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第9話その1

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

オレスト

~俺の戦略はこんなに素晴らしいのにどうして誰もわかってくれないんだ~

公式HPはこちら

https://orest-strategygame.jimdo.com/


オレストで検索!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

内閣府認証NPOランチェスター協会認定インストラクターから題材提供&ストーリー監修

教育×ライトノベル×経営戦略?×地域活性化??

前代未聞!!アントレプレナーシップを育成するライトノベル登場!


9話の前半



活動報告会の会場に集まった各部関係者と生徒会、タケル、心落村の村民、そして聴講に訪れた生徒たちは、全員が目を見開いて壇上を見上げていた。


「どうも皆さん、軽音部です!」


ミキサーを通して響く重低音とリズムにコウタは思わず頭を抱えた。

壁際に生徒会席を作ったせいで、真後ろの壁で跳ね返った音が余計に響く。

コウタの隣に座ったアツシも、表情は変えていないもののキーボードの上に添えられた指が硬直している辺り、相当ショックを受けているようだ。


彼らの視線の先ではマイクを握った軽音部部長のトシキが時間稼ぎのトークを繰り広げ、準備済みの機材を乗せた台車が舞台袖から次々と姿を現す。

一瞬のうちに軽音部のライブ会場へと変わっていく舞台上を見上げ、コウタはいっそ笑ってしまいそうになる。

限られた発表時間を考え、機材準備の手間を省くために舞台袖で調整をしておいたのだろう。

なぜそう言うところばっかり頭が回るのか……とコウタの頭はますます痛む。


「色々大変なこともあると思いますが、俺ら軽音部が音楽で世界をつないで見せます!

ラブ・イズ・ピース!ピース・イズ・ラブ!」


バカ丸出しの言葉を並べながら、軽音部部長のトシキが部員に合図を送る。

それに応えて演奏が始まった壇上から目を外し、コウタはアツシに目配せをした。

ハッと我に返ったアツシがコクコクと頷き、素早い手つきでパソコンを操作する。


「それでは聞いてください!

今回こそは自信作、俺らの――」


アツシがリターンキーを弾くと同時に、声と重低音がプツリと途切れ、トシキは眉を寄せてマイクを叩く。

「あ、あれ、マイクきれちゃった?」


コウタはアツシが差し出すマイクを受け取り、席を立って冷ややかな目でトシキに告げた。


「今すぐ片づけて席にお戻りください」

「なんだよ、まだ何にも提案して……」

「席に戻りなさい。

三度目はありません」


有無を言わせぬ強い声がホールに響く。

壇上にいるにも関わらず見下ろされているような感覚にトシキの顔が凍りついた。

本能的に「ヤバい」と感じ取ったのだろう、周囲の軽音部員たちも愛想笑いを浮かべながらそそくさと台車を押して去っていく。

それを見送りながら、退場もスムーズなのが唯一の救いか……とコウタはため息を吐いた。


(まったく……もっとましな発表はないのか……?)


文学部から始まり、歴史研究部、トレイルランニング部、自転車競技部が順に発表を行い、先ほど軽音部の発表(もとい茶番)が終了した。

新設部である戦略部の報告の前に、ここで一度コメントを行う手筈になっている。


コウタの視線が会場の最前列へと向かう。

軽音部に先立って発表を終えた四つの廃部候補部活の部長たちが、居ても立っても居られないと言った様子でコウタの方をチラチラと見ているのと目が合った。

びくりと肩を震わせる四人の目を、コウタは一人ずつ無感情にに見つめ返す。


「各部長の皆さん、ご報告ありがとうございました。

生徒会を代表して僕の方からコメントをさせていただきます」


二週間前にクレハの話を聞いた時にはそんなに上手くいくものだろうかとコウタも不安に思った。

だが考えてみれば当然の事だったのだ。

彼女の言う通り、いい案が出せるだけの技量があれば、廃部候補になど最初からなりはしない。





「まず文学部」


松木の丸い背中がピクリと跳ねる。


(だ、大丈夫……大丈夫だぞ、私……!

