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二人目だけど三番目

(ふぅ・・・しかし今回はヤバかったな)


俺の肩に体を預け、もじもじしているシロナを抱き寄せたまま俺は今回の危機からようやく脱出できてホッと一息ついた。危機というのはもちろん一服盛られた事ではない。シロナが俺が娶るべき運命の女性の一人であったからだ。

部屋に入って一目見た瞬間に椅子から立ち上がれなくなってしまったのだ。なのでもし彼女が早まった真似をしようものなら取り返しのつかない事になっていたかもしれない。

それに彼女の薬は正常な判断を出来なくさせる効能があったらしいがそれについては全く必要がない物だ。なぜなら俺が既にシロナに一目惚れに近い状態に陥ってしまっているからだ。普通に言葉と駆け引きで要求をされていたらやばかったかもしれない。アウロラ達が監視しているのでありえない事だが突然服を脱いで迫られたりしようものなら理性が簡単にぶっ飛んでいるところだった。


(それにまた普通に見ても美人と来たから困ったもんだ)


頬を染め俺の胸板に頬を寄せて悩ましげな息遣いとおそらくアウロラより一回りはデカイ胸を押し付けられている状態だ。しかも薬の影響とはいえプロポーズ受諾済みと来ている。据え膳である。

人はふとしたきっかけで獣になるという、しかしながらこの美女を前にならそうなるのもやぶさかではない。更にアウロラとセットでベッドインする事を考えるとそれだけでヤバイ。


「旦那様、その者どうしますか?」


悶々としていると事態を察したのかアウロラが部屋に入ってくる。ちょいと不機嫌そうなのは俺の胸に頬を擦りつけるシロナの存在のせいか。


「もちろん妻にする。お前とテルミット、そしてシロナは三番目だ」

「本気ですか?その女は旦那様を・・・!」

「殺しに来たのはお前も一緒だろ?それにそんな些細な事で女を選んだりはしない」


俺がそう言うと納得いかなそうな表情のアウロラを見て呂律の怪しいシロナが床に手をついてアウロラに頭を下げる。


「これは、奥方様、私今日より側室としてこの方に嫁がせていたらきまふ・・・正室の奥方様に可愛がっていただければ幸いれごらいまふ・・・」


自分が正妻だといわない辺り妙に弁えている奴だがそういうのがわかる辺りは女の恐ろしさだろうか。

対するアウロラも正室と呼ばれたのがまんざらでもなかったのか少し嬉しそうな表情でシロナを見ている。こいつホントにチョろい奴だなぁ・・・。


「むむっ・・・私が正室・・・、わ、判っているじゃないですか。そこまで言うなら・・・むふふ」


正室という響きが気に入ったらしい。確かにアウロラが一番最初なのでその見解で間違いはないんだろうが・・・敢えて何も言うまい、俺は五人の女性を娶り生涯愛するだけだ。

さて、これで二人はよろしくなったので残った酒でも頂こうかと思った矢先・・・。

杯が一つ床に落ちてしまっている。もう一つは薬が塗られた杯なので使えない、しかしエールを飲むようなコップに注ぐのもなぁ・・・。


「手に注ぐわけにもいかないか・・・ん?」


手と同様に合わせて注ぐ事のできる場所があるな。ちょうど二つもある。


「アウロラ、シロナ、さっそくだがお願いがあるぞ?」

「なんでしょうか?」

「旦那様、なんか顔つきがいやらしいですよ?」

「ぐふふ、そんなことないさ・・・」


俺は残った酒瓶と二人を連れて寝室へと足を運んだ。


「ずずーっ・・・んっ、うん、美味い!こりゃ極上だな」

「あぅぅ・・・まさかこんな事させるなんて・・・」

「うふふ、次は私ですよぉ」


ベッドの上で俺は二人の胸の谷間を杯代わりにして故郷の味に良く似た味の酒を楽しんでいた。

変態?言いたきゃ言え、これを楽しまずして何が男か。酒池肉林の果てに滅んだ殷王朝が何故そうなったかが今ならわかる気がする。


「ようし、次はシロナの・・・」

「ひゃん、冷たいです」

「アウロラよりたくさん入るな」

「な!こんな事までさせたのに比較するなんて酷い!」

「そう言うな、ほれ、注ぐぞ注ぐぞ~」

「きゃ、ちょ・・・溢れちゃいますって!」


その日、俺達は夜が更けて互いに体力が尽きるまで愛し合い。二人の美女の体を存分に堪能したのだった。




「やっほー、元気にしとったかのう」


夢の中で俺は神様と再会していた。前回と変わらない格好だったがどこかに出掛けていたのか後ろに土産物らしいものが置いてある。


「おかげさまで元気だよ」

「うむ、順調に嫁さんを見つけているようで何よりじゃわい。これで二人目じゃが・・・実質三番目の妻といったところかのう」

「三番目・・・?」


とぼけて見せたが俺には心当たりがある。言うまでもないが娶ると決めているテルミットの事だ。

最初はアウロラも含め立場上で娶ると決めていたが体質も手伝ってアウロラに惚れ、またシロナに惚れて婚姻の前に手を出してしまっている。


「エルフの少女をはよう迎えに行くんじゃぞ?女は何時までも待ってはくれん」

「わかってるさ、彼女も必ず迎えに行く。これは決まった事だ」


エルフの頂点に立って皆を導き、今まで一人で頑張ってきたテルミット。ちょっとマニアが過ぎて暴走することはあるが健気で優しい彼女を放って置けるものか。

彼女にはそろそろ伴侶が必要だろう、一人だけでこれ以上頑張らせはしないさ。


「ほっほっほ、決意は固いようで安心したぞい」

「ああ、任せてくれ」

「ああ、それとのう」


そういうと神様は某仙人よろしくのだらしない顔で言った。


「あのおっぱい杯ワシにもやらしてくれんか?一口でもいいんじゃけど」

「ダメに決まってんだろ!」

「そうか・・・残念じゃのう・・・ちぇ」


俺がそう叫ぶと徐々に視界が白んでいき、非常に残念そうな表情の神様が見えなくなると俺の意識も徐々に暗転していった。


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