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パーティでのあれこれ その4

既存の価値観と言う奴は思いのほか人間の行動パターンを限定してしまう。この様なヤツの場合プライドが死ぬほど高い割りに自分ひとりで出来る事が少ないので余計にプライドが傷つき易い、なので常に相手に攻撃的になる。いうなれば劣等感が強いのだ。


「決闘する勇気も無いのか?」

「そ、それは・・・」


身内なら教育してやりたい所だが生憎とそんな義理もない。向かってくるなら潰してやるぞ。


「なら大人しくしているんだな。お前なんぞ眼中にない」

「が、眼中にない・・・?」

「本来此方から決闘を提案してやるのも過剰なサービスなんだぞ?それなのにそれを受ける勇気もない、情けないと思わないのか」


情けないツラしてやがる。ま、喧嘩して勝てるかどうかくらいはわかるんだろうが・・・。どうにも説教臭くなっていけない。あんまりにも駄目なヤツだとな・・・まるでいつぞやの俺のような。結局俺は他人の手を取る事も、許す事も、忘れる事もできず、ただ過去の栄光に縋って生きていた俺のような。


「パーティが辛気臭くなる、情けないツラをしているなら他所へ行ってくれ」


アウロラを連れて別の場所へと移動する俺の背中を恨めしげに見つめるタウゼント家のバカ息子。アイツがまともになれるかは解らないがそれも気にする必要はない。何事も最後は自分の力しかないのだ。手助けを受ける事はできても立ち上がるには自分の力でやるしかない。


「く、くそぅ・・・」

「何をしてるんだ?こんな所で・・・」

「ドルト!いい所にきた・・・ヤツをどうにかしてしまいたい・・・」


逃げ出すように訪れたテラスでヒッグスは声を掛けてきたドルトに詰め寄った。


「何を言われたか知らんが止めとけ、あの人はお前が如何こう出来る人じゃない」

「なぜだ!俺とお前の権力があればどうとだって出来るだろう」

「そこがまず間違っているんだ、女性のスキャンダルをもみ消すのとは次元の違う話なんだ」


ドルトには解っている。すくなくとも数万の人口を有する都市か領地を所有し、それだけでなく王女殿下から絶大な信頼を得ている以上彼が持つ権力が如何程のものか想像も出来ない。


「アレだけの兵力、経済力、そして王家からの覚えも目出度くダークエルフの妻がいるんだろ?勝てる理由がないじゃないか」

「しかしヤツは所詮田舎者ではないか!何故俺達が遠慮する必要がある!」

「がなるな、ヒッグス」

「しかしだな!」

「いい加減にしろ、お前は何時からそこまでバカになった?勝てる相手と勝てない相手の区別くらいつけろ、あの人が本気になったら俺達の命はおろか爵位なんか何の役にも立たんぞ」


そう言うとヒッグスは力なくテラスの手すりに寄りかかり、真っ青な顔を見せる。


「どういうことだ?侯爵である父よりも、公爵であるお前の父よりもそんなに凄いのか?」

「そんな次元じゃないってことだ、腕力だけでどれだけ強いかもわからんが王女殿下に剣を教えたのはあの人らしいぞ?それに経済力だって・・・」

「くそぅ・・・そんな事が・・・あるもんか」

「ヒッグス・・・」


頭を抱えて蹲るヒッグスを憐れむような視線で見つめていたがやがてドルトもかける言葉が無くなりテラスを後にした。


(俺はこんなヤツに良い様に使われていたのか・・・いくらなんだってあんまりだ、もう少しは見所のあるヤツだと思っていた自分が浅はかだったのか)



「あ、アダムスター伯爵!」


パーティも佳境になり料理も堪能しつくした俺達の元にアレクシアが訪れる。


「主賓様の登場か」

「うふふ、ようやく声を掛けることができました」


登場した時はもみくちゃにされてたものな。美姫であることもそうだが凛々しい姿に女性からの人気も高く女性からの声かけも多かったんだよな。しかし笑うと兄貴にそっくりだ。


「ザンナルに向かう準備はできたのか?」

「ええ、心構えもできました。それで・・・その、お願いがあるんですが」

「なんだ?」

「パーティの後、王宮にきて欲しいんです。お願いできますか?」

「構わない、楽しみにしてるぞ」


俺がそう答えてやるとアレクシアは笑顔で頷いた。一体なにをするんだろうか?楽しみにしておこう。


「何をするんでしょうね?」

「わからん、だが断る理由も無い」


その後パーティは恙無く進んでいき、皆は満足とザンナル領開拓がもたらす利益の皮算用に皆は勤しんでいくのだった。ザンナルは元々は穀倉地帯を多く抱える農業地帯が多く、騎兵を育てる為の牧畜や酪農を行う技術なども多かった。なので食肉の安定供給などを予想している者も多いのではないだろうか。


「ま、実際は戦いと飢饉でメタメタなんだがな」


戦争というのはホントにキツイ。建て直しも不十分な状態で王宮のほうへと向かったので今はどうなっているのか・・・少なくとも食料を供給しているのでこれ以上餓死者は出ていないと信じたいが・・・。

本音を言うとさっさと帰ってちょっとでも農地の回復具合をみたいところだ。警察隊の本隊が上手くやっていけているかも併せて気になる。






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