第3話その1
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オレスト~俺の戦略はこんなに素晴らしいのにどうして誰もわかってくれないんだ~
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内閣府認証NPOランチェスター協会認定インストラクターから題材提供&ストーリー監修
教育×ライトノベル×経営戦略?×地域活性化??
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本編で出てリュウが使う戦略の解説がのってます。マリエと楽しく学びましょう!
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そちらも併せてオレストを宜しくお願いします!
定例会を終えて部室に戻った科学部部長・堀田は何度目ともわからない溜息を吐いて手元の紙に目を落とした。
『重要事項ですので、必ず部員の方にも周知を願います』
そう言ってコウタが差し出した紙を受け取った後、ここまでどうやって帰ってきたのかすら堀田は思い出せない。
真っ白になった頭の中では、書類の表題だけがぐるぐると周るだけで理解されないままの言葉が口からこぼれる。
「廃部・・・」
「・・・・え?今なんて?」
堀田の肩がピクリと跳ねる。
いつの間に来ていたのか、彼が振り返った先では部員の牛谷キョウが彼を凝視していた。
「ねぇ・・・あなた・・・、今、廃部って言った?」
珍しく驚いた様子を見せたキョウが眉を寄せて尋ねると、堀田は答える代わりに手に持ったままだった紙を彼女に見せた。
ざっと書類に目を走らせるキョウに堀田はダメもとで口を開く。
「どうしよう・・」
無言のまま紙と堀田を何度か見比べ、キョウはいつもと変わらぬ冷たい目で溜息を吐いた。
「あなたがロクな研究成果を挙げないからではないの?
少なくとも私は、そこに書いてある「学内活動の活性化」には貢献していると思うけど」
予想通りの答えに、堀田の口元には薄く笑みが浮かぶ。
そんな彼に気味が悪いと言わんばかりに目を細めてから、キョウは堀田に背を向けて実験室の奥の扉に向かった。
「私はちゃんと自分の成果を挙げているわ。
問題はあなたにあるんだから、自分で何とかして」
協力するつもりはないとはっきり告げ、「立入禁止」と書かれた扉を開ける。
(・・ここで研究できなくなったら転校でもしようかしら)
ばたん、と無情な音を立てて閉じた扉を見つめ、堀田は笑いながら長い溜息を吐いた。
(あと一週間でどうしろって・・)
ふと、たった一週間で底辺から人気部活に這い上がった運動部の話が思い起こされる。
迷う素振りを見せたのはほんの一瞬で、堀田は紙を手に実験室を後にした。
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三人掛けのソファーの真ん中に腰掛け、放送室を訪れた男子生徒はぺこりと頭を下げた。
「折り紙部部長の熊井です」
先ほどは失礼しました、と肩を縮める熊井の向かいでは、丸椅子に座ったリュウ、マリエ、アスナ、タイガ、そして椅子が足りずに本棚に寄りかかって立つタツノリが熊井に会釈を返す。
タイガが差し出したコップを受け取り一口飲むと、実は、と熊井は手元の紙をテーブルに置いた。
「今日の定例会の後こんなものを生徒会から渡されて・・」
彼から指名を受けているリュウが代表して紙を受け取る。
が、むむむと唸ると勢いよく振り向いて右手をタツノリに突き出した。
「なんか堅苦しくてよくわかんね」
だろうなと思った、とタツノリは紙を受け取りざっと目を通す。
「要するに、
『今のままじゃ廃部になります。
嫌なら一週間後にアピールの場を設けるから、そこで今後の活動方針を示しなさい』
ってことだね」
書類が気になる様子のアスナに書類を渡し、タツノリは肩をすくめた。
「方針が良ければ廃部免除、そこそこなら経過観察で、最悪即廃部、だって」
「潰すのもいとわない、ってことね」
嫌なやり方、と書類に目を通して眉を寄せるアスナの横でタイガは目を伏せる。
(おれの部もあのままだったら・・)
考えるのはやめよう、とタイガは審査の基準について話し合うタツノリとアスナに合流する。
そしてその三人に隠れるようにして、リュウはこそこそとマリエに近づき耳打ちした。
(おい、お嬢、ちょっと耳貸せ)
眉を寄せながらも、マリエはリュウの方に体を傾ける。
(今俺たちは予算がないから部活にしてもらえない)
(そうですわね)
(今折り紙部は廃部の危機にある)
(?そうですわね)
本題は何ですの?とマリエが急かすとリュウの目がきらりと光る。
(そこで、だ。
今折り紙部を放っておいて、つぶれたらどうなる?)
にししと悪い笑みを浮かべるリュウに、マリエは思わず唾を飲む。
(・・まさか)
(予算が浮いて俺らの戦略部ができるだろうがよぉぉ!!!!)
