面接 1-1
どうして ここまで 世間に必要とされてないのかよくわからない。
自分が異性として自分を見ていたら、結婚はともかく交際したいと思うし
面接官だったら採用したいとさえ思うはずだ。
死にたいとは思うことはあるが 親に恩返しもせず死ぬのは少し申し訳ない。
とまぁ、そこそこ出来た人間ではあるとは思うが、怠けたり事故的に約束を破ったりすることもあるから
結局自分は凡人ラインの人間なのだろうか
そんな中ネット広告で見たとあるバーナー広告。
30文字前後の広告が6秒ごとに変わっていた。
『ゲームやアニメが大好き、でもゲームやアニメみたいに仕事にうまく就けない。
そして、凡人生は送りたくない、死にたいけど親に恩返しはしたい。
そんな貴方にしか出来ない仕事があります、報酬は生活費+別途月30万円!
詳しくは此方。※尚この求人は、本日のみの受付です。 』
……
まるでとってつけたかのようなボクにおあつらえ向きの求人広告
「……胡散臭いなぁ……」
そうは思いつつも、本日限定に惹かれボクはバーナー広告をクリックした。
因みに死にたくない理由は他にも有る。
パソコン本体とは別に4TBの外付けHDD、その中には親や友人には知られたくないものが埋まっている。
完全なプライベートなものがこの中には眠っている。
そのファイルの中身は、画像100万枚以上
動画1万本以上。
テキスト系ファイルそれなりに
音楽ファイルそれなりに 外付けHDDの中身は以上だ。
とそんな話はさておき、
こんな求人があっても、勤務場所や面接地が東京とかで貯金ほぼゼロの自分には縁がないことなのかもしれない。
それでも、ほんの一握りの可能性を信じ、或いは、あつ○君の求人案内を見て意味なくワクワクしていたみたいな気持ちに浸りたく。
ボクはそのページを黙読した。
貴方を必要とする世界がきっとそこにはある。
面接の流れ。
1問辺り平均10秒による性格診断。(全部で100問あります、トイレや水分補給を済ませてご参加下さい)
1次審査合格ののち電話orスカイフなどで通話orビデオ面接
面接合格後、仕事内容の確認。
……。
1問辺り平均10秒が100問、1000秒だから、1時間は3600秒、20分は1200秒、となると所要時間は15分か……。
喉も乾いてないし、トイレに行く気もない。
とはいえ、念には念を押しておこう。
極わずかしかでなかった小を済ませ、冷蔵庫の牛乳を注ぎ口に口を当てないようにしてラッパ飲みする。
飲み終わってから、真剣に挑もうとしている自分がバカに見えたが、まぁ……挑戦してみたい。
それから、3回ほどクリックして進むと
約15分の間退席が認められませんが、トイレや水分補給は済みましたか? 携帯電話もマナーモードが望ましいです。
準備ができましたら、 下記の STARTをどうぞ。
…… 随分本格的な時間制限だなぁ……。
先ほど読んだサイトの一文にはIPアドレスによるアクセス判別で挑戦は1回だけしか出来ないらしい。
サイトの真剣さが何故かボクの意欲を掻き立てた。 やってやろうじゃんか。
…………。
問1 戦争に対してどう思いますか?
……え? んー……予想していた問題と違う。
文章を読み終わる頃にカウントが始まった。
選択肢
戦争は好きだ。
戦争は嫌いだがしかたないと思う。
戦争なんて本当に馬鹿げている。 平和な世界になって欲しい。
……。 一番下かな……?
問2 戦争がキッカケでファミコンやTVゲームなどが出来たのは知っていましたか?
知っていました。
嘘だ、戦争とファミコンが関係あるわけがない
……。 これは下かな……。 後で調べてみようかな……? TVゲームと戦争の関係
本当だとしたらちょっとTVゲームを嫌いになりそうだ。
問3 差別をどう思いますか?
