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1-7 北部都市リューリンゲン

お陰様で1000PV達成しました!これからも頑張ります!

賊を排除してからは特に問題もなくメーニヒ領の中枢都市、リューリンゲンに到着した。

が、街の様子がおかしい。

街の住民はあまり外出をしておらず通りに人の数は少ない。

通行人も皆表情が暗く、次期当主の成人を祝うような雰囲気ではなかった。聖堂や城壁には難民キャンプのようなものすら見られる。


「父上、これはどういう事でしょうか?」


都市に入る際なにやら守兵と長話をしていた父クラウスに質問する。


「うむ、領内でオークの大規模な群れが発見されたらしく周辺の村民がリューリンゲンに一時避難しているらしい」


「オークですか……」


母のヘレネの表情が陰る。息子がヴィルフェルト領で何度かオーク退治をしている身としては他人事ではないのだ。


「流石に放置はできないという事でメーニヒ候自ら兵を率いて討伐に向かわれたそうだ」


「えっ?候ご自身がですか?」


王国には主に二種類の戦力が存在する。国の正規軍である王立騎士団と貴族の私兵だ。

通常大規模なモンスター討伐などは各地に駐留する騎士団の任務のはずなのだが。


「南の国境で神聖法国との戦争があるために北部騎士団の戦力が引き抜かれているようだ、となると候ご自身が出るしかあるまい」


5大宗派の一柱であり力と正義の神ル・ガルドアを信奉する宗教国家、ル・ガルドア神聖法国が頻繁に我が国に戦争を仕掛けているのは知っていた。

南国との戦争など北の最果てのヴィルフェルト家には無関係と思っていたが、もしかすると道中の賊も騎士団の不在が原因なのかもしれない。


「そうなると誕生会はどうなるのでしょう?」


「わからん。まずはメーニヒ候のお屋敷で挨拶がてら詳しい話を確認するしかあるまい」


というわけで早速メーニヒ候の屋敷に挨拶に伺うと、既に守兵から連絡が入っていたのかメーニヒ候夫人とその息子、次期当主のエルンストが出迎えてくれた。


「リューリンゲンへようこそ、ヴィルフェルト子爵。既にご存知でしょうが夫が不在のため現在私が領主代理を務めております。我が息子のためによく来てくださいました。」


「もったいないお言葉です、メーニヒ候夫人」


「息子の誕生会までには夫も帰還する予定です。それまではゆっくりと旅の疲れを落して頂きたかったのですが……」


「騎士団が不在でなければこのような事にはならなかったのだがな」


息子のエルンストは不機嫌さを隠そうともしない。まあ15歳ならこんなもんか。


「現在、このリューリンゲンに避難民が集まっており、兵も夫と共に出払っている状態です。息子が残った兵の指揮を執り治安維持に務めているのですがそれにヴィルフェルト子爵のご子息をお借りできればと」


要はアレか、若い者同士で交流を深めましょうってことか。

元々の目的もそれだったんだし、断る理由はない。

というわけでエア、ノーラと鞄の中のララも同行し早速エルンストに連れられ兵の詰所に向かう。




□■■■□




「ヴィルフェルト子爵家の長男、アルノートだ。彼も今日から我らがリューリンゲンの臨時治安維持に参加する」


詰所の前の訓練場でエルンストから他の貴族の子弟に紹介され、お互いに挨拶を交わす。

これから先お互い世話になる関係だ、顔は良く覚えておかないとな。


≪ステータス・アナライズ≫は流石に唱えるわけにはいかないが他人にバレない幸運鑑定は使用する。

幸運が高い者も低い者もいないが貴族だけに平均値よりはやや高めといったところか。偏差値55~65くらい。

長い挨拶から解放され訓練場をざっと見る。貴族の子弟が20人弱にその御付を足して100人ほど、メーニヒ候の兵を足して150人と言ったところか。


「早速だがアルノートがどの程度の腕前か見せてもらおう、ギルベルト、相手をせよ」


と、恐らくお目付け役であろう中年の兵士が訓練場の真ん中に出て木剣を構える。


「ギルベルトはここにいる兵の中では最も剣の腕が立つ。貴族でもないから手加減は不要だぞ」


「わかりました」


こちらも木剣を受け取りギルベルトと相対する。うん?


