1-5 大変な一日が終わって
500PV達成しました!ありがとうございます!
色々あったので今日は鉱山に行くのを諦め、町に引き返すことにした。
今回の件で分かったが、幸運1万は強力すぎる。
オークに襲われた所をエアが突然転移してきて一掃した。
これは幸運1万の効果であることは間違いない。
幸運効果でピンチになっても助っ人が現れて障害を排除してくれるのは確かにありがたい。
が、その登場があまりにも想定外でしかも助っ人がこの世界のバランスや世界観を破壊しかねない存在なのはどうかと思う。
この先幸運1万を続けていたら本当にこの世界を滅茶苦茶にしてしまいかねない。
俺はそんな事を望んではいない。
(ララがいつまで持つかと言っていたが1日持たなかったな、幸運1万。)
そういうわけで幸運操作を使って幸運1000程度に下げるのが妥当だと思うが、その前に色々やっておくべきことがある。
「エア、お前の体調や武装の維持に必要なものはあるか?」
「体調維持については一般的な人間と変わりません。武装については魔力を消耗する武装のみなので弾薬は必要ありません。また装備の損傷はナノマシンによる修復機能があるので同様に問題ありません」
そういえば≪自動修復(小)≫なんて持ってたな。とにかくこれでエアの維持については問題ない。
デザインヒューマンは特殊な薬品を定期接種しないと死ぬとか言われたら困っていたところだ。
あとは家に帰って両親にエアの事を何と説明するかだ。
これが終わるまでは念のため幸運1万を維持しておこう。
「私が転移実験に失敗したのはマスターが特異点になった事が原因です、責任取って面倒見てください」
幸運1万は特異点なのか。
エアは自力で元の世界に帰れないので我が家に居候する気満々である。
この世界の住民よりは多少理解を得られやすい元日本人の俺の近くに居たいのだろう。
ちなみにララには俺が転生者なのがバレたようで「キミ転生者にしては幸運低いんだね。転生で運使い果たしたんじゃない?」と道中こっそり言われた。
たぶんエアと日本語会話していた内容を理解していたのだろう、神様だし。
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それから何事も無く町まで帰還することができた。
両親には『ノーラと町を抜け出して遊んでいたらオークに襲われたが、偶然通り掛った旅の剣士エアリサリスに助けてもらった。命の恩人である彼女は士官先を求めているので護衛として我が家に置いておきたい』
と説明したらすんなりエアは護衛として我が家に受け入れられた。
町の外に抜け出した事については怒られるかと覚悟していたが、俺やノーラが無事であった事が何よりも喜ばしかったらしくほどほどに注意される程度で済んだ。幸運万歳。
とりあえず肩の荷が下りたので幸運を合計1000まで下げる。
そうして今日一日の疲れを流そうと風呂に入ろうとしたら風呂上がりのエアとばったり遭遇した。
風呂上がりのエアは頭のカチューシャヘッドホンもどき以外は何も身に着けていなかった。
デザインヒューマンと言っても少なくとも外見はほぼ人間のようだ。
軍服の下に隠されていたエアの双丘は大きすぎず、小さすぎずといったところか。
エアは凛々しいが表情に乏しい印象だったがこうして湯上りの濡れ髪になると迷子の狼みたいで印象がまた変わる。
「す、すまん。いつもと違ってエアがいるのを忘れてた」
恥ずかしがるか怒られるかと思ったがエアはにやーっと薄ら笑いを浮かべるだけ。
何その反応。
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翌日、今度はノーラが付いて来ないように魔法の修行をしている時間を見計らい改めてララとエアを連れて鉱山へ出発した。
「さて、昨日はオークに出会ってしまったが今日こそ誰にも出会わずに済ませたいな」
「偵察用ドローンを射出します。ルートガイドはお任せください」
エアが背中のランドセルから丸い筒を4つ発射する。
丸い筒が空中で変形しプロペラを展開、それぞれ別方向に散らばっていく。
「便利だけど、燃料とか大丈夫なのか?」
「日中ならば太陽光で賄えますし、回収すれば私の魔力で充電できます」
「よくわからないけど、便利な使い魔みたいなものかな」
こういったこの世界に存在しない文明の利器をエアが使用しているとき、ララは口数が少なくなる。
この世界に異文化を持ち込むことに拒否感を示している訳ではなく、原理や使い方を理解しようと思案しているようだ。
エアの案内のお陰で誰一人出会うこともなく鉱山に到着する。
鉱山は近場にモンスターが出ることもあり、入り口には守衛の見張り小屋が置かれている。
流石にここを誰にも見つからずに通るのは難しい。ん?エアを護衛に連れているなら町の外に出ようが別に怒られる筋合いもないか?