仕方ないことだと思う。
あってはならないことだと思う。
わからない。
……。 これは真ん中かな。差別はされる方は可哀想だし、する方だって虚しいだけだとボクは思う。
問4 友達は多い方ですか?
はい
いいえ
友達と呼べない友達ならいる。
友達は殆どいない。
……。 偽って『はい』を選べたら少し楽なのだが、正直に言ったほうが良いだろう、『友達とは呼べない友達ならい
る。』
「……はぁ……」
自分で選んでおいて虚しくなった。 シンプルに『いいえ』が良かっただろうか?
選び直そうにも、画面には既に問5が表示されていた。
問5 種族や国籍が違っても分かち合えると思いますか?
分かち合える。
分かち合えない。
……。
話し合いさえ出来れば分かち合えるんじゃないかな……?
そんな感じで質問は続いていった。基本2~4択だった。
途中予期していない ケモナー 獣人のキャラ(アニメでは殆ど脇役)の二次アートやノベルが好きかという問があり
正直に答えていいものか迷った、自分が知るかぎりでは、異様なほどのケモナー好きの芸能人・芸人更には人生の成
功者にはいないような気がする。
暴露してしまえば、外付けHDDの中身の大半がこれに関するものだったりする。
更には、ドラゴンやペガサスや麒麟(空想上の生き物)は好きかという問があり
倒してみたいか、友達になりたいか、ペットになりたいかみたいな問があった。
本当はゆっくり考えて応えたかったが約5秒という制限時間に、直感で応えるしか無かった。
普通の人はなんて応えるだろうか? 因みに自分は、戦いたいというよりは親睦を深めたかった。
勿論、ゲームの世界みたいに戯れや修行という意味で戦ってみたいという人も少なくはないだろう。
それをやってみたい気持ちはゼロではないが、運動神経が良いわけではないし、ましてや一般人に相手ができるわけがない。
って……1次面接でボクは何を考えているんだろう。
空想のことをややリアルに考えたせいか、100問応えるのは楽しかった。
まるで、異世界に行って何か仕事しませんかみたいな。
それだと合点がいく、生活費以外に30万至急されると書いてあったのはそういうことじゃないのか?
1月働く度に約30万近い仕送りが親にできるということだろうか。
嗚呼、それが本当だったらどんなに楽しいだろうか。
質問に答え終わると名前とメールアドレスと任意で電話番号の入力を求められた。
ご丁寧にメールアドレスは間違いがないか2回入力させられた。
『めあど』と入力し、変換を押せば、携帯とPCメインアドレスの2つが変換候補に出るので入力は楽だった。
それが入力し終わると、明日の連絡可能時間を求められ、12時ぐらいを希望した。
ワクワクしていた、気がつけば、そのワクワク感で妄想の創作が捗った。
異世界に行って、獣人さんと友達になったり冒険したり……。
その妄想創作はまるでスイッチが入ったかのように、翌日の朝6時までかかった。
勿論、夜ご飯休憩と風呂休憩はとった。
もし大した仕事じゃなくても沢山の執筆を出来たことが凄く嬉しかった。
一区切りついた所で眠気がこみ上げ、
読み返しする体力はなく、ベッドで眠った。
夜更かししたとはいえ、物語を書くのは楽しくて、執筆を頑張ったご褒美か、楽しい夢が見れた。
……。
「では、交易に行ってまいります」
「うん、気をつけてね」
目の前には、まるでトナカイとソリのような組み合わせで4メートルほどのドラゴン2頭が横に並び、それに繋がれ
た強靭な手綱と、少し変わった船の乗り物に女騎士が乗っていた、どうやらボクの部下のようなものらしい。
「気をつけてね」
「グルゥン~♪」
「ギャゥッ!」
