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1-4 次元の来訪者

ちょっと読みにくいですが

「」はこの世界の言語、『』は日本語です。


「いてて……」


衝撃波に吹き飛ばれた俺は運良く(●●● )茂みに突っ込んだおかけで擦り傷を負うくらいで済んだ。

隣のノーラは打ち所が悪かったのか気絶しているが幸い目立った外傷は無い。

―――またしてもスカートが捲れ上がりほっそりとした下半身と下着を晒しているが。

このままでは忍びないのでスカートを直してやりつつ、クレーターの中心に現れた女性に視線を向ける。


年齢は10代後半くらいか、肩より少し下で切りそろえた蒼い髪の女性は片膝をついたまま瞼を閉じ微動だにしない。

背中にランドセルみたいな装備。服装はタイトスカートの軍服みたいな格好。その上から胸や肩、腰など要所に鎧のようなもの着けている。

鎧のようなものと表現したのは翼というか放熱フィンみたいなのが生えていたりして明らかに鎧以外の機能を有しているように見えるからだ。


異世界である地球からの転生者―――俺の見立てからすれば高度な技術が鎧に用いられているのは確実である。


特に頭に付いたヘッドホンとカチューシャを合わせたような装備から生えるアンテナらしきものがその確信を強めていた。


「うわぁ、凄いね彼女。小神クラスに匹敵する強さだよ」


ララの言葉に俺は慌てて≪ステータス・アナライズ≫を唱える。


「なんだこれ……!」


―――――――――――――――

エアリサリス

クラス:デザインヒューマン

Lv:1

HP:5930/6298

MP:2650/4650

 力:2631

魔力:2143

敏捷:4059

体力:2375

技術:3033

幸運:78

スキル:全武器マスタリーLv83 演算処理Lv125 

次元魔法Lv5 魔法干渉(小) 飛行 

暗視 自動修復(小) 特殊感知 MP自動回復(大)

―――――――――――――――


(ステータスがキモい!!MPが現在進行形で凄い勢いで回復してるし!!

なんだこれ文字通りケタが違う化け物じゃねえか!!しかもLv1!?

っていうかクラスがデザインヒューマン!?人工生物ってことなのか!?)


激しく動揺する俺をよそに彼女―――エアリサリスの閉じていた瞼がゆっくりと開かれ、人工的な印象を受けるエメラルド色の瞳があらわになる。


『―――次元転移のショックでマスター設定がリセットされました』


『日本語……!?』


10年ぶりとはいえ聞き間違えるはずがない。

エアリサリスの口から出ている言葉は確かに日本語だ。

彼女は日本人なのか!?


『新規にマスター登録を実行する場合、音声によるパスワード入力が必要です』


エアリサリスは命令を待つかのようにじっと無表情にこちらを見つめたまま動かない。


……これはアレか、正しいパスワードを言えば彼女のマスター、つまり好きに命令できる立場になれるということか?


今の俺は幸運1万。適当な言葉を言えば運良く正解しちゃったり……?


―――よし。


覚悟を決めて適当に思いついた言葉を口に出す。


『……禁忌の知識から生まれし次元の海を舞う妖精』


果たして正しいパスワードだったのか、エアリサリスの無表情だった顔が微笑みに変化する。

―――緩んだその唇が開く。






『ただの冗談、からかってみただけです。』






『……は?』


酷い。

微笑みから、ニヤニヤという言葉が似合う表情になるエアリサリス。


『もしかして私のマスターになってアレコレ好きにできるとか思ってました?まだ子供なのにむっつりなんですか大変ですね』


(うわあああぁぁ!!俺めちゃくちゃ恥ずかしい!!)


