第5話その2
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オレスト~俺の戦略はこんなに素晴らしいのにどうして誰もわかってくれないんだ~
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内閣府認証NPOランチェスター協会認定インストラクターから題材提供&ストーリー監修
教育×ライトノベル×経営戦略?×地域活性化??
前代未聞!!アントレプレナーシップを育成するライトノベル登場!
HPでは、ストーリーやキャラ紹介をイラスト付きで掲載しています。
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本編で出てリュウが使う戦略の解説がのってます。マリエと楽しく学びましょう!
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そちらも併せてオレストを宜しくお願いします!
第5話その2
「任せとけ。次はこれの出番だ」
そう言ってペンを取ると、リュウはホワイトボードの空いたスペースに見覚えのある十字を書き込んだ。
「あ」とマリエが声を漏らすと、サキとミチが期待のこもった眼差しでマリエを振り返る。
「今度は何を考えればいいの?」
きらきらとしたサキの目に見つめられ、マリエはこういうのも悪くありませんわね、と少し頬がゆるむ。
「これは家庭科部と調理部のいいところと悪いところをまとめる表ですの」
ミチがほほう、とメモにペンを走らせる音を聞きながら、そう言えば、とマリエは折り紙部の時に飲み込んだ疑問を思い出す。
「いいと悪いなら二つに分けるのは普通ではありませんこと?
なぜあえて四つに分けるのか、この前から気になっていますの」
「お、いいとこ気付いたな!それは・・・」
「待ってくださいまし!わかりましたわ!
いい、ちょっといい、ちょっと悪い、悪い、ですわね?」
「ほんとだぁ!四つになったよ」
すごぉいと目を輝かせるサキと得意げに胸を張るマリエに、リュウは思わずがくりと肩を落とす。
(勘はいいんだけどな・・・)
リュウはペンを握り直すと、そうじゃなくって、とホワイトボードの上に手を走らせる。
「オレはこんな感じで分けてるんだけど」
そう言って、リュウは左上、右上、左下、右下の順に「いい+自分」「悪い+自分」「いい+周り」「悪い+周り」と書き込んでいく。だがそれを見ている三人はあまり納得できていない様子だ。
「これってつまり、どういう意味ですの?」
「いい周りは協力者、とかかなぁ・・・?」
「そうなると悪い周りは邪魔者~?」
どんどんと間違った方向に転がっていく話に、リュウは慌てて手を上げる。
「いや、そうじゃなくって・・・」
「じゃあどういうことですの?」
マリエの言葉に、う~んとホワイトボードを見つめてリュウは黙り込んでしまう。
(改めて聞かれるとわかんねえや・・・)
「あ」
そこにミチの声が響いた。
「私わかったかも~?」
軽やかに水性ペンを取り、ミチはホワイトボードにペン先を走らせる。
「左上は長所、右上が短所、左下はチャンスで、右下がピンチ」
きゅ、とペンに蓋をしてミチが振り返る。
「こういう言い方もありだったりするのかな?」
どうだ?と腰に手を当てて決めるミチに、リュウは目を見開く。
「完璧っす!」
「となると、長所は料理と裁縫ができる、ですわね?」
「うん!短所は雰囲気が悪くて人気がない事かなぁ」
一気に加速する議論を聞きながら、ミチはそのままホワイトボードにペンを走らせる。
「ピンチは、えぇと」
サキが少し迷いながら言葉を選ぶ。
「もともと仲が悪かったのに、野菜販売の事があってもっと仲が悪くなっていること・・・とか?」
「それもあるけど」
リュウが一応、と付け足す。
「合併できなかったら廃部になる可能性だってあるだろ?
