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第8話その2

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

オレスト

~俺の戦略はこんなに素晴らしいのにどうして誰もわかってくれないんだ~

公式HPはこちら

https://orest-strategygame.jimdo.com/


オレストで検索!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

内閣府認証NPOランチェスター協会認定インストラクターから題材提供&ストーリー監修

教育×ライトノベル×経営戦略?×地域活性化??

前代未聞!!アントレプレナーシップを育成するライトノベル登場!

第8話その2



小屋の中は外見の印象よりもこざっぱりとして、清潔に保たれているようだった。

入って数歩のところから柔らかそうなカーペットが敷かれており、その手前で靴を脱ぐツグハとマリエにならってリュウもスニーカーを脱ぐ。

ツグハは足早に部屋の奥へ向かうと、壁際にそびえるザブトンの山から手近な三枚を取ってカーペットの上に置き、二人に手招きをした。


「地べたでごめんなさいね。

今ちょうどみんないないから、楽にしてちょうだい」


勝手のわかっているマリエが奥へ向かう後ろで、リュウは口を空けて部室を見回していた。

カーペットの手前までは劇で使うのであろう様々な器具が手作りの棚に収納されており、カーペットより奥にはテレビやテーブル、冷蔵庫などの舞台セットが並べられている。

部室と言うよりは倉庫兼リビング、と言った様子だ。

どこから引いているのか電気までちゃんとついている。


「すっげぇ……ここに住めるんじゃね……?」

「ちょっと?

ぼーっとしてないで早くこちらに来てくださいまし!」


マリエに呼ばれて慌ててザブトンに腰を降ろすと、まるでツグハの家に呼ばれた二人がリビングでくつろいでいるかのような構図になる。

ツグハの雰囲気から察するに彼女の家はもっと豪勢なのだろうが。


「珍しいわね、マリエちゃんがお友達連れてくるなんて」

「友人ではありませんわ」

「失礼、先輩だったわね。

いつもマリエちゃんがお世話になってます。

お返しってわけじゃないけど、私ができる限りの範囲で協力するわ」

「ありがとうございます!」


よっしゃ、とガッツポーズを作るリュウを横目で見ながら、マリエは腑に落ちないと言った様子だ。


(お世話された覚えなんてこれっぽっちもありませんけど……)



「で、どういうお願いかしら?」

「えっと……まず、活動報告の特別課題の事は聞いてますか?」

「えぇ。

心落村の村おこしをしろっていう無茶振りでしょ?」

「それっす。

それで、演劇部に協力してほしくて」

「協力……?」


ツグハの眉が寄る。

何もできることが思いつかない、と言った様子だ。

リュウはやっぱそうだよなぁ……と少し自信なさげに切り出す。


「心落村の村おこしに、演劇部が参加してほしいんっすよ。

そのための作戦をオレたち戦略部が立てて、それを活動報告会のネタで使おうと思って」

「……なるほど、ね。

つまり、戦略部は戦略を考えるから、それに合わせて動いてくれる部活が欲しいってこと?」

「そう言うことっす。

オレたちは作戦を考えることはできても、実際にその作戦をするためのスキルはもってないから」


今までの部活の再建でもそうだった。

廃部寸前の各部に対するアドバイザーとしてリュウが活躍しただけで、実際に活動を行っていくのはリュウではなく各部の部員たち自身なのだ。


「とりあえずスキルいっぱい持ってそうな部活を、って思って、そしたらお嬢が演劇部の先輩と知り合いだっていうんで」

「そうね。

今は部長が不在だから部としての協力は難しいけど、見込みのある人を紹介することは可能だわ」


穏やかな笑顔で頷くツグハに、リュウとマリエの表情が明るくなる。

だがツグハはそこで少し表情を曇らせると、広げていた扇子をぱちんと閉じてリュウをまっすぐ見据えた。


「でも……その報告は本当に『戦略部の活動報告』として認められるの?」


演劇部がスキルを提供するのであれば、それは演劇部の活動報告として受け取られるのではないか。

彼女が懸念しているのはそう言うことだろう。

そしてそれはリュウとマリエが懸念していることでもある。


「やっぱりそうなるよなぁ……」

「そうなりますわよねぇ……」


どうしよう……と頭を抱えるリュウにマリエは「ふん!」とそっぽを向く。


「だから言ったではありませんの!

