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騎士団長に会いに行こう

「さて、次は騎士に渡りをつけるぞ」


裏に根回しが済んだ、次は表に顔が効く連中に話を通そう。ヤクザを潰す上で公的機関と足並みを揃えておくのは決して悪いことじゃないはずだ。

そして騎士にそれとなく治安活動で功績を与え、恩を売ることでテルミットら裏方の行動に制限が掛からないようにしていきたいモノだ。


「一応騎士団長の居場所を見つけてはあるけれどどうするの?」


心配そうに尋ねるテルミット。愚問だ。


「忍び込んで交渉する。大人の悪い話し合いは人の居ないところでコッソリやるもんだ」


「え、でもそれじゃあ衛兵達にバレたり拒否されたりするんじゃ?」


「問題ない、奴目等にNOという権利はないし言わせん。」


「わー、早速無茶苦茶なのがでましたよ」


ヤクザをのさばらせている時点で奴らの職務怠慢の叱責は受けて当然。さらに言うなら身内が絡んでいる可能性だって大きいのだ。

本来なら死刑レベルの罪状が暗部から露呈してにも関わらず騎士団が目立って動いた形跡はない。予測ではあるが答え合わせの必要はないだろう。

俺たちは黒い装束に身を包み、テルミットの手引きの元騎士団長の屋敷を目指すことにした。


「ニンニン・・・どうしたんだよ」


マスクで顔を隠し屋根から屋根へと飛び移りながら騎士団長の住む屋敷へと向かう最中、後ろに続くアウロラが死んだ魚のような目をしているのに気付く。

どういうことだ、格好はどこもおかしくないはずだが・・・。


「いえ、貴方が規格外なのは知ってましたが・・・その体格でなんでそこまで身軽なんですか・・・」


「これも訓練の賜物、ニンジャにあこがれるのは男として当然」


若い頃鞍馬天狗とかジライヤ忍法帖とかに熱中したこともあったしな。ニンジャ走りは歩法を学んでいく過程で身につけたが体重の分散と体のバランスを極めれば枯葉の山で音を立てずに駆け抜けることも可能だ。某傑集走りもなんのその。

故郷のぐらつく瓦や子供の頃ちらほら残っていた茅葺の屋根を走ることに比べればここの頑丈な西洋建築は走りやすくイージーだ。


「ニンジャ・・・?ヴォルカン殿は時折訳のわからないことを仰います・・・針を突き刺して相手の感覚を操る術もさることながら一体どこでそれを?」


「ニンジャとは正義の味方かつ凄腕の暗殺者であり諜報員である!とどのつまりダークエルフとエルフの職を同時に極めた存在がニンジャといって良い」


「なんと!それは・・・凄まじい存在ですね」


死んだような目から俺の話に目を輝かせるアウロラ。取り分け正義の味方というフレーズを気に入ったらしい。正義の言葉に惹かれる辺り青臭いがそれがいいのだ、それこそ若さだろう。キラキラした視線が眩しい。

なんとなく自分の無くした感覚を持っている気がして年甲斐もなく羨む自分がいて複雑な気持ちになる。


「私もニンジャになれるでしょうか・・・」


「何度も言うが鍛錬あるのみだな」


思わずつっけんどんに返してしまい益々自己嫌悪を深めながら色町を越えて騎士団の大半が居を構える上級市街地へと踏み入る。ちらほらと衛兵が歩いてはいるが皆屋根や路地といった闇が潜む場所の警戒は疎く、まさしく上辺だけの警備、正義が罷り通るこの国を象徴していた。


「此処の人々の顔が見えるか、アウロラ」


歩を止め、繁華街もかくやという豪奢な風景を見下ろして俺はアウロラに問う。

本来ならば俺は騎士団を裏の世界に引き込み、敢えてかき乱す事で彼らの主導の後に膿をこの国の男達の手で行うつもりであったがそれも難しいとあれば是非に及ばず、外部の手を加える外ないだろう。


「愚鈍な感じがします・・・何故あれだけ裕福な姿の彼らは色町や農村の貧者を導かないのですか?彼らは貴族では?」


「彼らは知らんのだ。己が服が、食い物が、家が、そして踏みしめる石畳すらもが貧者の血で出来ていることをな・・・知らぬということは幸せであり、どこまでも残酷なのだ」


かつて古い戦争の最中、我が父はソビエトの地に消えた。物言わぬ父の遺品を抱きしめて母は泣いた。しかしその外では皆は大国を降した歓喜に沸き、死者の有無など知らぬままに勝利を祝い、英雄を讃える。その中に数多の悲しみがあるにも関わらず彼らは笑顔で笑い、祝った。

知らぬことは幸せである。もしもまともな人間が己が挙動に他者の命が伴うと知れば恐らくまともな人間は身動きが取れなくなるだろう。

しかし、知らぬ事は残酷である。たとえ己の投げた石で数多の命が失われる事が決まろうと己が捨てた食料で助かる命があり、己の職務の瑕疵の下に数多の人間が不幸に塗れ人生を狂わせ、命を投げ捨てる羽目になろうと知らぬならば良心の呵責も感情の大きな起伏も無いままに無自覚なまま贅を貪るのだ。



400万PVを達成しました。更新は遅れまくりましたがこれからも質と量を増やしつつ頑張ります。

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