生徒会長の言い方だと」
「なるほどぉ・・・そうですね。あとはチャンスかぁ・・・」
ピンチだらけでわからないよ、とサキが頭を抱える横で、マリエも腕を組んで眉を寄せる。
「チャンス、と言われてもピンときませんわよね。長所と何が違うかわかりにくいですし・・・」
「じゃあ、さっきの種類わけだと、どれが流行りかとかでいいからさ」
「あ!それなら、カフェ料理とスイーツだと思います」
リュウのヒントを受けて、サキはすんなりと答えた。
「お料理教室とかも時々行くんですけどぉ。
やっぱり、家庭料理系よりもカフェとかスイーツとかの方が、値段的にも手軽さ的にも同い年くらいの人たちが多いです」
「それはだいぶ有力情報だな」
カフェとスイーツが流行り、と書き終え、ミチはなるほどねとホワイトボードを眺める。
「こうやって整理すると状況がはっきり見えるね~」
そう言いながらミチは赤いペンを手に取り、種類わけのうちのカフェ料理とスイーツに丸を付ける。
「カフェとスイーツを強化すべき~っと」
「私も、スイーツいっぱい作って、いっぱい食べたい人は多いと思います」
クッキーでしょ、ムースでしょ、とサキはスイーツを指折り数え上げていく。
あまりに幸せそうなその顔に、マリエも思わず頬がゆるんだ。
「食いしん坊ですわね」
「えへへ・・・そうかなぁ。
だって、食堂ないし、購買も食べ物ないし。
だから調理部にしたの」
「へえ。じゃあさ、チャンスとして『学食がない』っていうのはいれるべきじゃねえの?」
確かにそうだと納得し、ペンを手に取ったミチの動きが止まる。
一瞬、珍しく真面目な顔で考えるようなそぶりを見せて、くるりと振り返るとリュウを見つめた。
「・・・どうかしたんすか?」
「ん~?いや~?」
曖昧な返事に眉を寄せるリュウに、ミチはいつも通り軽い口調で返す。
「いっそカフェ部にでもして~カフェ運営すればいいんじゃないかな~?って思ったんだけど」
カフェ部・・・?と顔を見合わせる三人に、ミチはひらひらと手を振ってあはは~と笑った。
「流石にぶっ飛びすぎだよね~忘れて~」
「・・・いや」
リュウの目がミチを見上げて見開かれる。
「すごい、いいっすよ!」
「たぶん、うぅん、絶対!人集まります!」
「学食を作ってしまう・・・盲点ですわ・・・悔しい・・・」
「そ、そんなにいいかな~?」
あまりの賛同具合に戸惑いながらも、ミチはそれほどでも?と得意がる。
「ナイスアイディアついでに~
調理部も家庭科部も学園祭で店出してるから、一通りの小物はあるはずだよ~?」
「お。じゃあ備品には困らないか」
「となると毎日学園祭、ですわね」
楽しみですわ、と乗り気のマリエに、サキもじゃあ、と手を上げる。
「エプロンは自分たちで作りたいなぁ」
「裁縫もするってことか?それは・・・」
「え~いいと思うけどな~?ワンポイントの刺繍とか入れようよ~」
「オリジナルエプロンなんて、本当に学園祭みたいですわ!」
ワイワイと盛り上がりを見せる女子三人を見ながら、リュウは「でもやっぱりなぁ・・・」と眉を寄せる。
(両方やるより、料理で一点突破の方がいい気が・・・)
そんなリュウの心配はよそに、数日後、説得が成功したとミチから連絡が入った。
その日のうちに調理部と家庭科部の合併を知らせる新聞部の号外が学園中を騒がせ、その次の週明けから活動を始めたカフェ部は大盛況となった。
「美味しい物作れる人達と一緒にお料理して、それを色んな人に食べてもらえるのが、すごくうれしいんだぁ」
サキは忙しそうにオーダーをとりながらもそう言って笑った。
「それはよかったですわ」
「ありがとね、鷹座さん」
サキはふわりと笑ってオーダー表をマリエのテーブルに置く。
カウンターの向こうから「サキちゃーん」と呼ぶ声に返事をし、足早に立ち去るサキに取り残されたマリエは、頬を赤くして彼女の背中からプイと目をそらした。
ミチが手掛けた新聞部の特集『因縁の対決に終止符~合併の真実~』ではリュウの『状況整理術』も紹介された。
それを参考にいくつかの部活が自主的に活動改善や合併を行うなど、その効果は学園全体に及んだのだが・・・
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カフェ部による校内カフェの開設から約二週間。
下校時刻間際の時間を狙い、そろそろ空いたかしらとアスナはカフェを訪ねた。
しかし、カフェ部店舗は空いているどころか客がおらず、サキとマリエが二人で頭を抱えているのだった。