面接 1-2
社会不適合者で親のすねかじりの主人公は胡散臭いネットの求人に惹かれて試験を受けることに、合格するのか? そもそも どんな仕事なのか?
それから、スカイフのIDを教えてから二次面接?が始まった。
面接官はソノダと名乗った。
コンタクト申請が来て、直ぐさまチャットで指示があった。
『外行きの服に着替えてビデオ通話をお願いできますか?』
とのことで2万ぐらいするジーパンと適当なトレーナーを着てから、準備ができたことをスカイフのチャットで告げた。
『準備完了しました、いつでも始めて下さい』
『はい、準備有難うございます、それでは……』
そういうと5秒後にスカイプの相手から着信がなった。
「すー……はー」
浅く深呼吸してから通話を出た。
ビデオもすぐつながり、相手の周りは、いかにも事務所っぽかった、ただ個室の様で雑音などは殆ど無かった。
「福助様、ありがとうございます。早速二次面談させていただきますね」
「あっ、はい、お願いします」
面接官の人は、40歳ぐらいのメガネを掛けた公務員だった、とても紳士的で威圧感はあまりなかった。
いつもの癖で、何か相手を褒める一言を言いかけたのを飲み込む。
そう、ネットでの友達との交流ではなく、面接なので真剣に挑まなくてはいけない。
ましてや、恐らくケモナーという趣味趣向が活かせる他にない仕事……是が非でも……。
「えーでは、昨日の質問の一部を確認させていただきます、宜しいでしょうか?」
「あっ、はい」
「何分時間制限でいくつか誤った選択があったのではないかなと思います、大丈夫でしたか?」
「えー……そうですね、直感で選んだ質問は少し考え直したいとは思っていますが、殆どは自分の考えで選べたと思います」
「……なるほど、決断力は良し……っと」
ビデオ通話で写っているのは、胸から上なのだが、予想だが、テーブルの上には数枚の書類があるようだった。
その1枚に何やら いかにも面接っぽく何かをメモしていた。
『決断力は良し』というのは手応えありなのだろうか?
口端がにやけそうになるのを堪えた。
「えーと、では、質問の解答の深部をお聞きしますね」
「あー……はい!」
こちらのウェブカメラの視野外ではあるが、あたかも本物の面接の緊張感を覚えた。
今から何質問されるかがわからないが、ケモナーとして勤まる仕事なら本当に奪取しなければならない。
「まず……戦争は反対、間違いないですか?」
「あ、はい……実を言うと自分人を本気で殴ったこと1度も無いんですよね」
「ほほぅ!! 詳しくお聞かせいただけますか?」
「あ、はい、えっとですね」
お? 好感触? となると質問に答えた件はかなりいい成績を収めたということなのだろうか?
頑張れ、頑張れ自分っ!!
「プライドが無いわけではないですが、争い嫌いで平和主義者といいますか、殴ったこともなければ、多分本気で殴られたことも殆ど無いですね」
「ほほぅ、平和主義者……っと 良いですね」
「ありがとうございます、なんていうか、この世に無駄はないというのは分かってますが、戦争は損失が大きすぎると思うんですよね、もっと話し合いや交易で和解できないものかと……」
交易という言葉が浮かんだのは夢のおかげだろうか?
いまさらながら今からするかもしれない仕事内容が気になってしょうがない。
とはいえ、仕事をばかにするよりは誠意を込めて自分の気持を告げるほうが吉だろう。
「ではでは、貴方は、獣人などが実在したとしたら見た目ではどういう獣人とお近づきになりたいですか?」
「え?…… んー……鳥も好きですし、それこそレイカさんの二人の音色に出てくるような犬とか狼も好きです、爬虫類系も好きで……んー……悩んじゃいますかね……」
……。
しまった……質問に答えられていない、隙をついて適当に答えたほうが良いだろうか?