頑張った、お前は十分頑張ったんだから……)

「今人気の恋愛小説に着目して、心落村の恋愛小説を書くとのことですが、この案はどういった意図で?」

「い、意図……?

えっと、私たちにできることって言ったら、小説書くことだし……恋愛ものは流行りだし……

小説読んで心地村いいなぁってなればいいと思って……」

「では、今までの文学部の小説の読者はどの程度でしょうか?」

「…………え?」

「どの程度の人数があなた方の小説を手に取ったのかと聞いています」

「え……あ、の……心落村には、恋愛に関する言い伝えがあって……」

「今は心落村ではなくあなた方文学部の話をしていますよね?」

「………………読者はほとんどいません……」

「ならばその企画がうまくいかないことは自明ではないでしょうか?」


次、とコウタは隣に座った高峰に目を向ける。

松木の撃沈に動揺してか、高峰は防御態勢をとる。


(よ、よせ、よすんだ猪狩くん……!

自慢じゃないが僕のメンタルは松木くんよりも軟弱で……)

「歴史研究部の調査技術を活かし、近年流行りの『歴女』を呼び込むという発想は悪くないでしょう」


予想外のコメントに、身を固くしていた高峰は一転、胸を張って鼻を鳴らす。


(ふふ……やはり僕は君たちとは格が違うようだね、諸君)

「ちなみに心落村にはどういった興味深い歴史があるのでしょうか?」

「…………へ?」

「人気を考えると有名武将や幕末の士族たちに絡めたものが適切かと推測しますが」

「……そ、そうそうそう!

松木くんの言うように恋愛に関する言い伝えが……」

「ではそれをどのように加工してターゲットを呼び込むつもりでしょうか?」

(ま、松木くんの話だって初耳なのに考えているわけがないだろう……!)


だらだらと冷や汗を流し始めた高峰に、コウタは目を細める。


「その程度の具体性のものを採用するわけにはいきませんね」

「く……無念……!」


高峰が手を握って涙する横では郷が静かに身構えている。

そしてその更に横では、窪内が不満げな目でコウタを見ていた。


(なんだよ、偉そうに文句ぱっか言いやがって……!)


ムスッと頬を膨らませる窪内だったが、いいもんね、と彼はコウタから目を外した。

生徒会がいるのとは反対側の壁際に並んだ席へと目を向ける。

今回の審査員は、何もコウタ達生徒会だけではないのだ。


(タケル先輩や心落村にはボクらの頑張りは伝わってるはず……)

「トレイルランニング部……と自転車競技部もそうですね」


不意打ちで呼ばれて、窪内はコウタに視線を戻す。


(え、ぼ、ボクも一緒に呼ばれちゃったよ……って郷?!

泣くの早くない?!)

「あなた方はそれぞれ、トレイルランニングのための訓練場と自転車競技コースを作ることを提案されていますが、どのような効果が期待されるのでしょうか?」

「こ、効果……?

えっと、ボクらが合宿に使ったり、あ、もちろん他の学校からも」

「その効果は予算をかけるに値しますか?」

「……というと……?」

「予算は心落村の方々が出してくれるものです。

その期待に応えられるだけの効果がある企画ですか?」


え、と窪内の喉が詰まる。

期待という言葉に彼は思わず村民席を振り返る。


(どうするかのぉ……)

(学生さんも頑張ってくれてるよって、見守ろうじゃないか)

(でもねぇ……どれもピンと来ないのよねぇ……)

(ちょっとッ、静かにしな!

聞こえちまうよッ!)


