第4話その2
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オレスト~俺の戦略はこんなに素晴らしいのにどうして誰もわかってくれないんだ~
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第4話その2
「とっておきのアドバイス、もらってきました!」
そう言ってアスナが持田を連れてきたのは、家庭科部の部室だった。
隣の調理室から楽し気な声や調理の音が聞こえる中、部長の成宮は腕を組んでアスナを見据えている。
「持田くんたちが作った野菜で、私たちがお惣菜作る。
そういうこと?」
成宮に鋭い目を向けられ、持田の背中に冷や汗が流れる。
(やっぱり成宮さん怖いなぁ・・)
クラスの友人が「目つきが悪いだけ」と言っていたのを持田は思い出すが、それだけではないだろう、と持田は背筋が自然と伸びるのを感じた。
持田の方が背は高いはずなのに、なぜか見下されているような気分になる。
(しかも、あの家庭科部の部長だもんな・・)
さすがに無理なんじゃ、と持田が諦めかけている横で、アスナは負けじと成宮を見つめ返した。
「作ったお惣菜を購買部で販売させてもらいたいんです。
お野菜だけだと高校生に売りこむには難しいので、手を貸してもらえませんか?」
真っすぐなアスナの視線を受けて成宮は何も返さず、ただ目を細めてアスナを見、持田を見、そして最後に調理室へと続く扉へと目を向ける。
その目からは何を考えているのかは読み取れない。
だが明確に断られるまではもっとアピールしなければ、とアスナは持田に目配せをして続けそのまま続けた。
「お弁当のお供にもなるので需要があると思うんです。
ね、持田さん」
「あ、えぇっと、そうだね。
実際、トマトとかのすぐ食べれる野菜は生徒にも人気が高くて」
「私の友達も、野菜よりはすぐ食べれるものがいいって言って」
「あのさ」
アスナの言葉を途中でさえぎり、成宮は続く言葉を口にしないまま無言で二人を見比べた。
鋭い目線に二人の顔が引きつる。
その様子に軽く溜息を吐くと、成宮は組んでいた腕を解いて棚から一冊のノートを手に取った。
「そんな必死にならなくても、条件次第では協力できるよ」
ペラペラとページをめくり始めた成宮の言葉に、二人は顔を見合わせる。
やっぱり目つきが悪いだけなんだ、と持田は少し失礼なことを考えながら、笑顔でアスナとうなずきあった。
そんな二人の様子を横目で見て、成宮は決まりが悪そうにそっけない口調で言う。
「調理部じゃなくてうちに来てくれたのは素直にうれしいし、根古さん困ってるっぽいし、それだけ」
根古さんにはお世話になってるし、と言いながらも成宮の頬がほんのり赤いのは、流石貴公子と言うところだろうか。
購買部に頼んでよかった、と嬉しそうな持田の横で、アスナは成宮の言葉を思い出して、不安げな表情で口を開いた。
「でも、成宮先輩、条件次第ではって・・」
アスナの言葉に応える代わりに、成宮は電卓を手に取った。
先ほどペラペラとめくっていたノートを見ながら何やら計算をし、無言のまま二人に電卓を見せる。
二人がのぞきこむのを待ち、成宮は口を開いた。
「お惣菜も野菜だけで作るわけじゃないから?
それなりに材料費とかはかかるわけ」
これは四人前の経費ね、と彼女が続けると、調理室へと続く扉が開いて香ばしい香りが部室に広がった。
「成宮先輩!もうすぐできますよ」
「うん。もう行く」
成宮は鋭い目を和らげて言うと、電卓とノートを元に戻した。
「その分の費用をうちの部費から出すことはできない。
それを出してもらえるなら、うちは協力する」
そして二人が何か答えるのを待たず、成宮はエプロンのひもを結び直して立ち上がった。
「私の返事は以上。
部活中だから、そっちの返事は後で聞かせて」
じゃあ、と不愛想な顔で言い残し、成宮は調理室へと姿を消した。
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購買部の閉店時間は下校時間より少しだけ早い。
レジ閉めなどの閉店業務を終え控室へと戻った根古は、沈んだ様子で電卓を見つめるアスナと持田を見つけた。
「もしかして・・家庭科部、ダメだった?」
思わぬ呼びかけにアスナが肩を震わせる向かいでは、持田が眉を下げて首を横に振る。
「協力はしてもらえそうです。ただ・・」
持田がもう一度、と電卓を叩く。
「材料費とかできたお惣菜を入れる容器とか、あとできれば家庭科部の人たちには何かお礼したいし、そう言うこと考えると」
もう何度も同じ計算をしてきたのだろう、素早くボタンを押して持田は惣菜一つ辺りの単価を出す。
「やっぱりこのくらいかかるよなぁ・・」
「スーパーの値段の理由がわかった気がします・・」
映し出された数字を見下ろし、今まで文句言ってごめんなさい、とアスナは心の中で呟く。
根古も横から覗きこみ、まあこんなもんだろうとうなずいた。
「こうなると、あとは口コミ、だったっけ?」
持田は不安げにアスナを見る。
リュウの言う通りだとすれば、売り物、値段、売り場がこれ以上動かせないなら、宣伝方法で対応するしかない。
「竹虎さん、口コミって何かいい案ある?」
「いえ、特に・・持田先輩は・・?」
「あったら学園掲示板以外にいろいろ使ってるね」
ですよね、とアスナと持田はいっそ笑うしかないと互いに顔を見合わせる。
そんな二人を心配そうに見てから、根古は時計を気にしながら口を開いた。
「あの、実はさ」
根古はそこでふと言葉を止めて控室の扉へと目を向けた。
二人もつられて目を向けると、ペタペタとスリッパのような足音がして勢いよく扉が開く。
「ちっす!」
元気の良すぎる声と共に、目に痛いほど明るい金髪頭がドアからひょこりと現れた。
大きな声と眩しい色合いにアスナの肩が跳ねる。
「ふい~あっちぃ」
走ってきたのか息を整えながら控室に入ってきた男子生徒は、丁寧に扉を閉めて三人に向かってきびきびと礼をした。
「遅れやした!」
遅い、と文句を言う根古の横では、持田が目を丸くして口をぱくぱくとさせる。
「い、い、乾くん?!」
「?持田先輩、お知合いですか?」
「あ、いや。ただ、有名だから一方的に知ってるっていうか・・」
「有名、ですか?」
「まあ、三年生の間ではちょっと有名かな?」
得意げに言う金髪男子を、見た目の事かしら、とアスナが観察していると、根古が彼を軽く小突いた。
「うるさくてごめんね。
こいつは乾トオル。僕の」
「弟分っす!根古の兄貴が困ってるって聞いて、助けに来ました!」
根古の言葉を遮ってニコニコと嬉しそうに言い放った金髪男子に、根古は困ったなと頭をかく。
案の定、アスナと持田は一瞬考えるような顔をした後、同時に口を開いた。
「・・・弟分?」
その3へつづく