「では、参りますぞ」


剣を交えて違和感の正体にようやく気付く。

ギルベルトの動きがこの前戦ったオネエ剣士、ブラウポンと似ていたのだ。

同じ流派なのかもしれない。ブラウポンは強敵だったが目の前のギルベルトは力、技、速さ全てにおいてブラウポンより劣っている。

あっという間に相手の手首に打ち込み木剣を取り落とさせる。


「ま……まいりました」


打たれた手首を抑えながら驚愕の表情を隠そうともしないギルベルト。


「見事な腕前だな!一体誰に剣を教わったのだ、父親のヴィルフェルト子爵か?」


「いえ、そこにいるエアリサリスという我が家の剣客です」


と、エアを指さす。その場の全員の視線がエアに集中するが当の本人はどうでもいいという表情である。

ノーラは脇で能天気にパチパチと拍手している。エアを見たエルンストと取り巻きの貴族が一斉にため息をつく。あれ?


「何て羨ましい奴……それに引き換え我々は……」


「え?あの……どういう事でしょうか?」


確かにエアは見た目は軍服の上に鎧を着た女子高生みたいな感じで思春期の若者にとってはたまらんかもしれんが

貴族の子弟としては女に剣を教わるというのはやはり外聞が悪いのでプラマイゼロといったところではないだろうか?

俺の疑問に気を取り直したエルンストが答える。


「ふぅ、ただの僻みだ気にするな。我々の剣の師は変わり者でな、色々と苦労させられたのさ」


エルンストの言葉を皮切りに取り巻きの貴族が愚痴を漏らし始める。


「いいよなー女の師匠とか。あれに手取り足取り教えてもらったのかぁ」


「おいやめろよ馬鹿。あの師範殿に手取り足取りされた記憶が蘇っちまうだろ」


「師範殿も中身だけじゃなくて外側も女だったらなー」


ああ……そういう事か。


「……ブラウポン」


俺の一言で取り巻き達が一斉にビクッと固まり怯えたような表情になる。


「師範殿を知っているのか!?」


「一度手合わせしましたが、完敗でした」


エアが勝ったことは黙っておく。


「それは仕方あるまい。師範殿は剣一つで世界中を放浪されているが、それさえなければ何処かで騎士団1つを任されてもおかしくない人物だ」


ブラウポン凄い。聞けばあのオネエはエルンストの婚約にも余計なちょっかいを出してるらしく

『あんなビッチは坊ちゃんには相応しくない』だの様々な因縁を付けてことごとく婚約を破談にしたという。

無茶苦茶だなブラウポン、大貴族を断絶させる気か。

しかもあれで出自が他国の貴族らしいと噂がある上に放浪歴が長いだけあって顔も広いのでうかつな処分はできないらしい。

もちろん大貴族の次期当主が成人近くになっても婚約者がいないのは大問題であり、

苦労の末に最近ようやくブラウポンを追い出すことに成功したが未だにエルンストには婚約者がいないというとんでもない状況である。


幸運効果で頻繁にノーラのパンモロやエアの着替えやら入浴やらと遭遇し目の保養をしている俺としてはなんだか申し訳ない気分になる話である。

ちなみにエアの生身と完全に一体化しているパーツは頭のカチューシャヘッドホンみたいな部分のみである。

というかより精度の高いセンサーがあるので耳という器官が無い。他はパーツを脱げば外見上人間と全く同じである。偶然(●● )何度も見てしまったから知っている。


「とにかく、アルノートの実力は分かった。明日からは巡回の一隊を任せる」


え、まじか。いきなり一隊を任されてしまった。

とは言っても詳細を聞いてみれば何のことはない。

俺、ノーラ、エアに副長役の貴族の子弟とその従者、さらに道案内役のメーニヒ領兵を2名を加えて約10名の隊である。

まあ巡回ならばこんなものか。


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