「あはは、なるほど、因みに恋愛思考はバイセクシャルでよろしいですか?」
「まっ、まぁ……そうですね、オスケモ……じゃなかった男の獣人とか特に好きです、とはいえ女性の獣人が嫌いではないです」
「なるほど、まぁ……獣人と恋仲になっても染色体の関係上今は、子孫は残せませんからね、相方がオスケモでも問題ないとは思いますよ」
「……えっ……?」
なな、何言ってるのこの人? 思わず目が点で相槌を打ってしまった。
「……ぁっ、いやぁー……もしもの話ですよ、一応私もバイセクシャルです、オスケモ良いですよね、オスケモ」
後頭部を搔きながら、話を続けるソノダさん、何かを隠しているようにしか見えない。
「そ、そうですよね、いやぁー、面接合否に関係なく、ソノダさんとは親しくなれたら嬉しいです」
自分の気遣いにノッてくれるソノダさん、尻拭いしてるんだからね? 評価してよ? なんてことをいえるはずもなく。
「……えぇそうですね、同人誌の話とかも是非したいですね」
「因みにソノダさんは、何がお好きですか?」
「えー、そうですね、犬系が好きだったんですが最近は徐々に蜥蜴にもハマってますかね」
「それはそれは、是非仕事時間外に色々話し聞かせて下さいね」
立ち入ってはいけないことには極力触れないでおこう、そして一番大事なのが
面接で語りすぎて相手を聞き疲れさせないことだ。
はたから見れば楽しい会話をしているように見えるかもしれないが、もう心臓バクバクだった。
仕事の内容が知りたいです、そう訪ねたいのはやまやまだが合格しないとそれは厳しいだろう。
もしかしたら、相当やばい仕事? でもなぁ……ソノダさんは悪い人には見えない。
とはいえ、人に信頼されたかったら詐欺師に聞けなんていうしなぁ……。
「ちょっと見て欲しい写真があるんですけど良いですかね?」
「あ、はい」
「あっ、そういえば、着ぐるみはお好きです?」
「まぁ……ぼちぼち大型イベントには行ったことないですが」
「そうですか、これ、特殊メイクというかかなりリアルな着ぐるみなんですが見て感想いただけますか?」
「えぇ……」
おっ? やっぱり着ぐるみとかの仕事なのかな?着ぐるみカフェとか?
ソノダさんの会社が作ったきぐるみの写真でも見せてもらえるんだろうか?
「えーっと……ある程度見えたら『見えました』と言って下さい」
それから、やや不慣れながらもウェブカメラに写真を写した。
ウェブカメラというのは案外画素数が低いもので、あまりくっきりとは見えないのだが
……。
「いっ……」
ウェブカメラ越しに映された写真はなんというか……着ぐるみの領域を明らかに超えていた。
剥製にした動物の皮でも使っているのだろうか?
「どうです? 結構凄い出来でしょ?」
写真に写っていたのは、ファンタジーの映画などに出てきそうな狼男っぽいのだが
なんというか柄が本当に犬獣人といっても過言ではなかった。
画素数が少ない分、目元や口元の判別が難しいが、最高傑作と言っても過言ではない気がした。
「す、凄いですね、ウェブカメラ越しじゃちょっとはっきり見えないので画像をいただきたいぐらいです」
「そうですよね、 いや……申し訳ないです、お渡ししたいのは山々なんですがね……」
「ぁ……いえ、すいません、それでえっとその写真と今からの質問にどんな関係が?」
「着ぐるみ知っているなら話が早いとは思いますが、当社の企画で獣化したままのスタッフ、つまりさっきの写真の子と、友達だったり恋人みたいに演技でいいから過ごせますかと質問したいのですが」
「え、演技だなんてトンデモナイ! 本気で友達や恋人なりたいぐらいですよ!!……あっ……すいません」
思わず興奮して言ってしまった、緊張はどこへやら、あの着ぐるみと擬似友達とか恋人とか、もう死んでも良くない?
「あー……予想したとおりで本当良かった、確約は出来ませんが、もし良かったらウチで働いてもらえませんか?」
「えっ…… そ、それって……」
「はい、本当に獣人が好きなのと平和主義者なのと、何よりある程度空気を読んでフォローしてくださる所、合格です」
「えっ、ぁ……マジ……ですか、嬉しいです、頑張ります!!」
「あ、でも賃金面の話とか、労働の場所とかの話もしたいのでそれを聞いて問題なければということで宜しいですか?」
「こっ、こ、交通費とか大丈夫ですか!?」
「それはこちらが用意しますので」
「なんていうか、あんまり大した人間じゃないかもしれないですよ?」
「そんなことはないですよ」
「惚れっぽい性格もあるので、お宅の子に本気で恋しちゃうかもしれませんが宜しいですか?」
……ヤバイ落ち着け自分、合格取り消されるぞ!! 急いで撤回しろ!
「はい、良識と常識のあるお付き合いであれば」
「ご、ごめんなさ……えっ、……マジですか?」
「はい、マジです。 では、仕事内容を詳しくお話させていただきますね」
「宜しくお願いします」
本気で? あのできの良い着ぐるみに恋しちゃっていいの?というか蜥蜴もいるのかな?
くわぁぁーーー!! ボクの時代きっ、きっ、きっ、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!