『まあ、自力で次元転移は不可能なので元の世界には帰れませんし、あちらのゲテモノ連中と比べれば遥かにましなのでしばらくマスター(仮)くらいには認めてあげましょう』


エアリサリスがすっかり存在を忘れ去られていたオークの群れに向かって振り返る。

自分達を見るエアリサリスを前にようやくオーク達も動揺が収まったのか、再び俺達を襲わんと動き出す。


『とりあえず話の続きの邪魔になりそうなあれらは駆除して構わないでしょうか?』


『……構わない、と言うかむしろお願いします』


『了解しました』


エアリサリスの鎧の各所がスライドし展開すると鎧の隙間から蒼い光が漏れ出す。

そしてエアリサリスが一番近いオークに手のひらを向ける。


次の瞬間、オークとその周辺がまるで削り取ったように消滅した。


『……え?今、何を?』


『次元砲を出力1%で使用しました』


ビームとかレーザー撃ったりするのは想定していたがその斜め上を行って次元砲とか訳わからん攻撃しやがったぞコイツ。


『次元転移で機能不全を起こしていないか試しただけです、通常戦闘で使用するつもりはありません』


続いてエアリサリスの左右のスカート部分の装甲が分離し、剣にも銃器にも見える形状の武器が現れる。

エアリサリスがそれを両手で二丁拳銃のように構えると、次々と光弾が発射されオークを射抜いていく。


『やっぱりビーム兵器もあるのか……』


『厳密にはEP兵器―――エーテルフォトンライフルです』


『……この世界の住民の前でこんな兵器使ったら確実にトラブル巻き込まれる、もっと原始的な攻撃手段はないのか』


エアリサリスがEP(エーテルフォトン )ライフルを元の場所に収納しながらやれやれとため息をつく。


『出会って早々ワガママな人ですね、先が思いやられます』


ワガママとかそういう問題じゃないぞ。

エアリサリスが右手で左肘からクナイのような武器を引き抜くと、クナイの刃が120度ずつ三方向に展開し手裏剣のような形状に変形した。

それをオークに向かって投げつける。投擲された手裏剣モドキはオークを真っ二つに引き裂く。

うん、これならこの世界で使っても違和感ない武器だ。

と観察していると突然手裏剣モドキが不自然な軌道を描いて別のオークに襲い掛かり始めた。

まさか……


『あれはもしかしてドローンなのか?』


『残念、ばれてしまいましたか。私が無線で操作しています』


すっとぼけながらエアリサリスが追加の手裏剣型ドローンを投擲する。


『ところでマスター(仮)のお名前を頂いてもよろしいですか?』


『アルノート・ヴィルフェルト、アルと呼んでくれ』


『私はデザインヒューマンALICEシリーズE型、

≪EALICE-ALICE≫通称エアリサリスです。エアとお呼びください。』


E型だからエアリサリス。

C型のカリサリスとかそんな感じの姉妹がいるということなのだろうか?


『……もしくは禁忌のなんちゃら妖精?と呼びたいのであればそれでも良いですが』


『それだけは勘弁してくださいお願いします』


(あああああもう俺の馬鹿!数分前に戻って無かった事にしたい!!)


喋っている間に手裏剣型ドローンが残りのオークの群れを掃討する。

とんでもない殺戮マシーンだ。


目の前に広がるオークの群れの死体という凄惨な光景。

それを成し遂げた張本人はケロリとした顔をして手裏剣型ドローンを回収している。

彼女に対しては不思議と恐怖を感じない。彼女が懐かしい日本語を喋っているからだろうか。


「うう……」


グロテスクな死体、漂う臭気にこみ上げてくる吐き気をこらえ、オークの死体から魔結晶を回収する。

後で売ればそれなりの金になる。

ついでにオークの持っていた武器から一番まともそうな剣を選んでエアに渡す。


『次からこれで戦ってくれ』


『……ありがとうございます』


しかめっ面だがエアは一応礼を述べて剣を受け取った。

全武器マスタリーLv83なら剣でも問題なく戦えるだろう。


ここでふと気付いて自分に≪ステータス・アナライズ≫を唱える。


―――――――――――――――

アルノート・ヴィルフェルト

クラス:下級貴族 見習い細工士 エンジェル

Lv:7

HP:75/75

MP:6/58

 力:62

魔力:57

敏捷:66

体力:49

技術:71

幸運:53+9947

スキル:基礎魔法Lv3 彫金細工Lv2 幸運鑑定 幸運操作

―――――――――――――――


やはりLvアップしている、天使補正すげえ。

ステータスが滅茶苦茶伸びてるな。

ちなみにこの世界でのLvアップの原理は死んだ生物の生命力が周囲の生命に還元されることで起きるという話だ。

なのでオークを倒した訳でもない俺もLvアップしている。


確認すると未だに気絶しているノーラも……うん。Lvアップしてステータスがとんでもない事になっていた。


ララは幸運含めステータスが全く見えない。

エアはLv1のままだ。

デザインヒューマンだからなのか、あるいはこの世界の住民ではないからなのか。


というかこの出鱈目なエアのステータスを見られたら大騒ぎになるな、どうしよう。


『この世界には相手のステータスを見る魔法がある。エアのステータスを見られないようにする方法はないか?』


『自分に対する魔法効果をジャミングする機能があります、……今起動させました』


そういえばスキルに≪魔法干渉(小)≫があったな。

再度エアに≪ステータス・アナライズ≫を唱えると幸運だけ見える。

幸運鑑定はスキルだから関係ないのか。

今気づいたが≪ステータス・アナライズ≫を唱えなくても念じれば幸運の値が見えるのか。


『この機能を常時発動させることに支障はないか?』


『問題ありません。ところで私が転移してきた直後、マスターはデータベースに無い言語でそこのウサギと会話していましたがどういうことでしょうか?ウサギ言語なのですか?』


妙に食いついてくるエア。ウサギ萌えなのだろうか?

しょうがないので俺が地球からの転生者であることやララのことを説明する。

もうエアの前でララが普通のウサギのフリをする必要はないのだが、俺とエアの会話は日本語なのでこの世界の言語でララに再度説明すのはめんどくさいので放置。


ちなみにエアに日本について質問したが、エアの出身は俺の知る地球とは別のパラレルワールドの可能性が高いので話しても意味がないとはぐらかされた。


『今後はこの世界の言語で会話する必要がありますね。言語パターンを解析するのでサンプルをください。「今日からお前は俺の性奴隷だ、毎晩可愛がってやる」これを現地語でお願いします』


『ふざけんな、お前本気で覚える気ないだろ?』


『言ってくれないと妖精ちゃん困っちゃいます』


『ぐぎぎぎ……』


人工生命体のくせにどこまでもふざけた奴だ。

こいつの製作者は絶対頭がおかしい。

これ以上付き合っていても疲れるし諦めよう。


「今日からお前は俺の性奴隷だ、毎晩可愛がってやる」


「あああああアル様!?いきなり何をおっしゃっているのです!?わ、私じゃご不満なんですか!?」


お約束のように目を覚ましているノーラ。

うん、こうなるのはわかっていた。

けど、どうしよう。


「いや、彼女、―――エアリサリスがそう言えって……」


困り顔でエアに向けた俺の視線に合わせノーラも視線をエアへ向ける。


二人の注目を集めたエアは微笑みながら―――今度はこの世界の言語で、再びこの世界で放った第一声と同じ台詞を口に出す。


「ただの冗談、からかってみただけです。」



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