何で気付かなかったんだ俺。家出る時に両親に言っておけば良かった。帰ったらちゃんと話そう。
というわけで堂々と正面から鉱山に入る。
幸い屋敷で何度か顔を見た者がいたのでただ入り口の方を見学するだけだと伝えればすんなり鉱山の中へ入れた。
坑道をしばらく進んだところでララが呟く。
「この辺りで十分かな」
ララの左目が白色に輝くと周囲の岩盤から同じ色の光がララの元に集まってくる。
降臨した時のように魔石が消滅するのでは岩盤がスカスカになって崩落する心配もあったが、どうやら幸運の魔石の魔力だけ吸収しているようだ。
「……ふう、ごちそうさま。これで現世で実体を維持できるよ、ありがとう」
ララの体の発光が収まる。
「ああそうだ、ご褒美としてキミの天使の位階を昇格させておいたから」
確認するとクラスがエンジェルからアークエンジェルに昇格している。ララ様太っ腹。
上手く懐柔されている気もするがお互いwin-winの関係なのだ。
できればこの関係を維持していきたい。
後に判明したことだが今回ララが幸運の魔石の魔力を吸収したおかげでこの鉱山からハズレ石が産出する割合が大幅に減り、我が家の収支もかなり改善したそうな。
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ララやエアと出会った嵐のような一日から、俺の生活は一変した。
まずエアから剣術を習うようになった。
前世の頃は運動が苦手だったので剣術は敬遠していたのだが、オークの一件でいざという時に身を守る力は必要だと認識を改めたのと、天使補正で上昇したステータスが勿体無いこともある。
「最初から剣術やその他武器の取り扱いをプログラムされている」というエアが他人に物を教えることができるのか疑問だったがどうやら問題ないらしい。
むしろ俺の剣の切り返しが0.2秒遅いとか角度が3度浅いだのと機械的な正確さで教えてくれる。
「現在能力を1%に抑えている今の私はマスターより脆弱です、ぶっちゃけこれ以上手加減できないのでさっさと強くなってください」
訓練相手として剣を打ち合うエアの言葉は相変わらず辛辣というか毒舌であるが。
さらに人目を忍んでララから法術の修行も受ける。
かつてノーラの祖母ルジーヌに言われた通りどうやら俺は聖魔法の才能があったようで法術の腕はめきめきと上達していった。
「ボクとしてもキミができる事の幅を広げてくれるのはありがたいから協力は惜しまないよ」
ララの言葉で思い出す。そう言えば将来的に戦争に協力しなきゃいけないんだった。
剣術だけ鍛えていたら間違いなく最前線送りだろうし法術は最優先で覚えるべきだな。
法術士なら最前線よりいくらか後方になるはず。
「あ、わかってるだろうけど五大宗派じゃないボクの信者だってバレたら邪教徒扱いされるかもしれないから法術の使用は気を付けてね」
わかってませんでしたよララ様!宗教と無縁な日本人なめんな!そうかマイナー信仰は命懸けなのか……。
「って俺のステータスにクラス:アークエンジェルとか聖魔法スキルがあったら不味いじゃん!」
「おっとそうだったね、じゃあそこだけは他人から見えないようにボクが隠してあげるよ」
そのうち法術でステータスを誤魔化すこともできるようになるらしい。
うん、自分の身を守るためにも法術の習得は必須だな。