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ちょっと道草

俺が配下に指示しながら首都を散策していると・・・。


「アダムスター伯爵様でしょうか?」


不意にそう呼び掛けられて振り返ると若い騎士が俺を見ている。誰だっけ?


「えっと、君は・・・」

「あ、突然声をかけてしまい申し訳ありません。私は伯爵様と面識がある訳ではないので・・・」


そう言うと騎士のの青年は恐縮した様子で俺を見つめている。姿をみるとどうやら騎士らしく、それも近衛か近習の任務に就いているエリートのようだ。若さから見るに少年の頃から任官しているのだろうか、それとも軍の高官子飼いの近習がアレクシアの傍付きとしてやってきているのだろうか。


「将軍閣下のお側つきになってからお噂を伺っていたので・・・」


どうやら後者らしい、何の噂だろうか?アレクシアはかなり色眼鏡を掛けているからなぁ・・・どうなんだろう。


「どういう噂だ?」

「凄まじい剣技の持ち主で、将軍閣下が手解きを受けたとか」


うーん、確かにそうだが・・・それだと俺は子供の頃からアレクシアの剣の面倒を見てたことになるんだが。名前まで出されたら困るなぁ。


「それで・・・その話が本当だとしたらどうする?」



そういうと青年の顔がぱあっと明るくなるのがわかった。うーん、これは面倒な感じがするぞ。


「あの、もしよろしければ!」

「やめてくれ、面倒臭いから」


教える事自体は嫌じゃないが背景がややこしすぎる。指南役みたいな役柄じゃないんだ。

王族の剣術の師です、みたいになると俺の立場がまたややこしくなる。


「なぜですか?」

「普通に教わるならともかくアレクシアに教えた俺の剣を学びたいとなると俺の意思だけで済まないからだ。王族と同じものを学ぶ、その意味が分かっているか?」


そういうと青年はその言葉意味を理解してくれたのか考え込むと素直に聞き入れてくれた。


「すみません、軽率な発言でした」

「わかってくれたらいい、そのかわりといっちゃなんだが・・・」


俺は手投げ用の直刃のナイフを取り出す。手投げナイフだ。


「的当ては得意か?」

「それはナイフ・・・ですか?」

「あぁ、いざという時に剣の鞘か、胸のところに留めとけ、それで危険が迫ったら・・・こうだ」


引き抜いた勢いのままに投げる。ナイフは狙った通りに通りに生えた木に突き刺さった。我ながら大道芸みたいだな。最近機会がなかったから鈍っているかと思ったがやはり長年培った技術と言うのは中々錆びないものだ。


「おお・・・」

「悪党なんかが飛び出して来た時なんかに咄嗟に投げて当てられるようにしとけ。狙う場所は手や肩、もしくは足だ」


そこまで言ってはたと気づいた。


「そう言えば・・・名前はなんだったかな?」

「申し遅れました、ランドルフ・デッカーと申します!サマル王家に近習として代々お仕えしております!」


なんと、超のつくエリートさんでした。そうなると教えといて正解か。アレクシアやその他VIPの護衛につくこともあるだろうしな。知り合いを作っとくのも悪くない。


「いざという時にその一本が命を救うこともある。訓練しといてくれ」


咄嗟に庇うのは難しいし、危険が伴う。それでもこう言った小手先とはいえ技術があればどれだけ助けになるか。


「飛び道具は些か抵抗があるかもしれんが・・・それは主人の為と割り切ってくれ」

「はい、先程の技と並べて肝に銘じておきますよ」


そう言うと彼は満足したのか時折ナイフを投げる動作をしながら何処かへと歩き去っていった。


傭兵や暗殺者でなくともナイフを持ち歩くものは多い。何故ならそれは旅の必需品であり、戦闘とは違う様々な場面で役立つもの。生活用品といっても良いだろう。


「が、それ故にナイフを投げるってのは珍しいんだな」


モノにも寄るが刃物は使い捨てに出来るほどは安くない。しかし投げるとなると使った際はもちろん、最悪手元に戻らない事もありうる。

それでいて投げナイフは通常のナイフとは異なりバランスが違ったり、俺の小柄のように直刃で切るのにそもそも向いてなかったり等、細部がもしくは全てが違ういうなれば特注品だ。

さらには魔法という便利なものがあるのも投擲をさらに珍しくしてしまっているだろう。


「っと、道草しちまったな・・・」


俺は再びアレクシアの元へ戻ることに。

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