村民たちは窪内には目も向けずに頭を寄せ合って話していた。

声は途切れて聞き取りにくいが、その表情を見るだけでわかる。

窪内たち四人の出した結論は、心落村の期待には応えられていない。


そしてその様子はコウタにも見て取れた。

ここまで来るといっそ学園の面子が心配になるが、クレハの思惑通り、タケルたちは常新学園との協力を諦めかけている。


「な、なあ、軽音部にもなんかコメント……」

「コメント?

お言葉ですが、報告会の趣旨、さらには部活動の趣旨を理解していない方々に僕から言うことは何もありません。

なにより、自身の立場をちゃんと理解していますか?

ここで結論を出すことはしませんが、廃部の可能性が限りなく高いということは申し上げておきます」


えぇ、と今更のように騒ぐトシキを無視して、コウタはその奥に座ったリュウを見る。





「金城土リュウ」





今回の報告会は、現時点ではクレハが言ったとおりに進んでいる。

だがここから先はコウタにはわからない。


「新設部活・戦略部の部長として、今後の活動報告をお願いします」


クレハは戦略部の強みを封じたと言っていたが、それがどういうことなのか。


(さあ、どう出る)


コウタは席に着き、壇上へ上がるリュウの背中を見上げる。

マイクを取ったリュウは、険しい顔で息を深く吸うと口を開いた。




「戦略部が心落村にできることは……ありません」




***************************


ショウマが報告会の会場に到着すると同時に、会場全体がざわめいた。


「戦略部ができることはないから、報告することもありません。

発表は以上です」


リュウの発言に困惑した聴衆たちが、「どういうことだ」「あの戦略部が?」と小声でひそひそと戸惑いを口にする。

廃部勧告を受けていた部長たちでさえも、足りない部分はあるものの何かしらの報告を持ってきたのだ。

それが、この報告会で最も期待されていたと言っていい戦略部が、何もないと言う。




会場後方の出入り口からその困惑を眺めていたショウマは、「やっぱりね」と頷いた。


(「何もできない」って思うのも仕方ないんだけどね)


心の中でリュウをなぐさめながら、ショウマは生徒会席へと視線を移す。

彼の予想通り、クレハは驚く様子もなく涼しい顔で壇上のリュウを見上げていた。


その二つ隣で、やっと我に返ったコウタがマイクを手に戸惑いつつも声を上げる。


「できることがないとは……どういうことですか、金城土リュウ」

「そのまんまだよ。俺たち戦略部が心落村にできることはない」

「……全く……もっとマシな部はいないのですか……?」


いっそ呆れたと、零すコウタの態度に、リュウはマイクを手に取り抗議する。


「なんだよ!

もとはと言えば生徒会がろくな情報寄越さないのが問題だろ!」

「それなら自分たちでいくらでも調べられるでしょう?

責任転嫁は……」

「そういう意味じゃなくって」

「ではどういう意味なのかはっきりと言ってください」


質疑を兼ねたコメントのはずが、互いの語調が強くなってリュウとコウタの言い合いのようになっていく。

やれやれ、とショウマは苦笑交じりに溜息を吐くと、深く息を吸いこみ、口を開いた。




「彼が言いたいのは『明確な目標だけが願ったとおりの成果をもたらす』ってことじゃないかな?」




会場に居合わせた全員が彼を振り返る。

久々にしてはいい声が出たもんだ、とショウマは満足しながらその視線に笑みを返す。


「……会の途中です。

静粛に願います」

「うん、そうしたいのは山々なんだけど」


コウタの言葉を受け流して、ショウマは階段状の通路をリュウに向かって歩いていく。


「でもこのまま放っておいても君たちの言い合いしか見れないんじゃないかと思って、ついね」


やれやれとでも言うように肩をすくめてから、ショウマは「あぁ、そうだ」と足を止める。


「一応自己紹介をしておこうか」


ちょうどホールの真ん中あたりで、彼はぐるりと周囲を見渡して礼をした。




「三年、演劇部部長の柳瀬ショウマです」


投稿が遅れてしまい、申し訳ございません。

引き続きオレストをよろしくお願いします!

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