け」
体格差で押さえつけられて無理やり引き戻されるリュウを、コウタは冷ややかな目で見送ってから下ろしていたマイクを上げる。
「会の間は静粛に願います。
では続いて、折り紙部部長、熊井タツキさん」
再度呼ばれ、青い顔のまま熊井は壇上に上がる。
「ぼ、僕らの強みは・・・」
掠れる声に、もうどうにでもなれ、と熊井は目を閉じると用意していた原稿を一気に読み上げる。
「手先を使い様々な折り方を実践することで、脳トレや集中力向上の効果が得られること、そして、それによって部活動を学力の向上につなげ、学内活動の活発化に貢献できることです。
さらに今後は、人の大きさほどある折り紙の作成などの新企画を実施するなど、部外の生徒もより折り紙に親しみを持てるような活動をしていきます」
会場がざわめいているのが熊井にも感じられる。
さっきのパクリってこれのこと?と誰かの小声が耳に響く。
その言葉に泣きそうになりながらも、熊井は最後に大きく息を吸うと、知ったことかと開き直る。
「折り紙と言う遊びを通じて、学力向上と言う学内活動の活性化に貢献することで、折り紙部は新しく生まれ変わります・・・!」
ありがとうございました、と勢いよく頭を下げると、熊井は足早に壇上から降りコウタにマイクを押し付けるように渡す。
半ば唖然と見送ったコウタと聴衆が見つめる前で、熊井は崩れ落ちるように席に着いた。
(ど、ど、どうしよう・・)
崩れるように座った熊井を見下ろし、今更怖くなったか、と苦笑しながらタイガは熊井の肩を軽く叩く。
それに応じて小刻みに頷くと、熊井は深く息を吐きだして震えを抑え込むと前を向いた。
コウタがマイクを通して堀田と熊井に問いかける。
「両部は非常に似た活動を目指しているように見えますが・・」
「だから科学部のパクリだって言ってんだろ!」
コウタを遮ってリュウが再び声を上げる。
その目は堀田を真っすぐ睨み付けているが、当の堀田は表情一つ変えない。
「金城土くん!」
皆が息を潜めてリュウを見守る会場に、アスナの制する声は予想以上に響いた。
聞き覚えのある名前にコウタはあぁ、と薄く笑みを浮かべる。
「あの放送ジャックの生徒ですか」
「それがなんだ!文句あるか?!」
あるならはっきり言え!と睨むリュウに、コウタはマイクで拾えるか拾えないか程度の低い声で何か呟く。
「この、き・・が・・」
「コウタくん」
コウタの右側から伸びた腕が彼からマイクを取り上げる。
「それはここで言うことじゃないわ」
柔らかく制する声にハッと我に返り、コウタはバツが悪そうに目を伏せた。
彼からマイクを取り上げた生徒会副会長・早未アミは、わかるでしょ?と優しく諭すと、そのままリュウへと目を向ける。
少し困ったような微笑を浮かべながら、アミはマイクを口元に寄せた。
「金城土くんはなにか証拠があって言ってるのかしら?」
「証拠なんていらねえ。どう見てもパクリだろうが」
違うか?と周囲を見回すリュウに、聴衆はさっと目をそらす。
「リュウ」
唯一彼と目を合わせたタツノリが静かに首を横に振る。
「証拠がないならそれはただの文句になるけど、金城土くんはそれでいい?」
どうかしら、とマイク越しにアミが問うと、リュウは返す言葉を見つけられず、渋々席に着く。
それを見届け笑顔で会釈をすると、アミは隣に座るクレハにマイクを渡した。
「さて」
アミに短く礼を言ってからクレハは口を開く。
「両部とも我が学園への貢献を考えてくれて、生徒会としても大変有り難く、喜ばしいことだと思っている。が・・」
そこへチャイムが鳴り響き、皆が時計を見上げる。
「この通り、午後の始業時間が迫りつつある。
状況も鑑みるに、今ここで直接結論を下すのは得策でない」
教室移動のある生徒が慌てて会場を後にする中、堀田と熊井は神妙な面持ちでクレハを見ている。
その視線に、クレハは頷き返して口を開いた。
「残念だが、我々には同じ部活を二つも抱えていられるほどの余裕がない。
そこでだ。我々生徒会ではなく、一般生徒の自主性に則って部の存続を決定しようと思う。
