ダークエルフと仲良くなろう!6
どうしてこうなったのだろうか。結局は彼女達はドラゴンが大好きだっただけなのに・・・っていうか好きすぎだろこれ。
「可愛さ余って・・・とはちょいと違うな」
「?」
苦笑しながら剣を受ける俺に彼女は不思議そうな顔をしている。それもそうだろう、殺そうとしている相手が此方を困った様子で見ているだろうから。
しかしこれはある意味好都合だ。俺のドラゴンの記憶が正しければ彼女達の争いがあってからはドラゴンたちは種族間の交流を控え、大半がこの大陸を捨ててしまったという。
つまりはこの大陸はほぼ俺の独占状態と見ていいのだ。
対立はは異なる二つの主張が居たことで生まれたのだからそれを一本に絞り、なおかつ対立を監視する存在が居れば丸く収まるだろう・・・多分!
そのためにはまず俺が自力で彼女達に勝利することが不可欠。勝利こそ前提条件だ。
「・・・剣を振るうのは心の動作だとそういえば祖父ちゃんがいってたっけ。」
悪たれの俺が素直に話しを聞けたのは少なかった。思えばもっと真摯にその言葉を聴いていれば俺ももうちっとはマシな生活を送れていたのかな。
彼女達はどこか俺に似ている気がする。己が正しいという妄執にとりつかれ、目の前にあるものと過去の栄光に縋って生きる彼女達。
スケールが違うとはいえそこに孤独な老人であった自分と何が違う。ならば体だけとはいえ関係者となり、彼女達が妄執に取り憑かれた原因となった自分がそれを全力で取り除かねばならぬ。
「さて、いくぜ・・・お前たちを縛る過去の因縁を・・・その牙叩き斬る!」
「剣を斬るつもり・・・?無駄・・・!」
「どうかな・・・それじゃあ賭けて見るか!」
剣に魔力を篭めて切れ味と剣に残った生命力を燃やす。魔力を篭めればそれだけ威力が上がり、切れ味や耐久性を上げる。しかしそれ以上に魔力を篭めれば篭めるほど剣の寿命は磨り減っていくのだ。
大上段に構えた俺を見て彼女は再び大きく腰を落とした。大きな一撃を見舞うつもりだろう。足にはうっすらと血管すら浮き上がっている。
「てやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
先ほどまでの物静かな態度を一変させ、さながら猛獣のごとく大地を蹴った。
凄まじい勢いを受けた地面は小さなクレーターを造って彼女を空中へと押し返す。
(思ったより速い!)
空中からの鋭い突き、ただの突きと形容するには些か威力がありすぎるがそれはまるで落雷のようにまっすぐに俺の脳天へと降って来る。
俺は半身をずらしてその突きをかわし、伸びきった刀身に狙いをつける。
「・・・ぜぇあっ!」
渾身の斬撃が刀身の中腹でぶつかりあう。
火花が散り、篭められた魔力に耐えかねて俺の剣が灼熱し真っ赤に刀身が焼ける。あと少し、少し持ってくれ!
悲鳴を上げる剣は俺の剣だけではない。彼女が扱う剣も味わったことの無い剣撃と魔力に悲鳴を上げている。
ミシミシっと剣の悲鳴が徐々に大きくなる。食い込んだ刃も此方が切られているのかそれとも斬っているのかもわからないくらいの熱を放っている。
----キィン!
俺は剣をありったけの力で振り抜く。たとえこれで仕損じたとしても後悔はないほどの一撃を、渾身の一撃を篭めた。
「・・・そんな・・・!」
きりきりと空を舞う二つの刃。片方は勿論俺の剣、そしてもう一つはドラゴンの牙を鍛えて作ったとされる彼女の剣だった。