「外道!それは外道ですわ!」
「わ、バカ!声でけえよ!」
口を突いて出た声にマリエも両手で口を塞ぐが、時すでに遅し。
ハッと振り返った視線の先ではタツノリが目を細めて二人を見下ろしていた。
乾いた笑いが顔に浮かび、冷たい汗が背中を伝う。
タツノリはにこりと笑ってリュウを見据えた。
「他人の利益を図れなかったら、自らは栄えない」
聞きなれない言い回しにマリエが首をかしげる横で、リュウの肩がピクリと反応する。
マリエと揃って愛想笑いを浮かべていたリュウが、さっとタツノリから目をそらした。
下を向いてしまったリュウの表情ははっきりとは見えない。
急に変わった雰囲気に熊井は不安を露わにし、アスナとタイガは何事だとタツノリとリュウを見比べる。
「・・冗談に決まってんだろ」
タツノリを見ずにそう言い捨てて、リュウは丸椅子に座り直す。
気まずそうな熊井を横目で伺い、咳ばらいを一つしてから口を開いた。
「で?現状は?」
リュウとタツノリを不安げに見比べながらも、熊井はどこから話そうかと一つ一つ言葉を選びながら話し出す。
「折り紙部は、その、人気がなくて、自分でも・・まあ特徴ないよなぁ、なんて、思うんですけど」
あ、でも!と言いたいことが見えてきたのか熊井の言葉が加速する。
「やっぱり面白いと思うし、僕は折り紙にはまってから手先が器用になって、結構これが役に立つし、
それに集中力も!単純な作業とか、勉強でも!計算とか、暗記とか、そう言うのが苦にならなくなって、あとは」
「ちょ、ちょっとストップ!」
リュウが両手を突き出して止めると、熊井はハッと我に返って顔を赤らめた。
「ごめん、喋りだすと、僕、止まらなくて・・」
「全然いいんだけどよ」
オレも止めてごめん、と言いながらリュウは丸椅子から立ってホワイトボードペンに向かう。
「いろいろあるのはわかったからさ、いったん整理しようぜ」
リュウがペンを手に取りホワイトボードに十字の線を引くのを、皆が不思議そうに見つめる。
ただ一人タツノリは、少しだけ目を丸くした。
(なるほどね・・そうくるか)
確認なんだけどさ、とリュウは水性ペンを回す。
「まず、折り紙部は人気がない」
ホワイトボードの右上の区画に「人気がない」と書き込むと、リュウは続いて手を左にスライドさせた。
「でも、手先が器用になって、集中力が上がる」
そのまま左上に「手先が器用に」「集中力アップ」と殴り書いく。
あってるか?と熊井に確認してから、今度は右下の区画に手を伸ばした。
「で、今生徒会からは廃部勧告が出てる」
「廃部寸前!」と書いてペンを置くと、リュウは丸椅子に座ってホワイトボードを眺めた。
「うん、これでスッキリ」
「この表は何ですの?」
マリエが皆の疑問を代弁するとリュウはいや?と曖昧に答える。
「整理用の表?」
私に聞かないでくださいまし、と呆れるマリエを置いて、リュウはペンを手に取り空いた左下の欄をコツコツと叩く。
「熊井さ、みんなに「折り紙部いいかも!」って思ってもらえるようなきっかけは知らない?」
きっかけ・・?と目を泳がせる熊井に、半信半疑ながらタイガは口を開く。
「それはうちの部で言う『ワイチューブで縄跳び動画が人気』とか、そう言うことか・・?」
「あ、そうそう!そういう感じの」
「それなら・・・」
熊井は手を口に当てて言葉を探す。
「その、折り紙が脳トレになる、とか、集中力アップになる、とか、そう言うのが最近テレビでも取り上げられてるみたいで」
僕もあんまり詳しくは知らないんだけど、と自信なさげながらも、熊井は続ける。
「あと、人と同じくらい大きい折り紙が話題になってるとか・・」
「じゃあ、脳トレとか集中力アップになるのが知られてること、特大折り紙が話題なことっと」
そうして表の右下を埋めたリュウに、アスナはハッと気づいて口を開く。
「折り紙部のいいところと悪いところをまとめてる・・?」
「さすがトラコ!そういうこと!」
(と、トラコ・・)
そう言ういい方もあるよな、と満足気に頷くリュウを横目で睨み、アスナは隣で小刻みに肩を揺らすタイガを肘で小突く。
そう言われればわかりやすいかも・・とマリエも納得しかけるが、違和感を覚えてもう一度表を見る。
(・・いいと悪いなら二つで充分ですわ。なんで四つ?)
浮かんだ疑問をリュウにぶつけようとホワイトボードから目を離すと、マリエ以外の面々はすでにソファーの周りに集まってアピール作戦会議を始めていた。
(・・あとで聞きましょう)
疑問を飲み込み、マリエも会議に参戦する。
その背後で、ほんの少し開いていたドアが音を立てずに閉まった。
ワイワイとにぎやかな声が遮断され、静まり返った廊下では堀田がドアノブに手を掛けたまま何もせず立っている。
そうして数秒ドアを見つめ、彼は来た時と同じく、静かに廊下を去っていった。
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翌週、勧告の通り執り行われた生徒会主催の活動方針報告会で、トップバッターを務めた科学部部長・堀田の発表に熊井は愕然とした。
「我々科学部は、安全であれば様々な実験ができるという強みを活かし、学力向上という面から学内活動の活発化に貢献します」
(それは・・)
「部員の確保に向けては、最近注目を集めているデンゴロウ先生の実験を模擬することで、大規模な実験に興味を持っている生徒を呼び込みます」
(それは・・・)
「実験を通して科学に興味を持つことができれば化学、物理、生物、さらには数学など、幅広い科目でのモチベーションと学力の向上が期待できます」
(それは・・・・!)
「以上で科学部の発表を終わります。
ご清聴ありがとうございました」
四人の生徒会役員と廃部勧告を受けた各部の部長に加え、聴講自由と聞きつけてやってきた聴衆が感嘆の声を上げる中、熊井は心の中で叫んだ。
(それは僕達のアピールポイントじゃないか?!)
その2へ続く・・・
いよいよ、戦略パート第2弾です!
今回はどんな戦略が飛び出すのでしょうか!?
またまた、新キャ牛谷キョウ登場♪
こちらすでに二次創作で素晴らしいものを描き上げてくれた方が登場しました!
ありがとうございました(^^)