誓いは少女の瞳に映る自分自身に
次のターゲットが決まったところで俺は先ほどよりもうきうき気分で根城に戻る。
へっへっへ、この色町を健全?にしてやろうじゃないの。
めざせヤクザ撲滅!そして色町を紳士が通う高級クラブ化して借金のカタに売られた少女達が早くシャバに復帰できる下地を作ってやる必要がある。
礼儀作法を学ばせて侍女として働けるようにする計画もいいかもしれない。
たしか・・・メイド喫茶とやらがあった気がするしな。
そうすりゃ女の子と接する機会も増えるし結婚予定の彼女の一人もできようというもの。まさに一挙両得のすんばらしい考えである。
「ウフフフ、こりゃこの街が住みよい街になるのも間近かもしんないな!」
「どうしたのよいきなり・・・。」
「今夜当たりにゴロアファミリーの根城を突き止めて潰してやろうかと思ってな。」
「さすがに敵を作りすぎじゃない?」
たしかにそうだろう、しかし今の内じゃなきゃ意味がない。
今の俺はなんといっても身軽だ。
気を配るのは孤児院だけだし、奴らは俺がどんな男かも把握しきれていない。
情報が不確かな今の内に潰す必要があるのだ。
しかしせっかく助けたお姫様に何かあっては俺も面白くないし、そうなると怒り狂って街をぶっ壊してしまいそうなので対策を練るのも必要だな。
そう考えながら帰ると門番君は変わらず仕事に励んでくれていた。
「あ、ボスお帰りなさい!」
「おう、ただいま。」
「礼儀正しいのね、あ、私今日からここで働くことになったヒューイよ。 よろしくね。」
「闘技場で有名な方ですね! 俺知ってます!」
どうやら彼はヒューイのファンらしい。
しかしオカマだからではなく純粋に人柄にあこがれているとか。
将来彼がオカマにならないことを祈るばかりである。
さて、それでは昼食を、と思った所で俺達は帰りを待ちわびていた少女達に囲まれてしまった。
「お帰りなさい!お土産は?」
最初に俺に飛びついてきたのはリリアだった。
歳は13歳。 みかけによらず年齢は低い。
しかし発育は大変よろしく、屈託のない笑顔を向けられればロマンスを追いかけるのもやぶさかではないレベルに可愛い。
「お土産は今日はないぜ、だが待ってな。服くらいはいい物を着れる様にしてやるから。」
「ホントに? 約束だよ!」
ああ、いいもんだ。 これはいいもんだ。
なんで前世では俺は誰も愛さなかったのだろう。
きっと驕っていたのだろう。
栄光にまみれていく中で驕り、天狗になっていた。
皆はいつまでも俺についてきてくれると。
でもそれはまやかしだった。
老いてなにも出来なくなった俺を慕うものなど居なかった。
きっと誰も助けなかったからだ。
教える振りをして、助ける振りをして自己満足だけで生きていたからだ。
だから今、本心から助けようとして助けた彼女たちからの慕う心が俺の心を救っている。
きっとヒューイが慕われるのもそんな理由だ。
彼は助けることになんの抵抗も示さなかった。
ああ、善い事をするってのはいいもんだ。
せっかく長生きするんだ。
いっぱい善い事をしよう。
せめて今回くらいは笑って人生を終えれるように。
俺の最後に涙を流してくれる誰かを作るために。
誰でもない自分自身の魂を救う為に。
俺は俺を見つめる彼女達の澄んだ瞳に移るなんともしまらない顔をした自分に誓う。
俺は誰でもない俺を救う為に誰かを救う。せめて俺の前では皆が笑っていられるように。
きっと今回はそれができるはずだ。
なんてったって俺の息子か、娘かも知らない
だれかと仲間の弟子達が世界を救うんだ。
だからきっと出来るはずさ。
平坦な道でなくても出来るはずさ。