一方のドラゴンの頭を撫でると、もう片方が不機嫌そうに鳴いた。
「あはは……じゃぁ帰ったら遊ぼうね」
結局中央で二頭のドラゴンをあやしたのだった。
べったりと懐いているドラゴンに感心しながらも女騎士は
「では、グレン、ギール、ゆくぞ」
その呼び声に、ドラゴン2頭の目つきが変わった、仕事をする目というか本気モードというか。
その様子にボクは思わずよだれを垂らし、
「うわぁーぅ……待ってぇ~」
「へっ?」
黄色い声を出しながらギールと呼ばれた奥のドラゴンの頭部をギュッと抱きしめた。
すると、ゴロゴロと喉を鳴らしているのを感じた。 やっぱ可愛い。
とはいえ、急いで出発をしないといけないのは分かったので、約5秒ずつ抱きしめてから
「ありがとう、すまない、では、ボクはボクの仕事を」
「はい、王子、それでは」
女騎士は、船に何やら魔法をかけて、それを浮かせた。
十分に魔力が宿って浮いたのを確認してから、二頭の竜の手綱を引いた。
30メートルほど助走をつけやがて大きな翼を広げ息ぴったりに飛びだつ。
「はぁ………可愛い、めっちゃ可愛い……」
『大好きだぁ!』なんていう言葉を堪えながら、部屋に戻った。
それから、玉座近くのテーブルにて書類に目を通し、意味の分からない箇所を秘書の狼獣人に問いかけ
問題がなければ判をおしたりサインをした。
ある程度要領を掴んだと思った時、2メートルほどの強面な蜥蜴人が紅茶とお菓子を持ってきてくれる。
秘書の狼獣人は、お手洗いに立ち、珍しく他の兵士も居なくなる。
つまりは配膳してくれた蜥蜴人と二人っきり。
何故かドキドキする。
蜥蜴人に目をやると、顔を赤らめうつむいた。 ボクに気があるのだろうか?
紅茶の香りがリラックスと同時に、何故か感性を刺激する。
「王子……職務お疲れ様です」
「嗚呼……うん…」
「良ければ秘書が戻るまで肩を揉ませていただきたいのですが」
「あ……? うん助かる」
「……では失礼します」
メイド的立ち位置なのだろうか?
ゴツゴツした蜥蜴人独特の手でマッサージされる感覚は如何なものなのだろう?
とはいえ、こんな魅力的な蜥蜴人が自分なんかに使えてくれるのが凄く嬉しい。
なんか といっても自分は王様な訳で、国民一人ひとりを生かすも殺すもある意味自由なわけだ。
それから、そっと近づき、程よい力で肩を揉み始める蜥蜴人
嗚呼……凄く心地よい。 恐らく自分から言い出すだけあって揉む技術は習得しているのだろう。
一つ言えば、もんでる様子を姿鏡で見れたら更に快適だろう。
どんな表情で、どんな風に手を動かして、 そして何を考えながら揉んでいるのだろう。
あわよくば、別のところも揉みほぐしてくれ、なんて頼んで良いのだろうか。
……
心地よさは、リラックスと同時に何故か性欲を掻き立てる。
ボクは、蜥蜴の手の甲に触れるべく、そっと手を伸ばして触れた。
想像以上に硬いでも僅かに体温を感じる。
「あっ、もう結構でしたか?…… すいません」
「……いや、続けろ…… 続けてくれ」
「はい……」
それから気がつけば蜥蜴の手の甲を撫でた。
「嗚呼っ……王子……」
「どうした? 嫌か?」
「いえっ、とんでも……」
……その時だった。
……ザクッ
「痛っ!!……」
「お、王子……?」
予期せぬ痛み、どうやら、肌荒れもとい、鱗荒れしていて、鮫肌のようになっていたようだ。
人差し指の第2関節のところを縦に1cmちょっと擦り傷ができていた。
「うー……いたた……」
「も、申し訳ありません……いかなる罰でも謹んでお受けします……」
「いやいや……勝手に触ったのはボクだからお前は悪く無い」
「しかし、鱗の手入れを怠った私が……」
「そうか……であれば、舐め取れ」