私の財力が一番の解決策ですわ!」

「いいや!

それだけは絶対に違うね!」

「それなら他にいい案を出してみてはいかがですの?」

「今考えてんだよ!」

「あらー、そうでしたのー?

全く待ちくたびれてしまいますわー」

「こんにゃろ……」


急に喧嘩腰になった二人に戸惑うツグハを置いて、リュウとマリエは立ち上がって互いに火花を散らす。


「お前がいっつもひねりのない同じ案ばっか出すから俺が一生懸命考えなきゃいけないんだろ!」

「そんなこと言って、結局最後は『オレに任せときゃいいっしょ』ってなるではありませんの!

ひねりがないのはどちらなのか、はっきりしてるんではなくって?」

「じゃあお前が今まで何してきたってんだよ!」

「う……そ、それは…………

カフェ部の制服と講師を用意しましたわ!」

「ばーか、それはお前の執事がしたことだろうが。

一人じゃ何もできねぇお嬢様が自分のものでもない金振り回して威張ってんじゃねぇよ!」


リュウの言葉に言い返すことができず、マリエは唇を噛む。

わざわざ言われずとも、考え方を改めなければいけないことはマリエだって気づいている。

ただそれをどう改めればいいのかがわからないのだ。


(仕方ないではありませんの……!)


マリエが無言でうつむくと、リュウが「ふん!」と鼻を鳴らすのが聞こえた。

腹立たしいのに何も言い返せず、悔しさでマリエは手を強く握る。






すると、突然、マリエの視界がすっと暗くなった。

目を上げると、いつの間に立ち上がったのか、ツグハがマリエとリュウの間に立っている。


マリエに背を向けたツグハの表情は見えないが、どんな顔をしているかくらい予想はつく。

マリエの顔から血の気が引いていく。


(……………………………………やってしまいましたわ)


後悔するが、もう遅い。



「金城土くん?」



開いた扇子で口元を隠し、ツグハは「うふふ」と小首をかしげた。


「私の可愛い可愛いマリエちゃんになんてこと言ってくれるのかしら?」


彼女の笑顔に圧倒されているリュウに、マリエは心の中で謝罪する。

彼女はマリエの「モンスターペアレント」なのである。

それを忘れていつもの勢いで言い合いを始めてしまったせいで、ツグハの中でのリュウの評価は虫けら同然になっているに違いない。


「いたいけな女の子に言っていい事じゃないと思うけど?」

「ツ、ツグハ先輩、マリエは大丈夫ですから……」

「マリエちゃんは下がってて。

それとお姉さまとお呼びなさい」


ツグハの気迫にマリエは下がらざるを得ない。

頼むから今からでもツグハの機嫌を取ってくれ……とマリエはリュウに目線を送るが、


「いたいけ、って……えぇ?!

もしかして、お嬢のこと?!

ないないない!

それは、ない!」


マリエが屋上の扉を蹴破っているのを知っているリュウは手と首をぶんぶんと左右に振って全力で否定する。

扇子で隠したツグハの口元が引きつり、マリエの顔からさらに血の気が引く。


「金城土くん……?」

「お、お許しくださいまし、お姉さま!」


もう無理だと判断し、マリエはツグハの背中を両手で勢いよく押した。

ツグハがよろめいた隙にリュウの手を取り、靴をひっかけ、演劇部の部室から逃げ出す。


「マリエちゃん?!お待ちなさい!」

「ちょっと、お嬢?!」

「黙って走ってくださいまし!」

「えぇ……オレ靴ちゃんと履けてないんだけど」

「今の状況がわかっていましてっ?!」


倉庫裏を走り抜け、校庭に出たところでマリエは足を止める。

放課後の校庭では運動部があちらこちらで練習を行っていた。

人の目があるここなら彼女も下手に手を出せまい。

案の定、倉庫裏の茂みの影からツグハのものと思われる視線が二人に注がれているが、何かをしてくる様子はない。


(……危ないところでしたわ)

「なぁ、お嬢、いつまで手つないでないといけねぇんだ?」

「っ……!