科学部、折り紙部の両部には勧誘活動を行ってもらい、そこでより多くの部員を集めた部だけに、今後の活動を許可することにする」
ただし、とクレハは低い声で付け足す。
「両部とも、新入部員が五人に満たない場合は即廃部としたい」
熊井の顔からさっと血の気が引く。
堀田の表情から余裕が消える。
厳しすぎるのではという疑問も、授業に急ぐ人の流れに飲まれていく。
マイクの電源を切ると、クレハは椅子を引いて席を立った。
「では皆、授業には遅れないよう」
そう言い残して立ち去るクレハと生徒会役員を、堀田も熊井も、ただ茫然と見送ることしかできなかった。
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一週間の勧誘活動は熾烈を極めた。
両部共にある程度の入部希望者が見学には来るのだが、彼らは必ず「もう一個と迷っていて」と苦笑を残して帰っていくのだ。
結局、互いに入部者一人という状況で折り返しの週末を迎えていた。
「他人のまねでうまくいくとでも思ったの?」
実験室で頭を抱える堀田をキョウは冷ややかに見下ろした。
彼女の手元では新聞部の発行する号外が「部員争奪戦!どちらも廃部か?」と戦況をうたう。
「他人のまねごとなんて、無知か無能のやることよ」
新聞を机に置いて奥の扉へと向かう。
邪魔しないでね、と扉に手を掛けたキョウの耳に、不機嫌そうな声が響いた。
「おい、科学部」
聞きなれない声にキョウが振り向くと、ツンツン頭の背の低い男子生徒が実験室の入り口に立っていた。
後ろでは気弱そうな男子生徒がハラハラした様子で彼を見ている。
ツンツン頭とキョウの目が合う。
「パクリの証拠でも見つけたか?」
うんざりした様子で投げやりに問いかける堀田に、キョウは自分には関係なさそうねと目線を外す。
立ち入り禁止と書かれた扉の向こうへ去っていくキョウを見送ってから、リュウは堀田を見下ろして言った。
「別に。そんなこと正直どうでもいい」
「え、いいの?」
拍子抜けした熊井が安堵の声を上げる。
よかった、殴り込みじゃないんだね、と場違いに喜ぶ熊井の態度に、堀田は思わず開いた口を固く結び直した。
「じ、じゃあ何の用だよ」
そがれた勢いを取り戻そうと強がる堀田に、リュウは無言で端末を机に置く。
とにかく見ろ、と顎で示すリュウに従い画面をのぞき込むと、そこには彼の見慣れた人物が映されていた。
横から覗き込んだ熊井が、あ、と声を上げる。
「巨大折り紙!」
人物の横に映された構造物を眺め、こんなに大きいのもできるんだ、と熊井は目を輝かせる。
その言葉に堀田は眉を寄せた。
二人の様子を不機嫌そうに眺めながら、リュウは口を開く。
「科学部が気にくわないついでに「デンゴロウ先生」ってやつも気に食わなくって、顔でも拝んでやろうかって思ったらさ」
こんなのでてくるんだもん、とリュウは端末を見下ろす。
デンゴロウ・・と聞き覚えのある単語を復唱して、やっと意味が分かったのか熊井が端末と堀田を見比べた。
「・・・この人がデンゴロウ先生?」
何も答えない堀田に、リュウの頬が吊り上がる。
「いや~ホント、オレも驚いたよな~
勉強に役立つってだけじゃなくって、巨大折り紙とデンゴロウ先生もまさか、結局は同じものだったなんてな~」
バツの悪そうな顔で黙り込んだ堀田に、リュウはわざと馴れ馴れしい言葉をかけ、悪い笑みを浮かべる。
そのまま実験台に手をつき、堀田の顔を覗き込むようにして彼に迫った。
「で、本題なんだけどさ、やっぱ同じ部活は二つも必要ないよな?堀田くんよぉ?」
ニシシと笑うリュウを見ろし、熊井の背中に冷や汗が伝う。
(や、やっぱり殴り込みしに来たんじゃないか~~?!)
第3話その3に続く
いよいよ次回は第3話完結です!
折り紙と科学部の対決の結果はどうなるのでしょうか?
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コウタが言いかけた言葉は何なのでしょうか・・・?
学園の陰謀が徐々に明らかになっていきます。
戦略内容もですが、ストーリーもお楽しみに♪