「……っ!? 私なんかが高貴な王子様の……」
「……つべこべ言うな、極刑が良いのか?」
「ほ、本当に、宜しいので……?」
「あー……」
いやいやいや、自分何言ってるの、そしてウジウジしている蜥蜴人になんでイライラしちゃってるんだろう。
「……御意……私、王に一生使えさせていただきます……」
「……ん?……ん?……んん??……」
言葉に違和感を覚えたが、くすぐったくも心地よく傷口を舐められる感触にボクは……。
「んんぅ……」
……
鳥の声が聞こえ、目が覚めた。
なんか、ミイラ化してでも見続けていたい夢を見ていた気がした。
竜や獣人が出るレアな夢を見ていたような、でもあまりはっきり思い出せない……。
そして、膀胱が満タンなのか、おっきした息子がテントを張っていた。
「ふわぁぁ……」
ボクは枕元においた携帯を取り、トイレへ向かった。
…………
尿を周りに零さないように便座に腰を下ろしてからから尿意を発散する。
「ふぅぅ……」
結構な量溜まっていたようだ、そういえば、昨日コーヒーを結構飲んだ気がする。
コーヒーには眠気予防の効果のあるカフェイン以外にも利尿効果があって……。
~~♪
~~♪
「んぉ……?」
珍しく着信だった。
ポケットに入れていた携帯を取り出す。
0879-83-……
知らない番号だった、どこの地方だろう……。
出ようとした直前に気づいた。
そういえば携帯の時刻はちょうど12時を指していた。
……ピッ
「……はい、もしもし、……」
面接関係の電話だろうか?
「あ、福助様ですね、昨日は当社の求人の一次試験にご参加いただき有り難うございました」
「……あぁ……はい」
「ただいま少々お時間宜しいですか?」
「あ、はい、30秒だけ待っていただけますか?」
「畏まりました」
それから、ボクはスマホをその辺においてから、トイレを流し、
トイレの上部にある水道で手を洗い手を拭いてから、携帯を持つ。
「お待たせしました、えっと、ご用件は?」
「あっ、はい失礼しました、えっと、確認になりますが、福助様はケモナーでございますかね?」
「あっ、はい、一応、あの、それって仕事と関係あるんですか?」
それというのは、昨日の問で聞かれたことについて言っているつもりだが、伝わるだろうか?
「あ、はい、ただ、何分機密保守がございまして、電話面談をさせていただいて合格したらお話という形になります」
「……そうなんですか……」
秘密なお仕事ということだろうか? 例えば獣人の着ぐるみのお仕事とか或いは、獣人関連のゲームやグッズ制作とかだろうか?
それだったとしても秘密な理由が分からない。
「実は、お客様のパソコンハッキングさせていただいて、趣味嗜好拝見させていただきました」
「……はっ?……えっ?……」
ハッキング? なにそれ もう嫌な予感しかしない。
「あ、ご安心下さい、脅すなどございませんし、パソコンの内容が漏れることはございません」
「はっ……はぁ……」
それから、パソコンに僅かに保存されていたアダルト動画や獣人の絵や動画などについて確認を求められた。
顔から火が出るほど恥ずかしい気分になったのはほんの一瞬だけで
どうやら電話相手の人も、重度ではないがそこそこなケモナーさんであることが伺えた。
「冷香さんの作品はお好きです?」
「レイカ……っていうと2人の音色の?」
「そうですそうです」
「あっ、はい結構好きです、本当プロの漫画家さんみたいですね」
「わかりますわかります!」
……と気がつけば語り合っていた。
暫く盛り上がっていると、ビデオ通話は可能かと尋ねられ
親近感が湧き、同志と語り合えるハイテンションで二つ返事でそれを承諾した。
(……あれ? あっ、ボク今面接してるのか……)