つ、つないでなんていませんでしてよ!

あなたがさっさと走らないから仕方なく掴んでいるんですわ!」


誰があなたなんかと、と投げ捨てるようにリュウの手を離す。


「いてて……お前お嬢のクセに握力あるよな……」

「か、火事場の馬鹿力ですの……!」


心外だ、とマリエはリュウを一睨みしてから手近なベンチに腰掛ける。

上がった呼吸を落ち着かせながら、マリエの頭の中は「これからどうしよう」という困惑でいっぱいになっていた。


「……こうなると、どこの部活に行っても同じですわね」


リュウもその隣に座り、うがーっと空を見上げる。


「どうやったら俺たちが直接、心落村になんかできるんだろう」


一週間前から何度もぶつかっては乗り越えられない疑問を再度口にし、リュウは流れる雲を目で追う。

マリエも、校庭を横切っていく陸上部のジョギングを眺めながら、何度目かわからない質問を投げた。




「本当に、あの表を作っても意味はありませんの?」




マリエが言うのは折り紙部と科学部、家庭科部と調理部を救った、状況整理のための表である。

空を見上げたまま、リュウは何度目かわからない答えを返す。


「いきなりあの表だけを使うのは間違いなんだよ。

カフェ部の時だって、お前は途中参加だったけど最初はあの表じゃなくて『料理』と『裁縫』を細かく分けることから始めただろ?」

「ではそれを今から……」

「じゃあできた作戦を、オレたちだけで実行できるか?

他の部の力を借りずに」

「……できませんわ」


そうして最初の問いに戻る。

自分たちの手だけで何かできないものかと。


「ああーーーーわっかんね!」

「……やっぱり、あの表を作ってみませんこと?」

「だから、それはやめた方がいいんだって!」


そう言って堂々巡りを繰り返す二人の頭上では、開け放たれた放送室の窓からタツノリが校庭の様子を見下ろしていた。


(あれは……リュウと鷹座さんかな?)


演劇部はうまくいかなかったみたいだね、と二人を観察するタツノリの後ろでは、高峰たち廃部候補部活の部長たちが歓喜の声を上げている。


「諸君!

どうだね、この完璧なる状況整理は?!」

「いやぁすごいねっ!

こんなに簡単に整理できちゃうなんて」

「右上が文学部で、左下がトレランか。

これで全員分整理できたな」

「え……ちょっと、郷くん……?

四つの枠は部活の数とは関係ないからね……?」


何とか文学部の状況整理が終わったようで、次の部も、と意気込む四人を眺めてタツノリは内心苦笑する。



(本当はあの表だけじゃ意味ないんだけどね)



リュウと同様、タツノリもそのことはわかっている。

それでも彼はこれ以上四人に干渉するつもりはないらしい。



(そう言えば、廃部勧告って確か、五部活じゃなかったっけ……?)



新設部活として報告の義務がある戦略部と、廃部勧告を受けた文学部、歴史研究部、自転車競技部、トレイルランニング部、そして―






「ねぇ、高峰が言ってた緊急部長会議、ホントにいかなくていいの?」


専科棟の一階の端、第二音楽室を活動拠点とする軽音部もまた、次回の活動報告会への参加を義務付けられていた。


あきらかに校則違反の金髪をお団子にした女子生徒が机に腰掛け、黒いマスク越しにもごもごと問いかける。

それに応えたのは、床に寝ころんで楽譜を眺める男子生徒だった。


「だいじょーぶ。もうあとちょっとで完成する」

「サイコーにカッコいい曲じゃないと認めないからね」

「任せとけって!」


楽譜にコードを書き入れて、軽音部部長の相上トシキは不敵に笑った。


「俺の音楽で世界を繋げば、どんな問題も一発解決ってことよ!」





活動報告会まで、あと一週間。




第9話につづく

更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした・・・・。


是非第8話その1から通してお楽しみください!

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