第4話その3
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オレスト~俺の戦略はこんなに素晴らしいのにどうして誰もわかってくれないんだ~
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内閣府認証NPOランチェスター協会認定インストラクターから題材提供&ストーリー監修
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第4話その3
「根古の兄貴には返しきれない恩があるんで、どんなことでもお安い御用っす!」
よろしく、と言った彼の言葉に、アスナと持田は思わずトオルと根古を見比べた。
金髪ピアスの男子高校生と購買の貴公子の間に、どう考えても「兄貴」「弟分」という関係が見いだせないようだ。
二人の視線に困ったなと頭をかく根古の隣では、トオルが歯を見せて快活に笑う。
「大体の事情は聞いてるっす。
俺が来たからには、明日からここも大繁盛なんで」
覚悟しといてよ?と不敵に笑うトオルを、アスナと持田はただただ見つめることしかなかったのだが・・
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彼の予言通り、翌日から購買部には生徒がひっきりなしに野菜と惣菜を求めてやってきた。
成宮が「試しに何個か作ってみた」と言って持ってきた惣菜は昼休みの開始と同時に売り切れ、売れ行きが疑われた野菜も、放課後になると同時に長蛇の列ができるほどの人気になった。
「購買部野菜販売の最後尾こちらです!」
即席のプラカードを手に、アスナは声を張り上げる。
「竹虎さ~ん」
階段を駆け降りてきたのだろう、息を弾ませた女子生徒が二人、新たに列に加わりアスナに話しかける。
「プニッター見たよ!すごい話題になってるよね」
「もうお惣菜売り切れちゃったって?」
残念がる彼女たちの手に握られた端末には、SNSのタイムラインが表示されている。
続いてやってきた男子生徒も列に加わると、『母さんに頼まれた野菜、残ってますように・・!』と打ちこんだ。
アスナはまた声を張り上げながら、昨日の乾の言葉を思い出す。
「イマドキ宣伝ならSNS、それもプニッターに決まりっすよ」
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「兄貴のことだし、どうせウィンスタでも使ってるんでしょ?」
控室の椅子に座って呆れたように言うトオルに、根古は眉を寄せて自分も腰を下ろす。
「でもウィンスタ勧めてくれたのはトオルだろ?」
「それは兄貴が生徒と交流を持ちたいって言ってたから。
宣伝したいって今回の目的とは違うっしょ?」
なんだかんだと進んでいく話に着いていけず、アスナはちらりと持田を見やる。
表情を見るに、彼もあまり理解ができていないようだ。
「あの・・」
アスナが手を上げてストップサインを出すと、二人は話を止めて彼女を見る。
「ウィンスタって何ですか?」
「僕も知らないです・・」
持田も申し訳なさげに手を上げると、トオルは「ほらね?」とでもいうように根古に向かって眉を上げる。
「写真投稿用のSNSって言うの?
兄貴が購買部としてそーゆーのやりたいって言いだしたから俺が紹介したんだけどさ」
「実は、今もそこに野菜の販売情報とか写真とか投稿してるんだけどね」
反応はいまいち、と眉を下げる根古に、トオルは呆れた顔で言い聞かせる。
「あのね?購買部のウィンスタをフォローしてる人で、野菜買いたい人がどんだけいるか考えてみ?」
SNSとは無縁の二人も、その言葉には納得してうなずく。
「何人もはいないですね」
「もともと購買には文房具が欲しくて来るからね」
「そゆこと」
兄貴もわかった?と念を押してからトオルは続ける。
「だからこそプニッターなんっすよ。
購買部のプニッターアカウントを作って、そこから野菜と惣菜の情報を発信。
それを俺がリプニットして、二千人のフォロワーにばらまく」
二千人、という言葉にアスナは目を見開く。
「有名って、そう言うことだったんですね」
まあね、と得意げに答えてから、トオルはちなみにさ、と持田の方を向く。
「農業部の一番人気商品ってなに?」
予想しなかった質問に戸惑いながらも、持田は答える。
「それなら・・・ブルーベリーかな。
今日ちょうどみんなに収穫してもらってるから、明日から売るつもりだよ」
それを聞いてトオルはタイミング良すぎでしょ、と目を輝かせる。
「それ使ってさ、感想プニットキャンペーンしようよ!」
「感想プニット?」
「そう!学園祭の模擬店とかでよく使う手なんだけどさ。
野菜とかお惣菜の感想をプニットしてくれたら、先着順でブルーベリープレゼント!ってわけ」
「ブルーベリープレゼント?!」
「おお、いい食いつきだね」
でもまだまだ、とトオルは更に両手を開いてアスナに示す。
「さらにさらに、購買アカウントのフォロワーには10%オフなんてどうよ?」
「今からでもアカウント作ってきます」
「さすが!お目が高い!」
(・・でも、まさかこんなに人が集まるとは思っていなかったな)
まだまだ増え続ける生徒の列に、アスナはプラカードを握り直した。
お礼にもらったブルーベリーはリュウにもあげようと決め、アスナは再び声を張り上げる。
「購買部野菜販売の最後尾はこちらです!
フォロワー限定でお会計から10%オフのフォロワーキャンペーン中です!
並んでいる間に購買部のフォローお願いします!」
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プレゼントキャンペーンはブルーベリーが売り切れたことにより早々に切り上げられたもの、
フォロワーキャンペーンと農業部、家庭科部の頑張りにより野菜販売は日々繁盛していた。
「『野菜もお惣菜も美味しい』『ご飯によく合う』」
成宮が端末を片手に感想を読み上げるたび、調理室に集まった家庭科部員たちが歓声を上げる。
「『買って損なし』・・『お母さんのより美味しい』だって!」
うれしい!と盛り上がっていると、家庭科部の部室の隣、『調理部部室』と書かれた扉が勢いよく開かれる。
その音に、盛り上がっていた調理室の空気がすっと冷えこんだ。
姿を現した数人の女子生徒が、成宮たちに気付いて眉を寄せる。
「ちょっと。今日は調理部がここ使う日だよね?」
何してんの、と向けられる冷たい目に、成宮は肩をすくめた。
「あんまり遅いから?使わないなら家庭科部が使ってもいいかなって」
「は?惣菜部の癖に生意気なんですけど」
「調理部さんも同じくらい活躍してから言ったら?」
バチバチと、二組の女子生徒たちの間に火花が散る。
そんなことは露知らず、リュウは一人、放送室で部活紹介の冊子を眺めて呟く。
「やっぱ家庭科部と調理部は統合したいよな・・」
てかなんでわざわざ分けてあるんだ?とソファに寝ころび足を揺らした。
(・・まいっか)
細かいことはわからん、と机に置いたタッパーに手を伸ばしブルーベリーをつまむ。
うんめ、と甘酸っぱさを味わっていると、突然放送室の扉が勢いよく開いた。
「たのも~!」
突然の大声にリュウはソファから飛び起きる。
入り口を振り返ると、女子生徒が仁王立ちでリュウを見据えていた。
「私は三年の新聞部部長、鳴子ミチ!ミッティー先輩って呼んでね~」
聞いてもいないのに勝手に自己紹介をし、ミチはずかずかと放送室に踏み入れる。
「君、金城土くんだよね?
なんか面白そうなことしてるでしょ~?取材させてくれない?」
数秒の沈黙の後、へ?と間抜けなリュウの声が放送室に響いた。
第4話終わり