ダークエルフと仲良くなろう!4
「一人で多人数に立ち向かうのは兵法では悪手。ならばこちらも人数を増やして対処するのが一番だろう。」
俺は魔力を練るとふうっと息を吐いた。その息は煙となって徐々に形をつくりやがて俺の形になる。
『助太刀するぜ、色男。』
『ほかならぬ自分の為だもんな。』
作ったのは二体、若干テンションが高くてウザいが能力は篭めた魔力の分だけ高く、意思と思考能力を有している。
「俺は正面、お前は左、お前は右だ。いけるな?」
『任せろ。』『いいともさ。』
仰天したダークエルフの三人はそれでも果敢に抵抗を試みる。
「くっ!」
『おっ、こっちのお嬢ちゃんは武器はナイフか?可愛がってあげるぜ。』
一番チャらい分身がナイフを構えたダークエルフと接近戦に移った。
両手に握られたナイフはそれぞれが黒い刀身をしており、毒と見紛うほどのまがまがしさを放っている。
「潰すっ!」
『こっちは槍か、腕がなるわ。』
もう一体の分身は槍を構えたダークエルフに笑みを浮かべ空手の前羽の構えを取った。
「俺は手持ちがあるから・・・コイツでいくぜ。」
「・・・斬る!」
対する彼女は長剣を構え、まるで中国武術のように腰を落とし片手を剣先に添えた。 俺は正眼の構えを取り、俺はじりっと歩を進める。
「かかってこないのか?」
「・・・」
ちりっと肌をさす殺気に思わず震える。なんちゃっての腕自慢とは違う本物の殺気は戦場でも滅多とお目にかかれないレベルの濃さだ。
そして迂闊に俺の間合いに入ることはないらしい。タイミングを探りあいに歩を進めたり下がったりを繰り返す。
「来ないの?」
短い言葉に俺はにやりと笑い、ならばとやや大またに足を持ち上げた。
その刹那彼女は闇の魔法を駆使してあっという間に息が掛かりそうな距離に詰めてくる。
(誘いやがった!)
計画がうまくいったのだろうことは彼女が覆面越しに浮かべる笑顔で容易に察することができる。
さすがに精鋭の腕前は伊達じゃないみたいだ。
俺は首筋を滑ろうとする彼女の刃を止め、お返しに鉈のような剣を振るう。
袈裟懸けに放った斬撃は空を斬ったように見えたが彼女のマントにすっぱりと切れ目が入り、髪が数本散った。
「・・・矢も通さないのに。」
マントを見て正面の彼女は信じられないと言った様子で此方を見ている。
それはこちらも同様だ。俺の体に傷がついたのは10年ぶりだろうか。
「当てられたのは久しぶりだぞ。」
うっすらと滲む血に俺は思わず笑顔を浮かべ、再度剣を握り直した。
彼女もそれに合わせるように再び先ほどの構えになる。
後ろでは怒号と打撃音が響いてくるがどちらも俺の分身たちが優勢に進めていることがわかる。おそらく俺が戦っている少女がこの中で一番の使い手なのだろう。
「いざっ!」
「斬るっ!」
黒刃が煌く。 正面から受けるのはおそらく賢い選択ではないだろう。
なぜならこの世界の剣は魔力を帯びることが多い。その際の切れ味はまさに達人の放つ一撃を想起させる。
剣というのは意外にも折れやすい。日本刀すら折れにくくとも曲がりやすい。
肉厚の俺の剣ですら魔力を纏って威力を増せば最悪斬られてしまうのだ。




